麻雀に限った話ではありませんが、ギャンブルを漫画にするとギャンブルとしての醍醐味が消えてしまうケースも珍しくありません。待ちが来るかどうかは流れがどうこうよりも、作者の意向次第って部分がありますからね。
でも見せ方が上手い麻雀漫画は都合の良さを差し引いても面白く感じるものです。というわけで今回は、僕がこれまでに読んできた面白くておすすめの麻雀漫画をまとめて紹介したいと思います。
麻雀飛龍伝説 天牌
100巻を超える長編になってるけど、本格派の麻雀漫画としては最もおすすめしたい作品です。基本的には強運を武器にしたヒラ打ちだけど、イカサマを決して使わないっていうことではありません。
なにより一緒に麻雀を打っていた仲間たちが社会に出て行っている中で、自分はこの世界で生きていくと決めた主人公の覚悟がすごい!この覚悟が風化することなく描かれているので、長編になっても本作の魅力が色褪せていないのかもしれません。
派手な演出にこだわっている麻雀漫画もいいけど、やっぱヒリつくような場の空気が感じられる本作の雰囲気は圧倒的だと思います。本格派の麻雀漫画が見たいなら是非ともおすすめです。
ムダヅモ無き改革 プリンセスオブジパング
後述している「ムダヅモ無き改革」の続編というかナンバリングタイトルというか…。とりあえず主人公が女の子になったってだけで、ブラックジョーク満載の世界観&ギャグとも思えるメチャクチャな展開は前作の魅力をしっかり引き継いでいます。
トランプやヒラリーなど割とタイムリーな政治家も登場するので、この先どこまで踏み込んだブラックジョークが披露されるのかにも注目(北のあの人とかイジるんだろうか…)。
鳴かせてくれない上家さん
ネット麻雀専門の主人公が、可愛らしいヒロインに誘われて高校の麻雀部に入部するという展開の麻雀漫画です。ラブコメ要素がかなり強くて、麻雀初心者の頃にキャッキャしてた時代を髣髴とさせてくれました。
ネット麻雀あるあるなんかも登場するので、実際に卓を囲んでの麻雀よりもネット麻雀寄りの読者にウケるような気がします。終始平和な感じで進行されるので、ニヤニヤしながら楽しむことができるでしょう。
登場する女の子たちも可愛らしく描かれているので、麻雀に詳しくないって人が読んでも楽しめるはず。というか、麻雀が好きすぎて毒されている人よりも麻雀を始めたての人とか、麻雀に対してラブコメ要素の入る余地があると思っている人におすすめしたい作品です。
天 天和通りの快男児(全18巻)
後述している「アカギ 闇に降り立った天才」の原点とも言うべき作品。福本氏は色んなギャンブル漫画を描いてるけど、その中でも麻雀に関して言えば本作のクオリティは群を抜いていると思います。
というのも東西対決とか麻雀好きがワクワクするような演出も用意されているし、ヒリつく感じの演出がメチャクチャ上手い。後半に至っては哲学っぽいというか麻雀漫画じゃなくて人間ドラマみたいになるけど、それも含めて最高の作品。
僕の中では「麻雀のルールが分からないなら、これを読むために麻雀のルールを勉強しても損はしないんじゃないか?」くらいの感じです。麻雀好きなら文句なし、ギャンブル好きの人にも文句なしにおすすめできる至高の一作。
アカギ 闇に降り立った天才(全36巻)
上で紹介した「天 天和通りの快男児」に登場した赤木しげるが主人公となっているスピンオフ作品。最初は麻雀初心者だったアカギが鬼のような強さを身に付けていくんだけど、7巻くらいまでは普通の麻雀漫画でそこからは鷲巣というラスボス戦に突入します。これが30巻を超えても終わらないほどまぁ長い。
血液を賭けるってペナルティは狂気があって面白かったんだけど、アカギが死なないってわかってるからかなぁ。ある時から「もうよくない?」って思うようになりました。序盤と血を賭けるっていう発想はめちゃくちゃ面白いです。
賭博堕天録 カイジ(全13巻)
十七歩という特殊ルールの麻雀を描いた作品。何が特殊かというと手配は最初に完成させておいて、あとは相手のロン牌を避け続けるというもの。実はこれ、かつての仲間に「絶対に勝てる勝負」と言われて参戦したという経緯があり、こっちがイカサマをしてるつもりなんだけどなぜか雲行きが怪しいという展開になってます。
麻雀としての駆け引きはもちろん、イカサマという面での騙し合いも見応えある一作です。ルールがルールなだけに麻雀を知らない人が読んで楽しめるかどうかは微妙だけど、本作のイカサマを逆手に取る流れは秀逸だと思います。
十七歩自体はここから読み始めても楽しめるけど、カイジの性格を理解してこそ楽しめる部分も多いので、できれば黙示録→破壊録→堕天録の順で。
麻雀覇道伝説 天牌 外伝(全37巻)
上で紹介した天牌のスピンオフで、瞬(本編の主人公)と出会う前の黒沢の姿を描いた作品。貫禄もあって実力も伴っていることもあり、ハラハラさせられる場面は少ないけど、最強の姿=王道ってことで。
スピンオフとしても長編になっていて、かなり人気のある作品です。本筋の天牌とセットでどうぞ。
伝説の雀鬼 ショーイチ【完全版】(全24巻)
伝説の雀鬼・桜井章一氏の麻雀人生を描いた作品で、史実というか事実を元に描かれている作品だそうです(どの程度の脚色をしているのかは不明)。桜井章一氏と言えばその界隈では超有名人なのかな…麻雀に関する本をめっちゃ出してました。
ちなみに20年間無敗だったらしいんだけど、本作を読んでいても「ここまでやればそりゃ簡単には負けないよなぁ」っていうのがめちゃくちゃ伝わってきます。積み込みの技術だったり牌のすり替えなんかのイカサマはもちろん、麻雀に関する技術的なことは全て鍛錬を積んでいるという感じ。
「流れがきてる」とか「ヒキが強い」みたいな表現が一切ありません。そこにあるのは麻雀の技術のみ。勝ち続けられたのは大事な局面でイカサマを必ず成功させる技術と度胸があったから。これを面白そうだって思う麻雀好きなら読んで間違いなし。
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哭きの竜(全5巻)
タイトルの通り、鳴くことで最強を誇っている雀士の物語。役満をいとも簡単にあがる麻雀漫画が多い中、鳴くことで手牌を完成させるプロセスを描いたのはすごく斬新だと思いました。
本作の主人公でもある竜はヤクザたちからもその強運を認められていて、ある者は竜を取り込むことでのし上がろうとしたり、ある者は竜を破って流れを引き寄せようとしたり…。
敵だらけの中に身を投じている、男の中の男の姿がカッコイイ!「あンた、背中が煤けてるぜ」とか言ってみたい。
兎 野生の闘牌(全17巻)
「能力系麻雀と言えば?」と言われたら、僕の中では真っ先に思い浮かぶ作品がこれ。ZOOという代打ち集団を舞台に活躍していく主人公(兎)の姿が描かれているんだけど、ZOOって言うだけあって動物園に由来している登場人物たちが分かりやすくも面白い麻雀漫画です。でもヒョウ、キツネあたりは良いとして、園長って嫌だな。
主人公がライオンとかヒョウとかいかにも強そうな動物じゃなく、危険回避能力に特化しているウサギっていう設定になっているのが秀逸だと思いました。臆病な奴ほど強いって言うし(←違うか)。
途中から「バトル漫画?」って感じの描写も増えてきて、ダレてきた感が否めないのがちょっと残念。最初から最後まで能力系麻雀に徹してくれていたらなぁ…。でも能力バトルが嫌じゃなければ楽しめます。
凍牌 -裏レート麻雀闘牌録-(全12巻)
サブタイトルにもあるように表世界ではなく裏世界での麻雀を舞台にした漫画で、主人公は「氷のK」という異名をもち、氷のように冷徹な判断と冷静に事を運ぶ雀士という設定になっています。
ヤングチャンピオンで連載されていたってのを知らなければ、普通に少年漫画かと思ってしまう人も多いんじゃないかと思える絵のタッチなのに、内容はヤクザ絡みのえぐい描写がバンバン出てきます。足の指がない状態で対局したり、挙句の果てに切腹して麻雀を打ったりする始末。
麻雀以外の部分であまりにも人間離れしたシーンが続くんだけど、それが受け入れられれば楽しめる作品と言えるでしょう。主人公は強いんだけどそれ以上にライバルたちも強くて、主人公が絶対的な強さを誇っているというわけではないって部分が大きな見所です。
ちなみに本作は全12巻完結なんだけど、物語は続編ありきのフィナーレを迎えていてそのまま続編「凍牌~人柱篇~」へ繋がっていくので注意。
凍牌~人柱篇~(全16巻)
前作に比べて対局に賭けられる金額も遥かに増え、命を落とす機会も増えてパワーアップした続編です。ここまでくるとヤクザが銃や刃物で命の取り合いをする代わりに、麻雀っていう手段を使っているただのヤクザ漫画のような気がしないでもないような気がしました。
そして本作でも主人公が絶対的な強さを持っているというわけではなく、確かに強いんだけどそれなりに追いつめられることもあってヒリつく展開が楽しめるでしょう。前作では仲間だったライバル、敵だったライバルの勢力が微妙に変わるっていう部分も大きな見所です。
「最下位はロシアンルーレット」みたいな展開は賛否ありそうな気がするものの、狂気に溢れている麻雀漫画を求めているという人には引き続きおすすめします。
ちなみに本作は全16巻完結なんだけど、物語は続編ありきのフィナーレを迎えていてそのまま続編「凍牌~ミナゴロシ篇~」へ繋がっていくので注意。
哲也 ~雀聖と呼ばれた男~(全41巻)
青年誌などで連載されることが多い麻雀漫画だけど、本作は少年マガジンで連載されていた作品。特殊能力のようなイカサマを使う色んな玄人とひたすら麻雀バトルを展開していくという流れで、最初は負けるけどそこで相手の技を見抜いて再挑戦でリベンジするという流れが多いです。
過去に登場したキャラが再登場する展開はもれなく激アツで、師弟対決なんかは何度読んでも鳥肌もの。所々に人間ドラマのような部分もあって、麻雀の際のイカサマのメンタルも含めて見応えばっちりと言っていいでしょう。
派手な技の応酬が魅力でゲームになった実績も。ちょっとギャグ入ってるけど名言も多いし、独特な絵で敬遠してしまうには勿体なさすぎる名作かと思います。
麻雀放浪記(全10巻)
こちらも阿佐田哲也を主人公として描かれた麻雀漫画なんだけど、こっちは阿佐田哲也の傑作小説「麻雀放浪記」を劇画化したものなのでリアリティを感じます。ただし純粋な麻雀漫画というよりは、阿佐田哲也の生きざまというか人間ドラマにスポットを当てているという感じ。
雀聖と呼ばれていた人間にとっても、ギャンブルで勝ち続けるためには技術やデータを使う方法の他に「イカサマが必要だ」と言い切ってしまうほどの流れがめちゃくちゃ面白いです。そしてそのイカサマを終戦直後のギラギラした賭場で平然と行うっていう凄さには脱帽せざるを得ません。
まさに勝負師としての半生を楽しむのにはピッタリの作品と言っていいでしょう。キンドルアンリミテッド加入者なら全10巻が無料で読めるので、麻雀好きの人やギャンブル好きの人にはおすすめです。
ムダヅモ無き改革(全16巻)
麻雀とギャグが融合した作品。主人公がライオンヘアーでお馴染みの元首相をモチーフにしたキャラということで、各国の首脳会議で麻雀による外交をするという流れです。
かなりブラックユーモアが利いていて、某国のミサイルマン(先代)とか結構笑える。というか政治家イジりがハンパ無いし、日本の政治家をイジってる分にはまだしも近隣国まで取り扱ってるのはリスキーだと感じるくらいのやつです。。
麻雀は麻雀でかなりギャグ要素が強く、ありえない必殺も出てくるのでその辺は見応えあり。牌を指で削って白にしたりするからもはや笑うしかないです。
ワシズ 閻魔の闘牌(全8巻)
アカギの最大のライバルとして知られる鷲巣が、戦後の日本で大活躍する様子を描いたスピンオフ作品。ただし描いている人が違うため、いつもの福本作品に見られるような狂気は感じられません。
そして駆け引きなどに見応えはなく、鷲巣が強運で勝ち続ける様子が描かれています。それでも1局1局の対局が「これは戦争か!?」というくらいの雰囲気を纏っていて、これは本作ならではの魅力だと思いました。
ワシズ 天下創世闘牌録(全4巻)
前項で紹介した「ワシズ 閻魔の闘牌」の続編。全4巻というあっという間に終わってしまうボリュームの中にワシズの魅力がたっぷり詰まっています。
麻雀漫画として紹介するには、いささか麻雀部分が少ないような気もするんだけど、前作が好きな人とかアカギ本編が好きな人(後半のダルダル感はさておき)なら楽しめるんじゃないかと。
ナナヲチートイツ(全3巻)
父親とコンビ打ちをしていた主人公が、ある日の対局で父親に裏切られて借金を背負い、そのまま奴隷落ちするというスタートを切る麻雀漫画。
復讐劇ということもあってか、ダークな雰囲気を演出するためのエロい演出が邪魔で、そういうのを麻雀と絡めてくるから中途半端な感じが出ちゃってるのが個人的には残念でした。
それでも絵は綺麗だし、出来れば純粋な麻雀作品が読みたいと思わせてくれるクオリティがあります。あと七緒が可愛い。
あとがき
あんまりアレだと「ご都合主義」って言われちゃうし麻雀漫画はバランスが難しい。