昔、ドラゴンボールでやたら不老不死を願う人がいっぱいいたんで、不老不死って良いことなのかと思っていました。僕らにとって時間は有限だから色んなことを諦めなきゃいけないけど、それを諦めなくてもいいってことは幸せなことですか?
本作には死なない子供たちが登場します。死なないし年も取らないことが当たり前の2人にとって「死」とは一体どういう概念なんでしょうか。というわけで今回は、超絶スケールの大きいテーマのヒューマンドラマ「銀河の死なない子供たちへ(全2巻完結済み)」を紹介します。
銀河の死なない子供たちへのあらすじ
とうに人類が滅亡した星で、ラップを口ずさむのが大好きな天真爛漫な姉・πと、いつも読書をしている内向的な弟・マッキは、永遠の命による終わらない日々を過ごしていた。
そんなある日、愛すべきものの終わりに直面した二人は……。「手塚治虫文化賞」受賞作家が挑む、不死の子供たちの果てしない日常と、途方もない探求の旅――。
銀河の死なない子供たちへの見所をチェック!!
途方もない時間を過ごしている三人家族の物語
タイトルを見た限りではイマイチ趣旨が掴みにくいかもしれませんが、本作はまさにタイトル通りのストーリーで「死ぬことがない子供たちの物語」です。女の子と男の子、そして母親がいます。
この三人は年も取らないし、病気やケガで死んでしまうということもありません。たまに肉食動物やクジラに食べられてしまったり、鍾乳石が刺さってしまうことはあるけど、時間が経てば元通りになります。
自然に死ぬこともなければ事故で死ぬこともないので、無限の時間を過ごすことができる三人の家族の物語と言っていいでしょう。ただ、死なないことが幸せなのかどうかの判断は読者次第ですが。
沸々と湧いてくる「死」に対する感情
時間が無限にあるので、世界中の本を読み尽くすことも可能です。見た目は子供ですが、その辺の大人たちよりもずっと生きている時間は長いので、きっと膨大な知識を得ていることでしょう。
確かに学問を身に付けることは可能なんだけど、中には自殺をテーマにした作品もあるわけで「死」に対する考えはどうしたって深まることがありません。ちなみに子供たちはママからの言いつけで、ペットを飼うことは禁止されています。
本来ならペットと一緒に生活することやペットの死を看取ることっていうのは、学校では教わることができない体験なわけですが、その悲しみを一生背負っていくというのは不死身の身体にとっては酷すぎるのかも。
人間の赤ちゃんと過ごす賭けがえのない日々
三人が暮らしているところに突如ロケットが飛んできて、中からは人が出てきます。この人が身籠った状態でその場で出産するんだけど、女の子を残したまま死んじゃうっていうね。
で、この人間の女の子を含めた四人で暮らしていくって感じのストーリーがメインです。最初は赤ん坊だけどそのうち背丈も追い越していくし、この三人を残して死んでしまうことでしょう。
ペットの死も悲しい出来事なのは間違いないんだけど、生まれた時から一緒に過ごしてきた人間の最期を看取ることになった時、二人の子供たちは一体何を思うのでしょうか。すごくシリアスな展開が待ち受けていますが、壮大すぎるテーマなので何かを思わずにはいられないです。
銀河の死なない子供たちへ 全2巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
絵に好き嫌いが分かれそうな感じはあるけど、選り好みをして本作を読まないのはあまりにも勿体なさすぎるので注意しておきます。これ、マジで面白いです。
終始シリアスな展開が続くんで面白いっていう表現をするのもどうかと思うんだけど、スケールの大きい話過ぎて自分の悩みがあまりにもちっぽけに感じるというか、まさに「生きるってなに?」みたいな哲学的なことをぶつけられてるような衝撃を感じました。
最後に大きな決断を迫られる場面があるんですが、読者それぞれに「自分ならこうする」みたいな意見が出ると思うし、それが作中の二人の子供と一緒っていう人もいれば違う人もいるはず。そういう考えを自然と持たされる深みのある漫画だと思います。
あとがき
そのうち考えるのをやめた。