「士農工商」って言葉が有名すぎて、いつの時代も武士は良い生活をしているもんだと思いきや、実はそうでもないっていうね。ちなみに今の日本史の授業では、士農工商みたいな身分制度は無かったことになっているということを知って驚かされました。
確かに「武士は食わねど高楊枝」って言葉もあるから、決して良い生活を送れてたってわけじゃないんだろうけど、その辺の事情を詳しく掘り下げたのが本作です。というわけで今回は、剣と銭で成り上がるリアル時代劇漫画「武士のフトコロ(全7巻)」を紹介します。
武士のフトコロ あらすじ
貧困にあえいだ江戸時代の侍たち! 下級武士の年収は114万5千円!!! 50俵3人扶持の飛田家の次男にして二刀時中流の堀井道場・師範代である飛田蔵之丞。今はまだ何者でもない蔵之丞は、大藩へと仕官し、大金を掴むという夢を抱く!! 武士の懐事情からキビしかった暮らしの実態に迫る! 剣と銭で成り上がれ! 大江戸リアル時代劇堂々開幕!! リアルを知れば“江戸”がもっと身近で面白くなる!
ちなみにKindle Unlimited登録者なら無料で読めるのでぜひ読んでみてください(本記事執筆時点で全巻対象です)。
武士のフトコロの見所をチェック!!
江戸時代の武士の懐事情に特化した歴史漫画
慌ただしく何かしらの争いが多発していた戦国時代とは違って、江戸時代はある程度の平和があって生活の仕方にも多様性が出てきたんじゃないかと思います。武士だから食えるという時代は終わり、武士の中にも格差が生まれている時代と言ってもいいでしょう。
どこかに仕官できれば贅沢な暮らしができるかもしれませんが、それも簡単な話じゃありません。家を継ぐことができる長男はさておき、次男ともなればかなりのハードゲームになることは想像に容易いです。
本作は武士の次男に生まれた主人公が「二刀時中流」を武器に、自身の懐を温めていこうとする時代劇漫画となっています。所々に江戸時代全体の景気なんかにもスポットが当たっているので、一風変わった歴史漫画が読みたいという人におすすめです。
剣術でのし上がっていこうとする様子
本作の主人公は「二刀時中流」と呼ばれる流派で剣術を磨いており、町の道場の師範代を務めています。この時代には道場破りなんかも存在するし、そもそも士官先にありつくためには剣術で登り詰めることが有効ですから、迫力ある剣術アクションシーンも大きな見所と言っていいでしょう。
ちなみに二刀流って宮本武蔵から始まったものだと思っていたら、 本作の主人公が使う「二刀時中流」 も宮本武蔵にルーツがある剣術でした。今の剣道界を見渡しても二刀流がほとんどいないように、恐らく二刀流は実戦で使えないから廃れていったと思うんですが、大きく現実離れをしたファンタジー漫画でもなければ二刀流の剣術なんてなかなか見られないので、そういう意味でも楽しみは増すんじゃないかと思います。
根底にお金の話があるから軟派な漫画のように感じるかもしれないけど、剣術試合の時なんかは迫力満点で見応えたっぷりです。
二言目にはお金の話
時代劇漫画において「長屋で娘が暴漢に襲われた」みたいなシーンがあれば、普通は仇討ちって話になるだろうし、話が脱線したとしてもせいぜい「娘を嫁にもらってくれ!」みたいなことを父親から言われるっていう程度じゃないですか?
でも本作の場合、二度と襲われないように対処しなければっていう話から相手が剣術に長けていることを知り、一旦ビビるんですよね。「負けたらどうしよう…」ってなるんだけど相手の流派と自分の流派、更には「勝った場合のメリット」みたいなことを天秤にかけてから向かうっていう…。
長屋の娘どうこうだった話が、気付いたら水戸藩に召し抱えてもらう話にすり替わったりします。ちょっと生々しい部分が多いけど、こういう漫画はなかなかないのでお金の話が好きな人は楽しめること間違いなしです。
武士のフトコロ 1巻を読んだ感想・レビュー
第一印象は「江戸時代の武士版グラゼニ」だと思いました。武士のお給料とか仕事内容、王道の出世方法から食生活に至るまで、色んな角度から武士の懐事情に触れられています。
剣術道場を営むにしても戦国時代に比べたら実戦の機会はかなり失われてるわけで、剣術道場の師範代で終わるか有名なお殿様に仕えることができるのかっていうのは大きな違いが生まれるはず。その欲が常に付きまとう感じがめちゃくちゃ斬新で面白いです。
一風変わった歴史漫画を探している人には文句なしにおすすめだし、こういう裏事情を知ることでこの時代に興味が出てくる部分もあるので、歴史に苦手意識のある人にもおすすめします。