僕のようにバイオハザードなどのゾンビゲーに魅了されてきたという人なら、ゾンビが蔓延するっていう世界観だけでも楽しめるんじゃないかと思います。ただでさえ街にゾンビが出てきたとなれば、少しずつ追い詰められていくようなスリルがありますが、本作の特徴は何と言っても施設の中から追い込まれていくという状況です。
いわゆる脱獄に近い雰囲気があり、それを脱しても外にはゾンビが蔓延ってるっていうね。非常に楽しい絶望感が味わえるでしょう。というわけで今回は、冤罪から始まる戦慄のパニックホラー「アポカリプスの砦(全10巻完結済み)」を紹介します。
アポカリプスの砦 あらすじ
ゾンビvs.不良!!!!! 監獄を舞台に災厄が最悪を食む!! ――関東中の不良が集まる更生施設・松嵐(しょうらん)学園に、無実の罪で収監された前田義明(まえだ・よしあき)。暴力渦巻く日々に、義明は絶望感を募らせていく。そんな中、監内に突如現れたのは死してなお歩き、人を喰らうゾンビだった……! 悪夢のような世界で、不良達のサバイバルが始まる!! 戦慄のパニック・ホラー!!!
アポカリプスの砦の見所をチェック!!
突如として大量発生するゾンビたち
本作は典型的なゾンビ・パニックホラーです。ストーリーを面白くするための色んな要素が追加されていますが、基本的にはバイオハザードなんかによく似た物語となっています。
突如として町にゾンビが発生し、ゾンビに嚙みつかれると感染してしまうという…。なぜゾンビが発生してしまったのか、そしてゾンビ化してしまった人間を助ける術はあるのか等を、生き延びながら模索していくという感じ。
冤罪による刑務所スタートのパニックホラー
単に「町にゾンビが発生して~」という展開であれば、既視感がハンパないのは言うまでもありません。本作がゾンビ・パニックホラーとして個性を確立しているのは、物語のスタートが厚生施設から始まるということです。
主人公はとある殺人事件の犯人として収容されることになってしまったんですが、実はそれは冤罪であり、何者かの陰謀によって導かれたのではないかという含みを残しています。そして周りには何らかの犯罪を犯して収容されている人物、いわば荒くれ者だらけという設定です。
一般社会と隔離されているから生き永らえているって設定も分かるし、ゾンビたちと戦うにしても周りが不良・ヤンキーだらけっていう要素のおかげで、戦力が高めっていうのが納得しやすくなっていると言っていいでしょう(普通の学校からスタートすると「なんでこいつが!?」っていうやつが強かったりするからね)。
ゾンビが大量発生した根源と物語の行方
得体の知れないゾンビたちに命を狙われ続け、少しずつ探索をして装備を充実させ続け、弾薬の管理をしながら生き永らえるというのもスリルがあって楽しいのですが、それだけではただの殺戮シーンの連続になってしまい、面白いパニックホラーにはなりません。
ゾンビ・パニックホラーの一番の見所は「この一連の出来事の根源は何なのか」だと思います。そこに到達するまでには仲間の死があったり、強大なボス(通常のゾンビを超越した存在)の存在があったり…っていうのが、物語を盛り立てる要素になるのではないかと。
そういう意味では、本作の序盤から感じられるワクワク感はすごく大きなものとなっていて、読者を引き付けて離さない魅力を感じました。「なんだあれはー!」って思うはず。
アポカリプスの砦 全10巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
少年院のような場所からスタートするということで、ちょっとした脱出劇のような要素も加わるので脱獄好きな僕からすればたまらない導入部分でした。同じ部屋の人間とはすぐに結託できても他の部屋の人間とはすぐに打ち解けられないとか、施設全体でヒエラルキーが出来上がっているなどの設定も上手くできていたと思います。
主たる登場人物を大事に使っていた感があって、デスゲームやパニックホラーにありがちな「次々に人が死んでいくんだけど、割と近しい場所にいた人間が死んでも何とも思わない」みたいなことがなかったのは良かったです。
後半にかけてやや失速してしまった感はあったものの、全10巻という短すぎず長すぎずなボリュームで物語が綺麗にまとまっているので、ゾンビが登場するパニックホラーやヤンキー・不良たちがゾンビの大群に立ち向かうみたいな展開が好きな人におすすめです。
あとがき
ゾンビvs不良だけど、主人公が強すぎない点がgood。