ぶっちゃけ高校の時に習ったような習ってないような…。教えてくれた先生もどんな人だったか、名前はおろか顔も雰囲気すらも覚えていません。僕にとって「倫理」はその程度の存在でした。
だから本作のタイトルや表紙を見た程度では、まさか本作がここまで面白い作品だとは思わなかったし、雨瀬氏が以前まで描いていたALL OUT!!というラグビー漫画を読んでいなければ、本作には出会わなかったと思っています。
ぶっちゃけ僕は倫理に全くと言っていいほど興味がないし、教師モノは生徒と体当たりでぶつかっていく熱量こそが魅力だと思ってたんだけど、本作には従来の教師モノとは全く違う魅力でいっぱいです。
というわけで今回は、本作の影響で教師を目指す人が続出しそうな「ここは今から倫理です。(連載中)」を紹介します。
ここは今から倫理です。 あらすじ
「倫理」とは人倫の道であり、道徳の規範となる原理。学ばずとも将来、困る事はない学問。しかし、この授業には人生の真実が詰まっている。クールな倫理教師・高柳が生徒たちの抱える問題と独自のスタンスで向かい合う――。新時代、教師物語!!
ここは今から倫理です。の見所をチェック!!
新時代の教師物語と呼ぶに相応しい作風
僕が幼少の頃はスラムダンクを読んでバスケを始めた人も多かったし、漫画やドラマの影響を受けて何かを始めたり、何かを目指したりという人が少なからず存在します。
で、やっぱり教師物語と言えば、僕の中ではGTOとかごくせんとか…。いわゆる「世間体としては眉をひそめざるを得ないような立場の人間が教師になり、不良たちと触れ合っていく熱い物語」が主流でした。「鬼塚みたいなグレートな先生になりてぇ」と言って教師になった人間も2人ほど知っています。
もうちょっと前の世代であれば熱血モノと呼ばれたものが多く、その当時の作品は先生が生徒に対して暴力を振るうのもおかしくない時代。GTOやごくせんは暴力ありきなんだけど、それを逆手に取る生徒も出てきた時代。
そして本作は教師の暴力は完全にダメだし、なんなら落ち込んでいる生徒を励ますのに手を触れることすら許されない時代の作品です。熱血モノに心を動かされてきた読者からすれば「それの何が面白いの?」って思うかもしれないけど、鬼塚やヤンクミとは全くベクトルが違う意味で「こんな先生がいたらなぁ」って思うはず。
主人公の掴みどころのないキャラクターが大の魅力
学校モノの漫画やドラマにおいては、大きな悩みを抱えた生徒が屋上から身を投げ出そうとするシーンは鉄板中の鉄板です。熱血モノなら説教じみた熱い説得や腕ずくで生徒を助け出すシーンも珍しくありません。
では新時代の教師物語ではどうか…。ちょっとネタバレになりますが、レ〇プされてしまって自殺をほのめかす女生徒が「私、結婚できないよね」という趣旨の発言をします。それに対して「結婚できます」と言い放った後の発言が、今までの漫画にない空気をまとっていました。
ぶっちゃけ倫理を教える教師ですから、ちょっと哲学的な思考を持っているというか、腕っぷしは強くないけど口げんかは強そうというか、言うことを聞かない不良たちを論破するだけの頭の回転は持っているんでしょうが、説得するでもなく論破するでもなく、生徒と接する方法が独特で心を奪われるんです。
僕はこのクールで知的で完璧に見える先生が、時折見せる人間らしい姿がめちゃくちゃ好きになりました。見た目はナヨナヨしてて頼りなさそうだけど、この先生は超かっこいいっすよ。
いじめの定義、そしていじめる側が全て悪いのかという問題
なんか最近はパワハラのニュースも増えてきて、それこそ自衛隊や警察なんかでも「上司が部下を叩いた」とかで停職やら懲戒免職になったというニュースが耳に入ってきます。
それを聞くと「まぁ暴力はダメなことなんだけど、じゃあやられる側に一切の落ち度がなかったかどうかはまた別の話なわけで…」とか思うし、それなら暴力を振るわれて当然とは思わないまでも、もしかすれば「そういう事情なら叩いちゃった方の気持ちも理解できる気がする…」というケースもあるはず。
で、いじめに関しては「いじめられた側がいじめられたと感じたら」というような線引きになっているんじゃないかと思うんだけど、この曖昧さが非常に難しいところです。
本作においても、いじめられっ子が先生に相談するシーンがあります。これを倫理を教える立場の人間がどう諭すのか、実に興味深いエピソードでした。これが正解か不正解かは別にして、いじめっ子を鉄拳制裁するでもなく、かと言っていじめられっ子を励ますでもない対応は、厳しいような優しいような不思議な感情を覚えました。読者同士で考察し合うと二度おいしい、そんな作品です。
ここは今から倫理です。 1巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
タイトルや表紙絵からは想像しがたい魅力に溢れている作品です。作者の雨瀬氏が描いていたALL OUT!!は「ラグビー漫画なのに中性的な男の子って感じの絵がアンバランス」と感じてしまうこともあったけど、本作の先生に関しては中性的なか細い線がぴったりだと感じました。
ぶっちゃけ倫理観とかモラルに「絶対にこうだ!」っていうような正解はないことが多いし、10人いたら10通りの考えがあることも珍しくないじゃないですか?でも倫理を扱う人間には一定の賢さを感じることも多いです。
僕自身、倫理って聞くとなんだか難しいことのように思えてちょっとハードルの高さを感じてしまいます。でも本作を読むとなんら難しいことは感じません。むしろ学生時代に「必修科目だから」という理由で出席だけしていた倫理に対し、面白いという感情すら芽生えました。
最初は理屈をこねくり回して不良や生意気な生徒を説き伏せていくようなイメージを持ってましたが、全然そんなんじゃないです。生徒を説得するでもなく、論破するでもない…。新しい接し方をする教師に対して不思議な魅力を感じる、そんな新しい教師物語だと思います。
あとがき
こういう授業なら今からでも受けたい。