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「クズの本懐」を読んだ感想・レビュー

クズの本懐表紙

 

僕がまだ若い頃、「自分が好きになった相手に好きな人がいた場合にどうするのか」みたいなことを真剣に悩んだことがあります。好きな人がいるって言われて諦められるほど単純な話じゃないし、仮に二番目でいいってなったとしてそこで妥協できるのか的な話です。

本当に好きなら二番目でも三番目でもいいような気がするものの、でもそれはそれで一番になれない苦痛を強く感じるだろうし…。みたいなことを考えたことがある人なら、本作の設定には割と理解を示せるのかもしれません。

というわけで今回は、歪な恋愛の形が見え隠れしている「クズの本懐(全9巻完結済み)」を紹介します。

 

 

クズの本懐 あらすじ

品行方正な美男美女カップルとして、周囲から羨望の眼差しを浴びている花火と麦。理想的な男女交際に見える二人には、誰にも言えない“ある秘密”を共有していた。

 

クズの本懐の見所をチェック!!

一般的に予想される「クズ」とは少し違う

クズの本懐1

 

恋愛漫画に登場するクズと言われれば、それこそ2股以上の浮気を普通にするとか、恋愛感情をチラつかせて本当は体目的なだけだったとか、まぁ言い出したらキリがないんだけど大体は「身近にいるクズ」を思い浮かべれば、簡単に想像できるかと思います。

しかし本作のクズはレベルが違うというか上級者というか…。少なくとも僕の観測範囲には居なかったタイプのクズでした。ここまでくるとクズじゃないよ、あんたらすげーよ。

本懐っていうのは「本望」みたいな意味なので、「クズの本懐=クズが本当に願っていること」という意味です。本作で描かれている恋愛は、まさにクズの本懐と呼ぶに相応しい関係性が描かれています。三角関係なんて生ぬるいくらいの展開と言っても過言ではありません。

 

キャパシティを軽く超えるほどの障害の数

クズの本懐2

 

恋愛においては障害が多ければ多いほど燃えると言われていますが、本作で描かれている恋に訪れる障害は多すぎるレベルで、読んでいて主人公が燃えているような気は一切しないし、読んでいるこっちも「燃えるわけがない」と思うくらいのやつです。

まず高校生と教師っていう関係性もそうだし、相手には明らかに好きな人がいるし…。ぶっちゃけ序盤を読んだくらいでは、この物語がどう着地するのかが全く見えてきません。

普通の恋愛漫画だったら最終的に好きな人と結ばれるパターンか、あるいは「結ばれなかったけど貴方を好きになって良かった」的な展開か、このどちらかがセオリーだと思うんですけど、本作はたぶんどっちにもならないような気がしてならないです。「じゃあどうなると思う?」って聞かれても、まったく予想できません。これを想像して見届ける楽しみは、他の作品では味わいにくい魅力だと思います。

 

THE・魔性の女ってこんな感じなのかも

クズの本懐3

 

個人的には「あざとい」って思われるような人はあざとくも何ともなくて、本当にあざとい人は誰にもあざといって思わせないと思ってます。

好きな男や狙っている男の前だけで猫を被る女って少なくないと思うんですが、男はそれに気付いていないんじゃなくて、それでもいいって思ってる人が大半なんじゃないかと。だからこの様子を見て「男ってバカだよねー騙されちゃって」みたいなことを言う女がいるんだとしたら、半分間違ってます。バカの方は否定しませんが。

そういう意味では、騙されたいって思わせる女が魔性の女と言えるんじゃないかって思うし、その完成形みたいなのが本作には登場します。真剣に恋をするうえで、色んな男とすぐ寝るっていうのは障害になるような気がするけど、それ以外はたぶん理想形かも。

 

クズの本懐を読んだ感想・レビュー

コミックス1巻を読んだ感想・レビュー

クズって言うからどれくらいのクズか楽しみにしてたんですが、想像の斜め上のクズだったので呆れることも見下すことも叶いませんでした。ぶっちゃけ登場人物がみんな上級者過ぎて驚いています。僕ならたぶん人生が二度目でも、この境地には辿り着けないなぁと。

そしてこの物語がどういう方向に着地するのかが、まったくと言っていいほど見えてきません。ぶっちゃけ応援しようって感じにもならないし、結ばれても結ばれなくても幸せにはなれないんじゃないかって感がハンパない。どうやって決着つけるのかが気になって仕方ない恋愛漫画です。

 

コミックス全9巻を読んだ感想・レビュー

好き嫌いは大きく分かれるだろうし、本作を恋愛漫画にカテゴライズしても良いものかどうかも疑問だけど、個人的にはめちゃくちゃ楽しめた恋愛漫画でした。ありきたりな展開のものよりもずっと新鮮だったし、先の読めない展開も面白かったです。

恋愛なんて色んな形があるので、これはこれで1つの完成形なんだろうと思います。こういう経験をすることで間違いなく視野は広がっただろうし、大きく成長できたでしょうし…。

自分がこの登場人物たちに同意できるかどうかは別にして、1つの物語として綺麗な着地だったことは間違いないでしょう。掟破りという意味では非常に斬新な設定の恋愛漫画だし、浮気願望とか身体だけの関係などに嫌悪感がない人なら楽しめるはず(読み物でも嫌だって人じゃなければ)。

※本作は全9巻ですが、ストーリー自体は全8巻で完結していて、9巻目は「あれから」を描いた最終エピソードとなっています。

 

あとがき

自分が好きな男が好きな女を好きな男を上辺だけ好きになる話。

 

 

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