個人的なことを言うと、そこまで「メイド」に対して特別な感情がないので、メイドを主人公とした表紙絵に惹かれるなんてこともなく、ただただ何の気なしに手に取った作品です。
ちょっと絵が特徴的なのと世界観が超特徴的なのが、刺さる人にはめちゃくちゃ刺さるという感じのブラックコメディーがこちら。というわけで今回は、血まみれなコマのなかでジョークを発するような不思議感が魅力の「ヴォイニッチホテル(全3巻完結済み)」を紹介します。
ヴォイニッチホテル あらすじ
太平洋南西に浮かぶ小国・ブレフスキュ島、その小さな島のホテルが舞台。陽光降り注ぐのんびりした南国ムードの中、一癖も二癖もある宿泊客達の悲喜交々ドラマ。
ヴォイニッチホテルの見所をチェック!!
小さな島のホテルを舞台にした少しダークなコメディー
太平洋南西に浮かぶ小国・ブレフスキュ島にあるホテルを舞台にした、不思議でちょっとダークなブラックユーモア溢れるコメディーという感じの作品です。ホテルの宿泊客、従業員、そして島の住人たちが絶妙に絡み合っていく不思議な展開が加速的に面白くなっていきます。
ぶっちゃけコレと言った核が無いというか、いわゆる幕の内弁当みたいな漫画と言っていいかもしれません。殺人事件が起こったかと思ったら、島の歴史に関係していそうな魔女の話になったり、その横でホテルの宿泊客と従業員がデートしてたり…。あれもこれも楽しみたいって人には最高の漫画と言っていいでしょう。
全体的に醸し出されているダークな雰囲気が、本作を唯一無二の存在にしているポイントと言っても過言ではありません。「雰囲気が暗い」っていうのとはちょっと違う、ダークな雰囲気を持ったコメディーに興味がある人はぜひ。
唐突に始まる恋愛ストーリーなど
上でも軽く触れたように、本作には明確なジャンルがありません。きっと種類としてはドタバタコメディーってなるんだろうけど、すべてのストーリーが唐突に始まるという驚きの連続です。
これが急にあっち行ったりこっち行ったりするもんだから、急展開に次ぐ急展開によって脳がバグるって言うんでしょうか。「コーラだと思って飲んだらめんつゆだった」みたいな違和感というか、とにかく不思議な感覚すら覚えます。
あと先入観を上手く利用されている感もあって、恋人っぽい関係性になっていく2人も謎だらけだったりするんです。ホテルの客と従業員っていう関係ではあるんだけど、何しにホテルに泊まっているのかとか、普段は何をしている人なのかとか、義眼の秘密とか…。とにかく気になる要素が多い物語だと思います。
下ネタとブラックジョークが多めの多彩な笑い
本作は非常に笑いの詰まった全3巻なんだけど、下ネタとブラックジョークが多めです。ブラックジョークの方に関してはかなりクオリティの高いボケを連発していて、思わずニヤニヤしてしまうような魅力に溢れていると言っていいでしょう。
例えば上記のシーンでは「ハッピーターンの粉＝合法麻薬」としているわけですが、この辺は多くの読者がどっかで聞いたことがあるようなネタを採用しているわけで、それを知っている人なら思わずニヤニヤしてしまうはず。そして引き合いに出すネタがメジャーすぎずマイナーすぎず、まさに絶妙なラインなんですよね。
一方で下ネタは好き嫌いがハッキリ分かれるんじゃないかと思います。個人的には本作の下ネタで笑わされるってことはほとんどなかったので、勝手に「下ネタは読者を笑わせるためじゃなく、本作全体に漂っているダークな雰囲気をマイルドにするためでは？」なんて思ってました。
ヴォイニッチホテル コミックス全3巻を読んだ感想・レビュー
エロ要素、グロ要素をどう捉えるかによって評価は大きく分かれるんじゃないかと思いますが、個人的にはかなり好きな作品でした。事件が起こってる横で合コンしてたり、不穏な空気が流れ始めたかと思ったら薬物でラリってたり…。とにかく良くも悪くも急展開が多すぎ。
コメディーにしては死をネタにしてる部分や下ネタが多いこともあって、そんなにコメディーしていないような気もします。でもあれこれ楽しみたいっていう層には間違いなくウケるはず。
すごくテンポが良い全3巻なんだけど、色んな要素が詰まっているせいかそんなにあっさりと読み終わった感はありません。全3巻以上の満足感が得られる作品と言っていいでしょう。ブラックジョークが好きな人、ちょっと不思議な世界観の漫画が好きだという人におすすめ。
あとがき
ロン！エボラ、マラリア、トリインフル…満貫？
