子供たちがロボットに乗って謎の生命体と戦うという、どっかで聞いたことある感が満載の作品なんだけど、残酷&理不尽な世界観に一気に魅了されました。
かつてエヴァンゲリオンが流行った時、僕の中では「機動戦士ガンダム エヴァンゲリオン」だと思っていて、ガンダムファンとエヴァファンの双方から総スカンを食らったけど、本作をエヴァだと思っても痛い目に遭うんじゃないかと思う。
というわけで今回は、真相に気付くと世界がひっくり返るほどのインパクトを体験できるダークファンタジー「ぼくらの(全11巻完結済み)」の紹介です。
ぼくらの あらすじ
近未来の日本を舞台に描かれている作品。主人公は、巨大ロボットを操縦して地球を守ることを使命とされた少年少女たちである。1話1話毎に主人公の1人にスポットが当てられ、その人物の人となりや思いが明かされるようになっており、家族や社会などに対する考え方などが掘り下げられていく。
特筆すべきは「子供たちがゲームだと思って参加しているこの戦いが、実は単なるゲームではない」という点であり、圧倒的なスケールの負の連鎖に思わず息を呑んでしまうほど。もはや、ただのロボットバトルではない!残酷で理不尽なSFファンタジー。
ぼくらの 主な登場人物
15人の子供たち
本作の主人公は、ほとんどが中学生で構成される15人の子供たち。
ヒーローやヒロインという概念はなく、全員が主人公(エピソード毎に代わる)という流れ。
ジアース
子供たちによってジアースと名付けられたロボット。子供たちはジアースに搭乗し、襲来する敵と戦っていく。
ちなみにスペルは「Z earth」で普通にthe earthとしないあたりが厨二っぽくもあり、微笑ましい。良い意味で「この物語の人物たちは普通の中学生なんだなぁ」という気にさせてくれる。
コエムシ
ナビゲーターを務めるマスコット的キャラクター。かなり口が悪い。
ぼくらの 見所をチェック!!
命がけのゲーム
最初はロボットに乗って宇宙外生命体との戦いに勝ち、地球を救うゲームだと思っていた子供たちだったんだけど、なんだか雲行きが怪しいんですよね。
どうやら戦闘が終わるとその戦闘でジアースを操作していた人間は死んでしまい、さらに決着が着かずに72時間のタイムアウトでも、地球(正確には地球を含む宇宙)が消滅してしまうというルールがあるらしいです。
「自分が死ぬか、それとも自分や家族を含む全員が死ぬか」という究極の2択を迫られるのが、まだ若さの溢れる中学生ほどの子供たちであるという部分には、大きな不条理さを感じずにはいられないです。
僕はもう少年たちよりも親に近い年齢になってるから、自分が死んで子供を守れるなら躊躇なく命を張れるけど、そんな酷な選択を子供たちにさせてくれるなよって。すっげー心を抉られます。
十人十色の子供たち
最初はゲームだと思っていた手前、自分がヒーローになって地球を救えるんだとしたら、そりゃみんなジアースを操縦したがるわけで…。
ただし、これが「操作した人間は死ぬ」と言われたら、簡単に割り切れる人間ばかりじゃないってことくらいは容易に想像できますよね。大人でも無理っぽいのに、ましてや中学生じゃ絶対に無理。
うろたえる人間も出てくるし、死にたくないと考えるのは至極当然のこと。ただ、家族を救うために自分が犠牲になるという考えに繋がったりもして、優しさと残酷が両立している部分には一気に引き込まれてしまうほどの魅力があります。
自分が死ぬ前にやり残したこと
僕の中ですごく響いてきたのが「どうせ自分が死ぬなら、やり残したことはないだろうか」ということを振り返る場面。
例えば自分が同じような状況に置かれたとき、さすがに自分が生き残るという選択肢が無い以上は戦うんだろうけど「僕は死ぬのに、お前が生きていくのは許せねぇ」みたいな人っていませんか?
敵と戦う前に自分にとって恨みがある人間を排除する場面がすごく生々しく、同時に人間っぽいなぁって思ってメチャクチャ響いてきました。ヒーローでも何でもない、ごく普通の中学生が主人公の物語ということを痛感させられます。
敵の正体
こっちはワケもわからず、地球の命運を賭けた戦いに駆り出された若者たちがジアースの正体であるのに対し、敵の正体は一体何なのかという部分も大きな見所。
とりあえず「使途」っていう片付け方はしていないし、読者の大半が納得できる答えが用意されていると思う。少なくとも僕は「そうきたか!」って思った。この真相も本作が残酷な物語であるという事実に、拍車を掛けているものとなっています。
ぼくらの コミックス全11巻の感想・レビュー
最初から最後まで、とにかく不条理で残酷な物語という印象。ロボットに乗って地球を守る系のヒーローものだと思って手を出すと大変なことになると思う。それでも本作の世界観は唯一無二だと思うし、他のロボット作品とは一線を画している作品であることは間違いない。
僕としては「ここまで物語が残酷なんだから、せめてハッピーエンドで締めてくれないと泣いちゃうよ?」って思ってたけど、結末もこれはこれでアリだと思った。むしろ終始、徹底されていて良いと思えるレベルです。
伏線の回収もしっかりされていて、最初の助走の勢いのまま最後も綺麗に着地した作品。全11巻という短すぎず長すぎずのボリュームも絶妙だと言えるでしょう。
あとがき
作品タイトルが「ぼくらの」だけど、この後に続くの何だろう?って考えたら、しっくり来たのが「ぼくらの勇気」でサブタイトルに未満都市とか付けたくなった僕は完全にオッサン。
心躍るファンタジーにひとつまみの闇を!面白くておすすめのダークファンタジー漫画を紹介する