「坂本ですが?」で有名な佐野菜見氏が描く新作ですが、今回もまたシュールな世界観が溢れんばかりでした。タイトルからも想像できるように、とある双子の姿を描いたものです。
個人的には「なんでこんな世界観の作品を描こうと思ったんだろう?」という疑問が付きまとうような初期設定なのですが、それすらもクセになるのではないかと…。
というわけで今回は、ミステリアスな悪童を描いたシュールな物語「ミギとダリ(全7巻完結済み)」を紹介します。
ミギとダリ あらすじ
舞台は1990年、神戸市。ここに暮らすとある夫婦がいた。夫婦はお世辞にも若いとは言えず、自分たちに子供が出来なかったことから養子を迎え入れることを決める。
そして1人の少年が養子として迎え入れられることとなった。彼の名は秘鳥。髪の毛はブロンドで異国の血が流れていることは想像に容易かったが、念願の親になれるということもあって夫婦は秘鳥を大歓迎した。
しかし秘鳥には知られざる秘密と恐るべき目的があった。今ここにミステリアスな悪童たちの物語が始まりを告げる。
ミギとダリの見所をチェック!!
「坂本ですが?」を彷彿とさせるシューリズム
ダンディーなものをダンディズムって言うんだから、シュールなものもシューリズムって言うでしょ?言わない?僕は事前情報を全く知らずに本作を読んだんだけど、ちょっと読んだだけですぐに「坂本ですが?」の作者の方が描いた作品だと気が付きました。
向こうは馴染みやすい学校モノで、こっちは養子縁組っていうちょっと複雑な家庭環境が絡んでるっていう違いはあるけど、やっぱシュールな流れはそっくりです。
ぶっちゃけ簡単に言うと「秘鳥という男の子をミギとダリという2人の人間が演じる」っていう流れになっていて、当然ながら親にバレないように暮らしていくっていう緊迫感があるんだけど、まぁそんな緊迫感なんのそのって感じに仕上がってます。1人が食事をしていたら、おかわりを頼んだタイミングで机の下に潜り込んでいたもう1人と入れ替わるとか…すっげーシュール。
普通に考えたら美談…なのに、何故
夫婦には夢があって、それこそ「子供が出来たら〇〇したい」ということを夢見ていたわけで、それを偶然知ってしまった秘鳥がそれを叶えてあげるなんてのは、その辺のお涙頂戴的なテレビ番組よりもずっと感動的な流れのはずなんです。
それがなぜ!なぜおかしなことに!!!!
子供を肩車したいという父親の夢を叶えるために、なぜ子供がこれほどまでに気を遣わなければならないのか。足腰が弱くなってしまって、もはや秘鳥を肩車できない父親の身体に負担にならないよう、ロープで仕掛けを作って反対側に自分の身体と同程度の負荷をぶら下げるという…。
そして父親の目を塞ぐ…か、完璧じゃないっすか。結果だけ見たら感動すら覚えるはずなんだけど、なんなんでしょう…なんだかモヤモヤが残る。
ミギとダリの真意とは
本作がただのシュールなギャグ漫画でないことは、この双子の振る舞いなどからもひしひしと伝わってきます。言うなれば単なる偶然でこの家に来たのではなく、何かしらの明確な意図を持ってここに来たんじゃないかと。
2人揃って悪だくみみたいなものをしていたり、夫婦の部屋を物色したり…。何かを企んでいるに違いないと思わせるんですよね。普通の小学生程度の男の子であれば、探検ごっこをしても別に普通なんだけど、この2人がやるのはちょっと違和感がある。
ということで、この2人の目的が何であるかというのも本作の大きな見所と言えるでしょう。
ミギとダリ コミックス1巻を読んだ感想・レビュー
普通に最初はヨーロッパかどっかの街が舞台になってると思って読んでいたら、それが実は日本の神戸市だったていうね。もうシュールすぎて何が何だかわからないから、この際これが日本だろうがヨーロッパだろうが異世界だろうが何でもいいんだけど。
とりあえず「坂本ですが?」を描いていた作者の新作!という目で読んでしまうと、どうしても辛口な評価になってしまうんじゃないかなぁというのが正直な感想です。今後、シュールな笑いに磨きが掛かって面白くなっていく要素はもちろんあるのですが、坂本ですがに比べるとスロースターターすぎて、第1巻を読んだ限りでは笑いはほとんど無かったように思います。
もちろん、この作品が笑いを狙って描かれておらず、ミステリアスな世界観を表現したかっただけの可能性もありますし、シュールな笑いを2巻以降に表現するために1巻は伏線を張ったのかもしれません。
いずれにしても面白いとか面白くないという評価を下すのは次巻以降になりそうです。とりあえずコミックス1巻を読んでの感想としては「THE・ミステリアス」って感じ。
あとがき
ゆうたいりだつー。