僕はいじめっ子タイプかいじめられっ子タイプかで言えば、たぶんいじめっ子に近かったような気がします。とは言え、クラスメイトをいじめてきたって自覚はないし、何ならいじめに近いことをされた件は今でも覚えていたりして。
いずれにしてもいじめが無くならない理由の一つに「いじめといじりが紙一重」ってことがあると思うんです。冗談のようなことも受け捉える人によってはいじめになりかねないからね。
もしかしたら本作の主人公にとってもいじめの自覚が一切無かったのかも。ただ、やられた方はずっと覚えていて、復讐のタイミングを待っていたっていう話です。というわけで今回は、驚愕の謝罪要求サスペンス「過去からの使者~悪因悪果~(全3巻完結済み)」を紹介します。
過去からの使者~悪因悪果~のあらすじ
子供時代の記憶。色褪せない思い出がある一方で、忘れてしまった事も多い。もし忘却した過去が原因で謝罪を求められたら? 果たして「身に覚えがない」と言えるのだろうか…? 人気作家として順風満帆な人生を送る速水。ある日、彼のもとに届いた一通の不審なメール。…それが「ともだち」から謝罪を求められる日々の始まりだった。――驚愕の謝罪要求サスペンス!!
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主人公は売れっ子作家
作家にとって品行方正であることが重要かどうかはさて置き、本作の主人公は表と裏で顔を使い分けているタイプの売れっ子作家です。賞も受賞し、本も飛ぶように売れ、まさに人生のピークを迎えていると言っても過言ではないくらい輝かしいときを迎えています。
まぁ芸能人なんかもそうですが、総じてイメージや好感度が高い人が一つのスキャンダルで失墜することってよくあるじゃないですか?特に最近は文春砲みたいなことも相まって、この手の展開がめちゃくちゃ多い。
本作もそんな感じで、今まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの主人公が過去の過ちによって転落していく様子が描かれています。まさに因果応報という感じのストーリーです。
主人公に忍び寄る謎の謝罪要求
全体的に設定は割と雑です。「主人公のパソコンに謝罪要求のメールが来て~」みたいな感じで始まったかと思えば、メアドを変えたりだなんだやったりしています。ちなみにここのロジックは種明かしがあっても「ふーん」という感じ。細かい部分はあまり練りこまれてなくて、そこにリアリティは一切感じないと思う。
でもそれがデメリットにならないくらい、ゆるく復讐物語を楽しめるのが本作の利点と言っていいでしょう。
「ともだち」による復讐劇
まぁいじめ問題に関しては「やった方は覚えてないし忘れてるけど、やられた方は一生覚えてる」と思うんです。で、色んな形の復讐がまさに人生のピークっていうタイミングで襲い掛かってくるのは非常にスカッとしました。
それと同時に自分の場合はどうだろうって考えるんですよね。いじめた自覚はないけど、軽くいじったことがいじめられたと感じた人がいるかもしれないとか、良かれと思って付けたあだ名が傷つけていやしないだろうかとか。自分のことを顧みるまでが本作じゃないかと。
確かに主人公は嫌われるようなことを散々してきた人間ではあるものの、20年以上も恨みを引きずられるほどのいじめをしたんだろうかって部分が絶妙で、当然「これはいじめじゃなくて犯罪だろ」って件もあれば、中には「これでここまで熱心に謝罪要求してるの!?」っていう件もあって、やっぱいじめを無くすことの難しさみたいなものも痛感しました。
単に謝らせるだけじゃ芸がないっていう陰湿な復讐方法が多々あって、すごくおもしろかったです。ただ、結末は賛否あるはず確実に。
過去からの使者~悪因悪果~ 全3巻を読んだ感想・レビュー
復讐系の物語はかなり好きなんだけど、結末が見えてくるというか「どんな結末になってもしっくり来ない」みたいな部分ってないですか?
例えば主人公がいじめっ子で、いじめられっ子がそれに復讐をするっていう物語の場合、大抵はいじめられた側に感情移入するはずだから「もっとやれやれー」になる。倍返し、3倍返しくらいはやって、何なら最後に主人公を地獄に落とすくらいのことはしてもいいと思って読んでるんだけど、実際にそういう結末になると捻りがないというかありきたりというか…。
じゃあすべてを許して誰も不幸にならない終わり方があったとしたら、物語の結末としては美しいのかもしれないけどそれはそれで違うっていうね。言ってることが我儘だってことは理解しているんですが、どうも結末が満足できないっていうのが残念かもしれません。
復讐の流れは全3巻で非常にスピーディーです。ちょっと泥臭くもあり、不器用な感じの復讐もある中で主人公のプライドが折れていく展開は爽快感がありました。「自分も知らず知らずのうちに人を傷つけていないだろうか?」と戒める意味でも読んで良かったと思える全3巻です。
あとがき
色んな形の復讐がしゅごい。