水槽をすごく綺麗にして、ちゃんと熱帯魚を飼っている人ってめちゃくちゃ素敵じゃないですか?ぶっちゃけ僕には魚に癒されるっていう感覚がないからアレだけど、突き詰めている人の水槽を見ると綺麗だなぁと思います。…これが癒されるってことなのか?
ちなみに水槽のレイアウトを考えたり、水槽の魚のお世話をする人をアクアリストと呼ぶんだそうです。というわけで今回は、熱帯魚ショップに勤めるアクアリストの物語「水の箱庭(全2巻完結済み)」を紹介します。
水の箱庭 あらすじ
クリオネ1匹、3980円。普通の冷蔵庫で飼えるんです。ただし意外な条件が……。朝霞水紀は自宅の不審火と共に消えた兄を追うように、アクアリストとして熱帯魚店で働き始める。知られざる多様な水の生きものを扱う現場では悪戦苦闘の毎日が待っていたーー。静かなる水槽ブームを牽引する“水の庭師”が、美しきアクアの世界をご案内!
水の箱庭の見所をチェック!!
主人公と兄を繋ぐ水槽と金魚
本作の主人公は水槽が大好きな兄を持つ女の子です。子供の頃にお祭りで手に入れた金魚を一生懸命育てていたのに死んでしまい、兄に基本的な育て方を教えてもらい、金魚を一匹分けてもらうところから物語は始まります。
熱帯魚に関係しない部分の物語で兄と父親の関係性が悪く、家が火事になってしまう描写があるんだけど、父親は「息子が火を付けたに違いない」と言い張り、主人公は「兄はそんなことはしない」と信じるっていう展開に。そして兄は姿をくらまします。
主人公は兄の部屋で見た水槽が脳裏に焼き付いて離れず、熱帯魚ショップに勤めることになり、いつかは兄が自分の水槽を見に来てくれるんじゃないかと夢見ている…みたいな感じです。本当に兄が火を付けたのか、そしてきょうだいは再会できるのかって部分が大きな見所の一つと言えるでしょう。
商売よりもお客さんにどう喜んでもらうか
熱帯魚ショップを舞台にしている漫画ということで、ビジネス漫画としての側面が大きい本作ですが、主人公は魚や水槽が大好きで「ビジネス<お客さんに喜んでもらいたい」と考えています。
誰しもお客さんに喜んでもらいたいって感情はありながらも、初心を忘れていくとビジネスライクになってくるというか…。特に初心者が参入することが多い趣味に関する仕事だと、初心者を騙すじゃないけど食い物にする人もいるじゃないですか?
本作の主人公にはそういう感情が一切なく、顧客満足度を第一に考えているショップ店員さんなので、読んでいてこっちも心地良い気持ちになれるんですよね。たまに「初心者=何もわからない」ということで売り上げに走る人もいると思うんだけど、この主人公みたいな商売人だらけになったらきっと平和になると思いました。
水の箱庭を通して紡がれるドラマ
僕みたいに熱帯魚とか水槽に知識が全くない人間からすると、ごみ掃除用の熱帯魚がいるっていうだけでも革命的なんだけど、それ以上にこの趣味は奥が深いと言わざるを得ません。
水槽にも色々あって単なる箱物とは限らないみたいです。それこそ岩とか花とかを飾ったアクアテラリウムなんかもあって、知れば知るほど奥の深さを痛感します。そりゃ大人が夢中になってあれこれやるわけだ。
そして本作の主人公の目的として「すごい水槽を作って展示したりすれば、兄が見に来てくれるんじゃないか」みたいな目論見があったりもするので、センス爆発の水槽を作ったりするんですよね。この辺は熱帯魚が好きな人、水の箱庭を作りたいという人にはたまらない部分だと言えるでしょう。
水の箱庭 全2巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
表紙の雰囲気といい商品紹介の文章といい、とにかくハートフルな物語を想像していたので、最初の「兄が家に火をつけて…」っていう展開にはめちゃくちゃ驚かされました。これ、何とかならなかったのかなぁ…。
それ以外の部分はすごくハートフルで、ヒューマンドラマとしての見応えもたっぷりな作品でした。「熱帯魚が弱ってしまう→主人公に相談→主人公が原因を突き止めて治す」みたいな感じじゃなくて、無理なものは無理っていうのもしっかり描かれているので、命の重みを軽視していないというか現実的な部分も良かったです。
全2巻しかない短いボリュームなのに、読み終わる頃には水槽に魅了される人の気持ちもめちゃくちゃ理解できるし、なんならクリオネを買ってみたいとすら思います(死んじゃうのが分かってると本気で飼おうとは思わないけど)。命の重みについても学べる漫画だと思うし、熱帯魚に対してコアな人にも初心者にもおすすめです。
あとがき
プレコ可愛いやんけ。