僕はド田舎に住んでいて、いわゆる不良っぽいような感じでも無いから、薬物がどうのこうのって事については見たことも聞いたこともないし、友達が使ってるってことも聞いたことがありません。
それでも芸能人が逮捕されるたびに、専門家が「薬物の魔の手はみなさんのすぐそばまで来ています」って言ってるのを聞いて、随分とまぁ大きな釣り針だなぁって鼻で笑うような感じだったんだけど、本作を読んでみるとそう遠くない所で起きていることのような気がしました。
というわけで今回は、覚せい剤・大麻・MDMAなど薬物使用者を取り締まる麻薬取締官の姿を描いた「マトリズム(全10巻)」を紹介します。
マトリズムのあらすじ
薬物犯罪調査を行う厚生労働省の職員である麻薬取締官、通称マトリが活躍する様子を描いた薬物犯罪ドキュメント。薬物犯罪はヤクザやならず者だけの問題ではなく一般市民にこそ多いとされているが、その実態に切り込んでいる。
フィクションなのかノンフィクションであるのかの判断は難しいが、薬物の入手経路や手を染め始めた理由など、どれもリアリティのあるエピソードばかりで構成されており、マトリがどのような行動をして薬物犯罪者を取り締まっているのかなどを簡単に知ることができる。
アンダーグラウンドな世界観を持った漫画作品を描くうえで、一場面として薬物を取り入れた作品は少なくないが、薬物犯罪ドキュメントという括りで見ると非常に希少な存在だと言えるだろう。
マトリズムの登場人物
草壁 圭五郎
本作の主人公でもある麻薬取締官の1人。容疑者に手を上げたり高圧的な態度を取ったりなど、しばしば問題行動を起こす。
見た目的にも厚生労働省の職員には見えないが、自分の中には信念のようなものを持っているようで、単に薬物の使用者や売人を逮捕することを目的としているのではなく、薬物犯罪を撲滅したいと心から願っているフシが感じられる。
冴貴 健一
いかにも優等生っぽい役人気質の麻薬取締官。作中では草壁とコンビで行動することが多い。
「薬物を取り締まることで誰が幸せになるか」という問いに対して、すぐさま「出世のための点数を稼ぐことで、私たちが幸せになる」と言い放っている場面からも、ドライで合理的な人物と思われる。
マトリズムの見所をチェック!!
麻薬取締官としての葛藤
僕も交通課の警察官とか見てて思うんだけど、ついスピードを出しちゃいそうな道路の脇に隠れて速度超過を取り締まるのってぶっちゃけどうなんですか?スピードの出し過ぎは危険だから事故になって死傷者が出る前に取り締まるって考え方をすると、隠れてないで見えるとこに警察が立ってたら誰もスピード出さないと思うんです。
なんか違反を無くそうっていうよりも違反を取り締まることが目的になってるっていうか…。違反を減らすのではなく、違反者の検挙数を増やそうとしているみたいな感じがします。
そんな感じのやつで麻薬取締官も薬物の売人をすぐに取り締まるわけではなく、あえて泳がせて芋づる式に検挙することを狙ったりしているわけです。その間も薬物に蝕まれていく人は増えていくわけで、一刻も早くって感じじゃないんだなーと。
でもそこに疑問を感じる人間もいて、理想と現実のギャップみたいなものが凄く響いてきます。
薬物の入手経路は、コネが無ければインターネット!?
本記事の冒頭で「僕は田舎者だし不良でもないから薬物に縁がなかった」みたいに書いたけど、周りにそういう人が多ければ自然と「お前もやってみる?」みたいになってんだろうなぁって思ってたら、インターネットなら誰でも購入できるんですよね。
当然騙されてお金だけ盗られるパターンもあるだろうけど、本物の売人が現れるケースだってありそうじゃないですか?僕はなんだかんだで自分で使ってみたいって思ったことがないから検索したことが無かっただけで、ネットを通じて手に入れた人も多そうだなぁと。
実際に待ち合わせして手渡しでってなったら相手もリスクを負うわけだし、ちゃんとした現物を渡す確率が高そうだし…。てか、その場で舐めろってキツいな。
かなり際どいブラックジョーク
「必ず手に入れたい物は誰にも知られたくない」と歌い上げた超有名歌手のAさんが、覚せい剤の所持&使用で逮捕されました。ついこの前のことのように感じますが、実は結構時間が経っているという…。
尿検査で陽性反応が出たと言われた矢先、そんなことはあり得ないという意味で「お茶を入れた」と声高らかに言ったのを覚えています。結局あれは、なんだったの?
…まぁいいんだけど、本作ではそのネタを派手にイジってるんですよね。僕としては「そんなこと言ったら怒られるんじゃないの?」っていう踏み込んだネタが嫌いじゃないので、この先もこういうネタが出てくることに期待しています。
マトリズム 序盤を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
かなりの数の有名人が逮捕されてるってこともあって、薬物関連に興味があるって人も多いんじゃないかと思うんだけど、基本的には道徳の授業なんかで見るような内容の作品だと思いました。
良く言えば「薬物が身近で危険なものに感じられて、決して近付いてはいけないということを柔らかく指摘している作品」って感じ。僕みたいに知識のない人間が読んでも「MDMAが何なのか」って簡単な説明もしてくれてるし、取っ付きやすいです。
ただ、薬物の本当の怖さが見えてこないという部分が少し残念でした。薬物を使用したせいでとんでもないことになった人間の末路みたいなものを描いてしまうと、それが原因で何かに引っ掛かるんであればアレですけど。
ここで取り上げられている人たちは、ほぼすべてが「使用はしたけど取り返しのつかないことになる2~3歩手前の人」のような気がするので、今後はアンダーグラウンド感を強めるためにももう少し恐怖感を煽ってくれる展開を期待しています。
あとがき
結構なアンダーグラウンドの世界を描いてるわけだから、めぐリズム的な感じでマトリズムとかやめてくれ。