僕が小学生の頃、仲が良かったS君の家では割と深刻なご近所問題に悩まされていました。向かいに引っ越してきた人がまぁうるさくて、S君の家の前でバスケットボールやサッカーボールを地面にバウンドさせようもんなら「公園でやれ」と木刀を持って追いかけ回してくるような人だったんですよね。
当時、インラインスケート(ローラースケートみたいなやつ)が流行ってたんですけど、それでS君の家の前まで行ってしまうと追い回されることになるので前後100mで脱いだりしていました。
本作はそんな幼少期を思い出させる感じのサスペンス作品です。というわけで今回は、ご近所問題が加速しすぎた様子を描いたサスペンス「怪人X~狙われし住民~(全3巻完結済み)」を紹介します。
怪人X~狙われし住民~ あらすじ
【住民】――特定の土地に住む人、またはその集団――あなたの町にはどんな住民がいますか?悪質なクレーマー、子供を虐待する一家、“いっそ死んでしまえばいいのに”と思う住民はいませんか…? 夫の転勤で住宅街に引っ越してきた君塚良枝は、期待と不安が入り混じった新生活を送っていた。近隣住民は「クレーマー老婆」「不審な小汚い男」などひとくせもふたくせもある様子。頼りになる町内会役員・高山の協力もあり、何とか日々を過ごしていた頃、次々と住民が命を落とす悲惨な事件が起きた!!“人間の狂気と憎悪”を生々しく描く戦慄サイコサスペンスがここに誕生!!
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リアリティはないけど、これに近いモノはありそうな気がする不気味さ
かつて大々的に報じられた「騒音おばさん」をご存知でしょうか。世の中には色んな人がいるので、ご近所問題に関してもお互い様だとは思わず自分の意見を曲げずに主張してくる人も少なくありません。集合住宅なんかでも問題になりやすいのが騒音ですが、度を超えてしまうと不眠症やノイローゼに悩まされているという人も出てくることでしょう。
それくらい嫌な人間が近所にいるのであれば「自分にとって都合が悪いことは、すべてアイツのせいだ!」と短絡的になってしまう気持ちも理解できませんか?
例えば騒音問題でぶつかりまくっている気に食わないお婆さんがいて、ある時「自分の家の窓ガラスが割られていた/ポストに動物の死骸が入れられていた/玄関先に動物のフンが集められていた」等の出来事が起こった場合、真っ先にそのお婆さんを疑うのではないかと思います。
そんな時に「あの婆さんがやったのを見た」という人間が現れたら…そして焚きつけたとしたら…。そのような感じで周りの人間関係やトラブルの隙間に入り込み、自分の思うとおりに住民をコントロールする人間がいるとしたら…。本作はさすがにリアリティには乏しいものの、この日本のどこかで近い事例があってもおかしくはないという狂気に満ちたご近所サスペンスです。
人は見た目では判断できない…!?
個人的には「人は見た目でもある程度は判断できる」と思っています。もちろん有名な歌にもあるように、生まれた所や皮膚や目の色で人を判断できるとは思っていません。
しかし明らかに人目につきやすい部分にタトゥーを入れている日本人や、奇抜すぎるほどの服装や髪形をしている人とは、なるべく距離を置いてきました(もちろん良い人はいると思いますが、自分とは合わない人が多いような気がしています)。
本作の件で言えば「ご近所問題について相談に乗ってくれて近所の評判も良いAさん」と「そんなAさんに気をつけろと忠告してきた不審な雰囲気のBさん」という縮図があります。詐欺師なんかは一見すると善人を装って接近してくることが多いので、それこそ見た目や第一印象で判断するのは難しいかと思うのですが、見た目的にもみすぼらしいというか明らかに不審な人物からの忠告を素直に受け入れるのもまた難しい問題です。
このように単純ではあるんだけど「どっちを信じたらいいんだろう」的な葛藤は、本作の不気味さに拍車をかけていると言っても過言ではありません。
怪人X~狙われし住民~ コミックス全巻を読んだ感想・レビュー
基本的には「引っ越してきた新婚夫婦→ご近所物語で病んでいく→次から次へと事件が起こる→真相へ」という流れです。全3巻完結なので駆け足ではありませんが、詳しく掘り下げているという感じはありません。
序盤に胸糞悪い展開が続くので読者を選ぶんじゃないかと思います。暗い展開が続くのであれば、読了後の爽快感もそれなりにないと…って感じる人は少なくないと思いますけど、本作はそこまでスッキリもしないです。
最近は近所付き合いも希薄になってきて、極端に言えば「隣にどんな人が住んでいるかが分からない」という人も珍しくないのではないでしょう。それが当たり前に感じてしまう若い読者には一切刺さらないんじゃないかと思うし、僕のように「過去にご近所問題を体験したことがある(そして大きな事件にはならなかった)」という人なら、俯瞰的な視線で楽しめるんじゃないかと思いました。
あとがき
僕のアパートの隣の人は、自炊でキッチンに立つときにミスチルを歌っています。