僕が本作を初めて読んだときに思った感想としては「こういう作品を面白いって言っておけば玄人感出るよね」というものでした。言葉を選ばずにぶっちゃけるなら「何が面白いか分からない」というものです。
でも、ありとあらゆる先入観を取っ払って素直な気持ちで読み返したら、非常に心地良くて素敵な物語だと思いました。だから面白くないって人の気持ちも分かるし、面白いって人の気持ちは超分かる。
面白いと感じられる側に来れれば、これ以上に心地良い1巻完結漫画にはそうそう簡単には出会えません。というわけで今回は、子供の頃の夢を大人になってから実現させる物語「我らコンタクティ(全1巻完結済み)」を紹介します。
我らコンタクティ あらすじ
冴えない会社員をしているカナエは、小学校時代の同級生中平かずきと再会する。彼はナゼか一人でロケット開発をしていた。かずきの驚くべき目的を知り、カナエは思わず脱力!だけど、二人は一緒にロケット開発をすることに!カナエとかずきが小学校の時に見たUFOも絡み、思いもよらぬ方向へ物語は進む!いくつかの短編漫画をアフタヌーン誌上に発表し好評だった森田るい氏が満を持して放つ初長編漫画!
我らコンタクティの見所をチェック!!
かつての同級生と「夢を実現させる」物語
本作のテーマは「子供の頃の夢を叶える」というもので、その夢っていうのが宇宙ロケットです。かなり端的に言えば、幼少の頃に宇宙を夢見た二人が宇宙にロケットを飛ばす物語って感じ。
で、普通のありきたりなストーリーであれば、幼少の頃に好きだった相手との約束を叶えるとかそんなんだと思うんだけど、本作にはそういうラブコメ的な要素が一切ありません。何なら今はともかく幼少の頃に恋心を抱いていたかどうかも不明。
だから「なんでそんな二人が一緒になって子供の頃の夢を実現させようとしてんの?」ってなってしまいがちだけど、そういう人は本作を楽しめないような気がします(実際に初見時の僕がそうでした)。夢を実現させるのに理屈や理由は必要じゃないっていう目線で読めば本作の色は大きく変わるはず。
リアルとファンタジーの狭間にある不思議な空間
本作はリアルでもなく、かと言ってファンタジーでもなく…良い意味で曖昧な世界の物語となっています。この不思議さを楽しめるかどうかが、本作を楽しめるかどうかのポイントです。
本作の最終目標は「宇宙にロケットを飛ばして、宇宙空間で映画を上映する」というものですが、永久機関のような仕組みづくりをするために理屈っぽいことを言い出しかと思えば、宇宙に飛ばすためのロケットを一人で作り上げるというファンタジーみたいな部分もあり、ちょっと困惑してしまう読者も少なくないかもしれません。
ですが、この微妙なバランスこそが本作最大の見所だと思います。宇宙で上映会をするためのヒントをテラリウムから得たりするので、こういう自由さ・柔軟さを楽しめると最高です。
果たしてロケットの打ち上げに成功するのか
本作を読み始めてすぐに気が付くのが「本作はバッドエンドで終わるタイプの漫画じゃない」ということ。上手く言えないけど、雰囲気的にハッピーエンドで終わる気しかしません。
だけどそのハッピーエンドの形はまったく見えてこないから面白いです。まず気になるのは「宇宙ロケットの打ち上げに成功するのかどうか」という点。例え成功しなくてもそれが失敗とは言えず、そもそも打ち上げるという行為そのものが既にすごいからね。
そして「仮に打ち上げに成功したとしても、次は宇宙で映画が上映できるかどうか」という点も気になります。というかどこかで失敗したとしても、この二人なら笑って終わりそうだなっていう感じが伝わってくるし、何より大人になってから幼少の頃の夢にチャレンジするっていう姿勢がすでに眩しいので。
いずれにしてもとケットの打ち上げにはいくつかの困難が待っているので、それらをどう解決していくのか、そして幼少の頃の夢は実現するのかどうかという部分に注目です。
我らコンタクティ 全1巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
ぶっちゃけ最初は意味が分からなくて、何度か読み返していくうちに好きになっていったという感じ。かなりクセが強いので万人にはおすすめしにくいんですが、僕も今ではすっかり虜で、非常に良く描かれている漫画だと思っています。
初見の時は漫画好きの友人に勧められて読んだんだけど、「絵も上手くないし、登場人物も魅力的じゃないし、そもそもその辺の民間人が宇宙ロケット作るって非現実的すぎ」って思ってました。
でも漫画なんてほとんどが非現実的なわけで、そこを取っ払って読み直したら少し面白くなり、その次に見返したら今まで考えなかった登場人物たちの心境みたいなものも考えることができて、すごく面白くなったんですよね。
本作の魅力は言葉に変えるのが非常に難しいと思っていますが、一番伝えたいのは「小さい頃の夢を大人になってから叶える」っていうのは素敵だっていうことです。誰しもが成長の途中で「夢は夢」と割り切っちゃう中で、それをしなかった大人の心地良い物語だと思います。
あとがき
人類みなコンタクティ。