古代ローマって言われると残酷なイメージしかないんだけど、まさにそんなイメージにぴったりの作品がこちら。タイトルと表紙絵からも想像がつくように、戦うことを強制された奴隷が主人公の漫画です。
ここだけ聞くとバトルアクション漫画だと思ってしまうだろうけど、実は本作は心理描写や歴史背景が巧みに描かれていて、バトル以外にも大きな見所がたっぷり用意されているんですよね。というわけで今回は、古代ボクシングと歴史ロマンの融合「拳闘暗黒伝セスタス(全15巻完結済み)」を紹介します。
拳闘暗黒伝セスタスのあらすじ
紀元54年、ローマ帝国の最下層「拳奴養成所」。ここに身を置く少年セスタスは、生き残るために戦い続ける運命だった…。
本作は全15巻で一旦完結していますが、続編「拳奴死闘伝セスタス」へと続きます。
拳闘暗黒伝セスタスの見所をチェック!!
コロシアムで戦わされる奴隷(拳奴)が主人公
本作の主人公は余興の古代ボクシングで戦わされている奴隷の少年です。古代ボクシングって言ってもルールなんてほとんど無いようなもんだし、負けた方は処刑されることもあるっていうかなり過酷な内容となっています。
かつて伝説的な強さを誇っていた師匠から徹底的にテクニックを叩き込まれて、持ち前のスピードを活かしながら数々の強敵を撃破していく姿はまさに圧巻!巧みなフットワークと正確無比な打撃で、自分より大人で体格に恵まれている拳奴たちをバッタバッタと倒していきます。
負けたら死ぬこともあるような過酷な世界で、果たして主人公は勝ち続けることができるかに注目です。
数々の宿敵やライバルたち
負けると死を覚悟しなければならないような世界ですが、中には宿敵やライバルというようなキャラたちも存在します。基本的には主人公と同じ立場の拳奴がほとんどで、たまに皇族や皇族に所縁のある格闘家が登場するっていう感じ。
そして師匠にも過去の因縁の相手がいて、その弟子同士が戦うみたいな展開も大きな見所です。特に師匠同士の因縁はかなり深いモノで、相手側は現在の立場もかなり高い地位にあって度々衝突することになるので、決して無視できない存在と言えるでしょう。
そして奴隷という立場上、買い手が変わったら環境も変わってしまいます。時に師弟が離れ離れになってしまったり、その先々でまた新たな人物と出会ったり…これらの出会いが主人公を成長させていく展開は見所たっぷりです。
立場が異なる三人の少年と政治的な背景
本作のジャンルは格闘漫画・バトル漫画という太い幹の他に、歴史漫画としての大きな側面も持っています。舞台は帝政ローマということで皇帝ネロの姿も。
本作には主人公が三人います。一人はタイトルにもあるように拳奴のセスタス、そのライバルの天才格闘家ルスカ。そして皇帝のネロです。三人とも境遇が違ってそれぞれに苦悩と運命があり、その運命に抗う姿に見所がたっぷり用意されていると言っても過言ではありません。
特にこの時代の権力争いや政治みたいな部分にスポットが当たることもあり、ただの余興じゃない戦いが始まったり、権力争いのための暗殺等のいざこざが始まったり…ローマ時代の読み物としても一級品です(ただしフィクション要素も多め)。
拳闘暗黒伝セスタス 全15巻を読んだ感想・レビュー
あくまで主人公は拳闘をベースにしているので、パンクラチオン等の総合格闘技で戦うことがないっていう部分のバランスが良かったと思います。ルール無用で階級も無視で最強になられちゃうと、ちょっと冷めてしまうという人もいるんじゃないかと思うんだけど、その辺はあまり心配いりません。
敗者が簡単に命を奪われてしまうような厳しい世界の話で、バトルアクション部分の見応えは言うまでもありませんが、拳奴たちの心理描写や歴史的背景など細かい部分にも見応えが用意されている作品です。
むしろ人間ドラマとしての見応えの方が大きいんじゃないかと思えるくらいなので、バトルアクション漫画や格闘漫画が好きな人だけでなく、歴史漫画やヒューマンドラマが好きな人にもおすすめします。
あとがき
負けたら死ぬってすげー世界だな。