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「鬼燈の島―ホオズキノシマ―」を読んだ感想・レビュー

鬼燈の島―ホオズキノシマ―表紙
Ⓒ 鬼燈の島―ホオズキノシマ―

自分が小学生低学年の頃、大人っていうのは何でも知っていて嘘をつかないんだと思ってました。同級生は嘘をつくし、自分も親に怒られているときに嘘をついたりしてたし。

でも「今思えば…」っていうことが結構あって、うちの親も学校の先生も嘘ばっかだったなぁと。その最たる例は「早く帰ってこないと鬼が来る」とか。今思うと結構腹立つレベルのやつもあります。

小学生高学年にもなれば色々と大人について怪しみ始めたりするんでしょうが、本作はまさにそんな感じの物語です。というわけで今回は、誰が本当のことを言っているのかが分からない系サスペンス「鬼燈の島―ホオズキノシマ―(全4巻完結済み)」を紹介します。

鬼燈の島―ホオズキノシマ― あらすじ

家庭に問題のある子供達を引き取る施設『鬼燈学園』。そこには、知ってはならない『秘密』がある――。“登ってはいけない階段”。“書き殴られた悲痛の叫び”。“白いワンピースの少女”。そして“嘘が得意な大人達”。自然豊かで優雅な離島が、虚偽と欺瞞で血に染まる…。

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それぞれ事情や辛い過去を秘めている子供たち

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Ⓒ 鬼燈の島―ホオズキノシマ―

本作は海に囲まれている島にある学校のような所が舞台になっていて、そこに暮らすのは教師4人と子供6人。子供たちは何かしらの過去を抱えていて、中には目が見えなかったり、過去の恐怖体験から言葉をし喋れない子も。

まず孤島っていう設定がサスペンス要素として際立っていて、これからの物語の流れとして非常に重要な要素となっています。というか自然がたくさんある孤島で起きるサスペンスって、それだけでめちゃくちゃ怖い。

そして学園は老朽化が進んでいて特定の階段しか登ってはいけなかったり、学園の外には通っちゃいけない道なども存在していて、その理由については明かされていません。

大人の言うことを信じてはいけない

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Ⓒ 鬼燈の島―ホオズキノシマ―

本作の主人公の少年は引っ越してきたばかりで島の状況をほとんど知らないのですが、どうやら主人公がこの学園に来る前に1人の少年に何らかのアクシデントがあったようです。そしてその少年が使っていた部屋で寝泊まりしている主人公は、開かなくなった引き出しの中から血の跡とナイフを発見するという…。

これを大人たちに聞いたところで正直に答えるわけがないし、なんなら「子供は知らなくていい」と蚊帳の外にあしらわれてしまうのが筋です。もしその少年が死んでしまったとしても「事故にあって島の外の病院に…」くらいは言うでしょう。

そこで周りの子供たちから「大人の言う事を信じるな」と言われたら、普通の子供なら先生と仲間のどっちの言うことが本当なのかが分からなくなってしまうはず。そんな揺れ動く様子なども含めて、本作には見所がたっぷりです。

息が詰まるほどの恐ろしい展開

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Ⓒ 鬼燈の島―ホオズキノシマ―

本作の1番の見所はやっぱりサイコホラーと言っても過言ではないくらいの、恐怖にまみれた展開です。ここについては多くを語らないので、実際に本作を読んでもらえたらと思います。

本作は謎解きというか「この学園には秘密がある」みたいなテーマがあって、大人に聞いてもそれを教えてくれないから子供たちで答えを探し出す…みたいな作風になってるんだけど、ある瞬間からガラッとテンポが変わるんですよね。これはぶっちゃけサスペンスじゃなくてサバイバル。

こういうのを見ると誰を信じるべきかっていうのは難しいし、ついていく相手を間違うのは本当にリスキーだなぁと。大人には悪い人がいっぱいいるし、子供は想像で喋る可能性もあるので。

鬼燈の島―ホオズキノシマ― 全4巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

全4巻という長くないボリュームで目まぐるしく展開が動いていくので、読んでいてかなり忙しかったです。サスペンスに必要なものがすべて詰まっていて、ミステリ・サスペンス好きの人なら楽しめるんじゃないかと思います。

まず主人公目線で物語を見たときに「誰を信じるのが正解なのか」みたいな謎があって、疑い始めたらキリがないという感じの物語が最高です。同じ子供を信じたくなる気持ちも分かるし、大人がそんな嘘をつくかなぁという疑問も理解できるし。

大人になると分かるけど「子供には理解できないし、理解する必要がない」みたいな感じであしらうことって、その子供が大人になっても覚えてたりするじゃないですか?そういうところから不信感が生まれてくるということを上手く表現していると思います。

個人的に結末はちょっと残念でした。途中が面白すぎて自分の中でも結末を予想しながら読み進めてたんだけど、悪い意味で期待通りじゃなかったという感じ。全4巻でサクッと読めるからおすすめしたい部分もありますが、サスペンスとしてのクオリティは同作者が描いている「僕だけがいない街」の方がおすすめです。

あとがき

ホオズキの花言葉は嘘、偽り。