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「ペスト」を読んだ感想・レビュー

ペスト表紙
Ⓒペスト

コロナ禍において緊急事態宣言が~とか蔓延防止が~とかをニュースで聞いていると、「過去の伝染病の時もこうだったのかな?」と思ったりします。過去にも幾つかの伝染病の事例がありますが、そこから人類は何かを学び取ったんでしょうか。

そういう意味では非常にタイムリーな漫画作品がこちら。というわけで今回は、複数回の大流行を巻き起こした伝染病「ペスト(全4巻完結済み)」を紹介します。

ペストのあらすじ

194X年4月、アルジェリア北西部の港町オラン。短い春を謳歌していた町は、前触れなく閉ざされた。恐ろしい流行病によって――。鼠の氾濫、謎のリンパ疾患、錯綜する情報、そして……。 凡庸な町が突如として熱病に侵される“不条理”を描き、圧倒的共感を呼んでいるノーベル賞受賞作家・カミュの代表作(宮崎嶺雄訳・新潮文庫刊)を、車戸亮太が激情のコミカライズ。

ペストの見所をチェック!!

複数回の世界的な大流行を引き起こした伝染病

ペスト1
Ⓒペスト
  • 動物由来感染症.げっ歯類を保菌宿主とし,節足動物(主にネズミノミ属のノミ)によって伝播される.ペスト菌感染動物を感染源とする直接感染もある.
  • 肺ペスト患者から排出された気道分泌液により,ヒトーヒト間で飛沫感染する場合がある.
  • 潜伏期間は通常1〜7日.感染ルートや臨床像によって腺ペスト,肺ペスト,および敗血症型ペストに分けられる.
  • 適切な抗菌薬による治療が行われなかった場合,30%以上の患者が死亡する.

本作で取り扱っているのは、複数回に渡って世界的に大流行を引き起こした「ペスト」です。詳しく知らないという人でも名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかと思いますが、上記のような特徴を持っています(「NIID国立感染症研究所 – ペストとは」から一部抜粋しました)。

ヒトーヒト感染とか飛沫感染とか、潜伏期間とか…。まさに今現在よく耳にするワードが飛び交っていますが、マジで過去の話とは思えません。というか「歴史は繰り返す」というのを、まざまざと見せつけられているという感じです。そういう意味では「コロナ禍の今こそ読みたい漫画」と言っていいかも。

異変に気付き、それを認めるかどうかの葛藤

ペスト2
Ⓒペスト

例えば地震速報とかでも「警戒を促しておきながら、実は大したことありませんでした」みたいな展開は少なくないじゃないですか?個人的には「大したことなかったからいいじゃん」って思うんだけど、世の中にはそれについて怒る人が多く、間違いを許さない傾向も強いような気がします。

そんな中、医者という職業は非常に難しく、発言の責任も重いことは想像に容易いです。「ペストの可能性がある」みたいなことを言っておいて、間違いだったら謝罪だけで済まされません。かと言って、それを断言できるまで待っていたら手遅れになってしまう可能性も。

本作で描かれているペストは、過去に大流行した後のいわば前例がある場合なのですが、こうやって見ると前例のないコロナウイルスに関して最初に声を挙げた医師は、相当な葛藤があったのではないかと思います。

立場の違う様々な人間の思惑

ペスト3
Ⓒペスト

コロナ禍においても頻繁に耳にするのが「病を封じ込めることを優先するのか、それとも経済を優先するのか」みたいな話です。もちろんペストにおいてもそれが議論されていて、政治家によって「それは間違いないのか?」と医者に問いただす場面が描かれていました。

医者の立場からすれば「ペストの可能性が高いから町を封鎖すべきだ」となるし、逆に政治家からすれば「可能性が高いってことはそうじゃない可能性もあるわけで、そんな曖昧な可能性で産業を破滅させるリスクを負うわけにはいかない」となります。…まさにコロナやんけ。

しかも医者の中でも「ペストと公表することで不安がった市民が病院に殺到し、本来治療を受けるべき人が治療を受けられなくなる」という可能性を挙げ、公表すべきではないという医者も存在しています。現在の日本となぞらえて考えられる点も多く存在し、他人事とも思えない雰囲気が本作の魅力です。

ペスト 1巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

現在の世界の状況を踏まえても、軽々しく面白いとは言い難いテーマなだけに難しいけど、今読むのには非常にタイムリーな題材の作品だと思います。そして、過去に数々の伝染病が流行ってきた歴史があるのにも関わらず、我々人類はさほど学んでいないんだなぁと思いました。

本作はノーベル賞受賞作家のアルベール・カミュ氏が描いた小説をコミカライズしたものです。原作の方は圧倒的な高評価となっており、活字が苦手じゃないという人はそっちもおすすめです。

ちなみに本作の場合、Kindleレビューを見ていると「絵が下手」という酷評が目に付きます。個人的にはあまり気になりませんでしたが、このテーマについては「アニメっぽい絵よりもリアリティのある絵で見たい」という感はあったので、そういう人は原作を、活字が苦手ならコミカライズされている本作を選択するのがおすすめです。

あとがき

コロナが過去のものになるのに、果たしてどんくらいかかるんだろうか。