昔、じいちゃんが亡くなった年のお盆に「海に行くな」と言われました。理由を聞くと「じいちゃんが寂しがって海に引きずり込むから」みたいなことを言われたんだけど、会えるもんなら会いたいって思ったのを覚えています。
とは言っても死者に会えることが幸せなことなのかどうかっていうのも、また難しい問題だなぁと思うわけで。本作はとある条件さえクリアすれば、死者といつでも面会・会話できる世界の物語です。
というわけで今回は、死者が蝶になる近未来SFアクション「バタフライ・ストレージ(全4巻完結済み)」を紹介します。
バタフライ・ストレージ あらすじ
人は死ぬと、その「魂」が「蝶」の形になって身体から抜け出る。蝶が飛び立ったあと肉体はすぐに朽ち果ててしまう。蝶を管理する国家機関「死局」に勤める小野百士は、14年前、飛行機事故で家族を失った。百士が覚えているのは、何者かが千里の蝶を奪い去り、今もまだ見つかっていない。妹の蝶の手がかりを探るため、百士は死局での道を選んだ。果たして、千里の蝶の行方とは…。蝶=魂をめぐる近未来SFアクション!
バタフライ・ストレージの見所をチェック!!
人は死ぬと蝶になる
本作では「人は死ぬと蝶になる」という概念があります。この蝶は寿命が49日間で、これを過ぎると蝶は消えてしまうんですが、特殊な処置を施すことで永久的に保管できるようになり、その処置をして蝶を保管している機関を死局と呼びます。
保管されている蝶はいつでも呼び出すことができ、亡くなった当時の姿のまま面会が可能っていうね。家族が亡くなってしまってもその蝶をちゃんと捕獲・管理できていれば、会いたいと思ったときにいつでも会えるという世界の物語です。
ここまでを聞くと死んだ家族に会えるなんて最高だって思うかもしれないけど、それゆえに蝶の盗難や闇売買のような問題が起きてきたり、そもそも蝶をいつまでも保管しておくっていうことが死者に対する冒涜なんじゃないかみたいな宗教的な価値観の違いがあったりします。
単純にファンとかだったら大金はたいても有名人の蝶が欲しいって考える奴も出てくるだろうし、身代金目的で蝶を奪ったりすることも考えられるでしょう。これらに対して死局がどう対応していくのかどうかという部分に大きな見所が待っています。
双子の妹の蝶を見つけるのが目的
本作の主人公は死局に勤めている死局員の1人で、過去に事故で死にかけた経緯があります。その時に両親と死別している他、双子の妹の蝶を何者かによって食われており、この蝶を見つけるために死局員になったという経緯です。
ちなみに双子の妹は意思の疎通ができない状態ではあるものの、年も取らなければ死んでもいないので、主人公は蝶を取り戻すことで妹を元に戻せると考えています。
妹の蝶を奪った人物の正体、何の目的で蝶を盗ったのかなどの疑問が残る中、主人公は死局の任務をこなしながら、場合によっては手掛かりを得るために研究所に不正ログインしたりなど、危ない橋を渡って妹の蝶を探す姿は見応え抜群です。
蝶は誰のものか、どうするべきなのか
死んだ家族や大切な人に会えるっていうシチュエーション自体は素晴らしいと思うけど、それが良いことがどうかっていうのは思想が絡んでくる問題だし、色んな考えが出るところだと思います。
例えば不老不死にしたって年も取らないし死なないっていうのは良さげな感じがするけど、年をとるからこそのメリットというか良い部分っていうのが絶対にあって、年を取らないことがそんなにいいことかなぁってのはあるじゃないですか?
だから蝶は死局が管理するっていうルールを認めたくないって人もいるだろうし、蝶になって50日で消えるんならそのまま消してやった方がいいんじゃないかって考え方も理解できると思うんです。「蝶は誰のもの?」っていう部分を考えながら読むと、本作はめちゃくちゃ深い物語になります。
バタフライ・ストレージ コミックス全4巻を読んだ感想・レビュー
すごくよくできた作品で、最初から最後まで気になる展開が続きました。絵も綺麗だし、展開がとにかくスピーディーなのでテンポも最高です。
何より人が死んで蝶になる、そして49日で消滅してしまうっていう設定が面白い!現実世界で言うところの霊の概念に近い部分が多くて、でも霊のように不確かなものじゃなくてちゃんと誰にでも理解できるっていう点がいいですね。
そしてその蝶に対する考えの不一致で、大きな衝突があるっていう世界観も最高だと思います。主人公の宿命という幹に色んな要素が枝として付いていて、大樹のようなストーリーがギュッと詰まった全4巻です。
あとがき
死局員は死ぬな、殺すな。
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