「うめ短編集うめあわせ」を読んだ感想・レビュー

巻数的に短い作品がすごく好きで、そういう作品を多く描いてくれる漫画家さんは優先的にチェックしています。その中の1人が本作を描いている「うめ」氏です。

同氏の作品で言えば東京トイボックスとか南国トムソーヤとか…。全5巻以内に終わる名作がかなりあって超おすすめ。というわけで今回は、そんなうめ氏の初の短編集「うめ短編集うめあわせ(全1巻完結済み)」を紹介します。

ポチップ

うめ短編集うめあわせあらすじ

『大東京トイボックス』や『スティーブズ』『おもたせしました。』の作者”うめ”初の短編集！単行本未収録作品を中心とした全8作品に、今だから書ける作品ごとの裏話、さらには小説家・長嶋有による解説も収録したファン待望の一冊です。

以上の8編が収録された短編集です。作者のうめ氏は「大東京トイボックス」や「スティーブズ」などが有名。

カメラマンという肩書きを持ちながらも、長らく写真を撮っていないカメラマンが主人公の物語。舞台がグラビア業界ということで、大人になったら分かるカラクリなんかも含めて職業漫画としての一面も持ち合わせています。

高校の同級生がモデルを務めている写真のレタッチ作業を通して、学生時代の淡い思い出を思い出しつつ新たな一歩を踏み込む勇気を貰う…みたいな作品です。刺激のない退屈な日常を脱却する的な、前向きさがあるエピソードと言っていいでしょう。

グラビアなんかを見ていて「これは！」みたいに思うことあるじゃないですか？「まさか事務所が見落としたのか!?」みたいなやつ。それはもしかしたらビジネスうっかりかもしれません。

授業を聞かないヤンキー・たくちゃんに困っている先生から「代わりに勉強を教えてやってくれ」と頼まれ、勉強を教えたことがきっかけで仲良くなった主人公とたくちゃんの物語です。4ページ×8話ということで、かなり見応えがあるエピソードとなっています。

随所に不良っぽい要素がありながらも、根は良い奴感が満載のたくちゃん。お化けを怖がったりする可愛らしい一面も持ち合わせていて愛嬌も抜群です。個人的には「勉強が得意じゃないんだけど、たまに尋常じゃないくらいの賢さを見せる瞬間」みたいなのがすっげー好き。

根っからのアホみたいな不良は単純だからまだマシで、たくちゃんみたいに一貫性があってロジックに隙がないタイプは本当に厄介だと思いました。最初から最後まで心が和むヤンキー漫画です。

うめ氏の漫画は絵も雰囲気も優しいし、場合によって熱量を描き分けている感じがしてすごく好きです。本短編集にはそんな魅力が存分に詰まっています。

でも個人的な感想を言うと、後半に収録されているエピソードが本当に短くて物足りなさが目立つというか…せめてもうちょっと長く読みたかったなーと思えるデキでした。というか8ページって一瞬すぎる。

単に幸せなだけで終わらない日常というか、ちょっとした寂しさを残す日常みたいな心理描写が巧みで、思わず見入ってしまう世界観はさすがの一言です。うめ氏のファンならもちろん、ちょっとしたエッセンスのある日常漫画が読みたいという人におすすめ。

ちなみにKindle Unlimited登録者なら無料で読めるのでぜひ読んでみてください。

東京トイボックスみたいな熱量のある漫画もBLも描けるってすごいな。

ポチップ