最近は勢いが弱まってきたような気がしないでもないですが、少し前の漫画界は「熱血モノ」が猛威を振るっていました。特に道を踏み外そうとしている少年・少女に対し、等身大で向き合って更生させるという類の作風は、平成の前半までめちゃくちゃ人気のあるジャンルだったと言っても過言ではありません。
本作もそんな感じの要素を持った警察官の物語です。でもこの警察官、普通じゃない。というわけで今回は、少年犯罪に体当たりで取り組む警察官の物語「シバトラ(全15巻完結済み)」を紹介します。
シバトラ あらすじ
ストリートにうずまく「ココロの叫び」を聞け。少年係刑事・タケトラ出動! ――見た目が“中坊”な巡査・柴田竹虎(=タケトラ)は、少年係刑事を熱望するアツい男。ある日、ミステリアスな万引き少女を狙う「殺意」に気づいてしまったタケトラは、彼女の闇を救うべく走り出していくのだが……!
シバトラの見所をチェック!!
ちょっと風変わりな熱血系警察官物語
熱血系の物語の大前提として、主人公が強者という設定があります。昭和後半から平成初期にかけて作られた熱血ドラマなんかでも主人公が圧倒的に強く、腕っぷしの強さと熱い気持ちでもって不良たちを更生させていくという感じの雰囲気が、視聴者に支持されていました(そういう時代でもありましたからね)。
そういう意味では本作は少し異端で、主人公のタケトラは見た目が童顔のせいで不良少年たちから舐められっぱなしという…。もちろん気持ちの面では非常に強く、剣道の腕前も日本一という設定はあるんですが、いかんせん強そうに見えない。
でも、これこそが真の強さと思わせるような魅力に溢れています。結局、力でねじ伏せない強さって言うんでしょうか。少年係の警察官としては理想の鏡と言っても過言ではない主人公に、魅力を感じない読者はいないはず。
警察漫画にプラスワンの特殊能力
主人公のタケトラには「人を死の世界に引き込む手」が視えるという特殊能力があります。これが視えると対象者が死んでしまうというものではなく、死の危険が迫っているとか殺意が向けられている時に視えるものです。
この特殊能力を生かして事件を未然に防いだり、対象者の命を守ったり…。思い詰めている不良少年・不良少女だけでなく、同僚や仲間の危険を察知することにも使えるので、警察官の能力としてはチートと言っていいかもしれません。
この能力があるおかげで作風は現実離れしたもの(捜査員として学校に転校生として潜り込んだりもする)になっていますが、警察漫画にプラスワンされたサスペンス漫画として楽しむのが〇。
タケトラが少年犯罪にこだわる理由
タケトラが生活安全課少年係に固執する理由やタケトラの過去、特に「人を死の世界に引き込む手」が視えるようになったキッカケ等々。本作を読んでいるとタケトラの過去にスポットが当たるシーンもあるのですが、そのあたりの見応えも抜群です。
警察官と一口に言っても様々な人がいますが、警察官を目指すような人の多くは「熱い使命感」みたいなものを持って警察官になったという人が多いんじゃないかと思います。で、中には初心を持ちながらも点数稼ぎと思われるような行動になってしまう人も少なくないんだろうけど、本作の主人公は初志貫徹というか、まるで「生活安全課少年係に配属されるために生まれてきたのでは?」くらいの人物です。
現実世界においてとんでもない少年犯罪が起きたりすると、少年法の手厚さに溜息しか出ないという人は少なくないはず。そういう感情を持っている人が本作を読むと、ドラマ調なので「そんなに上手くいくかなぁ」という場面は否定できないものの、これを読まされて熱くならない読者はいないと思います。
シバトラを読んだ感想・レビュー
コミックス序盤を読んだ感想・レビュー
少年犯罪に当たる警察官によるサスペンス漫画として、「人を死の世界に引き込む手が視える」という設定はすんなり受け入れられたのですが、いくら童顔とは言え中学生に間違われるという設定や「犯罪捜査のために転校生を装って中学校に潜入して操作する」という設定が、個人的にはちょっと受け入れにくかったです。
ギャグ的な要素が大きければ引っかからなかったんだろうけど、全体的には真面目なサスペンス物なので、ちょっと盛った感じの設定に冷めてしまう部分がありました。
でも登場人物たちは魅力的なキャラクターばかりだし、何より主役のタケトラが愛されキャラです。本作を読んで警察官を志したという読者も少なくないだろうし、それくらいの魅力は序盤を読んだだけで伝わってきます。タケトラの過去も気になるし、さすがドラマ化された作品だと思いました。
コミックス全15巻を読んだ感想・レビュー
タケトラの魅力に溢れた全15巻でした。
少年犯罪がテーマになっていて、やたらと「信じる」という言葉が出てくるあたり、穿った見方をすれば「やっぱ漫画だなぁ」と思っちゃう瞬間もあるんだけど、全部の犯罪を見事に解決するスーパーマンってわけでもないので、その辺はそこまで引っかからないです。
結末に賛否あるようで、僕としても「え、急すぎるな…」と思う部分はあったけど、読者がどう捉えるかという落とし所を残したように見えなくもないかなぁと。終始、タケトラが良い奴すぎて「世の中の警官がこんな人ばかりだったら少年犯罪が減るんだろうなぁ」と思わされるあたり、キャラクターが魅力的な漫画だと思いました。
あとがき
柴田竹虎って名前のラーメン屋あったら美味しそう。
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