読み終わった後にほんのり優しくなれる物語が好きなんだけど、そういう意味では本作は完璧なクオリティと言っていいでしょう。全2巻でサクッと読める手軽なボリュームもそうだし、ぜひとも多くの方に読んでもらいたい素敵な漫画の1つです。
特に「ちょっと切ないながらも素敵な物語」を求めている人に超おすすめ!というわけで今回は、切なさと優しさに溢れた「夜さん(全2巻完結済み)」を紹介します。
夜さん あらすじ
とある田舎の中学校――。臨時美術教師としてやってきた鶴田夜は、人には言えないちょっとした不思議なちからを持っていて…!? 彼女の力を目の当たりにしてしまった事をきっかけに中学生・晨は夜さんに日々翻弄されていくのだが…。
夜さんの登場人物紹介
坂本晨
痴呆症のおばあちゃんを支えている孫息子。おばあちゃんを守ることに使命感を感じており、場合によっては中学校を途中で辞めてでもおばあちゃんの傍に寄り添おうとしている。
夜
絵の下手な美術教師。描いた絵に息を吹きかけることで、その絵が飛び出してくるという不思議な能力を持っている。晨を居候として快く引き受けた。
昏
夜と一緒に生活をしていて家事全般を担当している少女。晨と同い年であるが学校には行っておらず、夜との関係性も不明。
夜さんの見所をチェック!!
不思議な能力を持った美術の先生
本作には絵が下手な美術教師が登場するんですが、この教師は不思議な能力を持っています。それは「描いた絵に息を吹きかけると、それが絵から飛び出してくる」というもの。例えば星を描いたらそれを絵から出して眺めることも可能だし、色々と応用できる能力であることは間違いありません。
そんな美術教師と家庭に問題を抱えている主人公・晨が共同生活を送るという展開から、不思議なことが巻き起こる日常生活を描いた作品です。最初は不思議な展開が続いて「この先生って一体何者!?」っていう感じなんだけど、ストーリーが進むに連れてそれが徐々に明るみになっていきます。
何より「描いた絵が飛び出てくる」っていう能力がロマンチックというか素敵な感じがしませんか?そしてこの能力も使い方次第だなぁと思わされてしまう展開も秀逸です。
不思議な能力を手にしたとき、それをどう使うか
例えば「描いた絵に息を吹きかけると、それが絵から飛び出してくる」という能力を得た場合、それをどう使うかっていうのは本人次第です。それを人の役に立つように使うっていう人もいるだろうし、もしかしたら「お金を出しまくってウハウハ」みたいなことを考える人もいるかも。
一見すると素敵そうに感じるこの能力が使い方次第で毒にも薬にもなり得るというのは、多くの人が気付く部分だと思います。そしてここに考えさせられてしまう要素が詰まっていると言っても過言ではありません。
「もしこの能力が得られたら自分ならどう使うか」みたいなことを考えながら読むと、ただでさえ面白い物語がめちゃくちゃ面白くなるんじゃないかと思います。たぶん本作の趣旨と似たようなことを願う人が必ずいるから。
主人公や周りの人物たちの未来
本作はとにかく謎に溢れた作品なのにもかかわらず、それを全2巻でしっかりと描き上げています。例えば「痴呆症のおばあちゃんはどうなるの?」とか、ここがある程度解決しない限りは晨の将来が見えてこないだろうし…。
それに中学校に通っていない昏がどのタイミングで一歩を踏み出すのかも気になりますし、夜と昏の関係性なんかもめちゃくちゃ大きな見所です。この辺が複雑に絡み合って一本の重厚なストーリーを作り上げているので、全2巻という短いボリュームなのにめちゃくちゃドラマチックだと思いました。
ちなみに痴呆症が進むおばあちゃんは「晨がお嫁さんを連れてくること」を楽しみにしてるみたいなんだけど、中学生にそれは早いんじゃないかって思いつつ、ここは嘘の優しさみたいなものが垣間見える瞬間と言っていいでしょう。このあたりの見せ方もめちゃくちゃ上手い。
夜さん コミックス全2巻を読んだ感想・レビュー
日常ファンタジーのような素敵な世界観が堪能できる全2巻です。大まかなジャンルとしてはファンタジー×ヒューマンドラマじゃないかと思います。ちょっと見ただけでも絵の綺麗さが分かるし、すごく読みやすい漫画だと思いました。
全2巻だから無駄が一切なく、すごく洗練された完成度と言っても過言ではありません。序盤に散りばめられた複数の謎が少しずつ解き明かされていく感じは、本当に流れていくような感じで心地良さを感じるほど。
結末に驚きも残されてるんだけど、それよりもただただ素敵な物語です。ファンタジーチックな素敵な物語、優しさが詰まっている物語が読みたいっていう人には文句なしにおすすめ。
あとがき
切なさもありつつ、あたたかい物語です。