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「江戸の検屍官」を読んだ感想・レビュー

江戸の検屍官表紙
Ⓒ江戸の検屍官

犯罪捜査系のドキュメンタリーなんかを見ていると「今ってもうこんなことになってんの!?」っていう驚きが絶えません。最先端すぎるというか、ここまで来て未解決な事件ってどういうことよって思ったり。

一方でここまでの技術が確立される前の時代においても、それはそれで凄いって思わされるっていうね。というわけで今回は、時代劇×検屍×ミステリー「江戸の検屍官(連載中)」を紹介します。

江戸の検屍官のあらすじ

現代の捜査では常識である【検屍】。実はこの考えは江戸時代から実在した!検屍バイブル「無冤録述」を片手に北町奉行所に勤める北沢彦太郎は、同僚ですら嫌がる《検屍》に熱を上げ、周囲からは変わり者扱いされている。それでも北沢の心に灯るのは、無念に散った死者達の死の真相を闇に埋もれさせぬという熱き思い。そんな北沢を助けるのは検屍と女が大好きな医師・玄海、異才を放つ天才女絵師・お月。二人の協力を得て、北沢は死体に残された僅かな証拠から真相を暴き出す――!

江戸の検屍官の見所をチェック!!

江戸を舞台にしたミステリー漫画

江戸の検屍官1
Ⓒ江戸の検屍官

現代の犯罪捜査なんかでは町中の監視カメラによって犯人の追跡が可能になっているし、現場に残された遺留品からはDNA鑑定による高精度な捜査ができるようになりました。…が、このDNA鑑定は精度がまだ低かった時代に間違った例も少なくないし、江戸時代にはまだ存在すらしていません。

本作はそんな江戸時代を舞台に検死官として活躍している主人公の姿を描いた作品です。江戸時代にどのような検死が行われていたかという興味の尽きない作品と言っていいでしょう。

現代の科学捜査と言えば「トレース 科捜研法医研究員の追想」が有名ですが、それとは手段も方法もまったく異なっているため、別物の漫画と言っていいほどの違いを感じました。ちょっとアナログながらも今の犯罪捜査に繋がる原点が堪能できるミステリー作品だと思います。

人が死んだ時にどこまでやるのかっていう謎

江戸の検屍官2
Ⓒ江戸の検屍官

僕もたまーにだけど「もし自分が急死したら…?」みたいなことを考えたりします。一人アパートで変死していたってなった時に、僕もまっぱにされて検死とかされるんだろうか…。そりゃされるか。

今のご時世、一人暮らしをしていて変死してから数週間後に発見される的なお年寄りなんて山ほどいるんだろうけど、その人たちも事件性があるかどうかなんて調べてみないと分からないわけで…。なんか勝手な想像だけど、検視する側の人間におもちゃにされる感覚っていうのかな。

手術も上級国民相手には腕のある医者が担当して、僕には研修医に経験を積ませる的な。そういう考えをしてしまう僕にとって非常に興味深い内容だらけでした。そして「こういう検屍官なら安心できる」というような主人公だっていう部分も大きな見所です。

似顔絵というアナログながらも有効な手段

江戸の検屍官3
Ⓒ江戸の検屍官

最近はCGなんかも進歩してきましたが、まだ街角に貼られている指名手配犯のポスターは似顔絵だったりもします(いや、もしかしたらもう似顔絵とかあんまり見ないかな)。

個人的には「あまり似つかなかった時に逆に先入観を植え付けてしまうんじゃないか?」みたいな部分があって、まぁそれは何年も経った時に同じ写真を使っているっていう部分もそうなんだけど、あまり信用できない分野だと思っていました。

でも本作を見る限りではめちゃくちゃ有効な手段だし、現実世界においてもそれを今でも使ってるってことは有効な手段っていうことなんでしょう。こんな感じで昔には昔の捜査方法みたいなものが確立されていて、目から鱗的な情報が満載です。

冤罪や自白強要などの一面も

江戸の検屍官4
Ⓒ江戸の検屍官

そしてこの手の犯罪捜査で切っても切れないのが「冤罪」です。今ですら刑事の恫喝や自白強要が明るみに出てるわけですから、当時にそれがなかったわけがありません。まして今よりずっと罪人の管理も杜撰だったろうし、それを叩くためのマスコミみたいなもんも機能していたのかどうか…。

本作の主人公は冤罪を防ぐために全力で行動をしていて、その姿は読者を惹きつけて離さないのではないかと思います。最後の最後まで真実を追い求める姿は、ミステリー作品として最高のお楽しみ要素と言っていいでしょう。

謎解きミステリーが好きな人には文句なしの作品です。水死体とかだとちょっと膨らんでいたりして少しリアルに感じてしまうかもしれないけど、検死という現場のリアルさに直結している部分でもあるので、グロ耐性がないって人が手に取る価値も十分にあると思います(とは言ってもそこまでグロいわけでもありません)。

江戸の検屍官 序盤を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

昔、小学生の頃に答えを発表するときは「~だと思います」じゃなくて「~です」って言うように指導された記憶があるんだけど、個人的には決めつけは良くないと思っている部分もあって、検死はとにかく疑ってかかる仕事なので僕にはすごく刺さる作品でした。

飛び降り自殺にしても「足から落ちる」とか「頭から落ちる」みたいなことで、ある程度は自殺なのか他殺なのかが分かるって言われているけど、ありとあらゆる可能性を考えながら全てを疑ってかかるっていうのは、簡単そうで難しいことなんだろうと思います。

しかも本作の舞台になっているのは江戸時代ということで、現代では当たり前の技術も使えないという状況です。その中でも真実を見つけ出す執念が面白くないわけがないでしょう。ミステリー漫画、時代劇漫画、医療漫画が好きな人におすすめです。

あとがき

お上の事情なんかにも触れている一作です。