今でも自爆テロなんかの話を聞くと胸が痛くなるのと同時に「何のために?」ってことがよぎります。そして過去の戦争において、日本でも自爆テロに近いような兵器や戦法を採用していました。
本作は海戦において操縦者の死を前提とした、人間魚雷にスポットを当てた戦争漫画です。というわけで今回は、人間魚雷「回天」に搭乗することになった若者達の苦悩と生き様を描いた戦争ドラマ「特攻の島(全9巻完結済み)」を紹介します。
特攻の島のあらすじ
「生存率ゼロパーセント…巨大な鉄の棺桶……」――。生きては帰れない人間魚雷「回天」に搭乗することになった若者達の苦悩と生き様を描いた戦争ドラマ。大東亜戦争末期、絵を描くのが好きな福岡海軍航空隊予科生・渡辺裕三(わたなべ・ゆうぞう)は、生還を期さない特殊兵器の搭乗員に志願して、とある島へと連れて行かれる。そこで人間魚雷「回天」を見て衝撃を受けた渡辺は、その創案者・仁科(にしな)と出会い……!?
特攻の島の見所をチェック!!
人間魚雷「回天」
戦争中の悲惨な話はたくさん聞きますが、その中でもかなり衝撃的だったのが「死を前提とした兵器や戦略」です。戦争系の漫画ってどれも悲しいものが多いじゃないですか?ただただやられるだけの一般市民目線もなかなか堪えるけど、攻撃に参加している方も相当にしんどいです。
本作は潜水艦に搭載される人間魚雷「回天」に搭乗する男たちの物語で、言わば敵の戦艦に自分もろとも体当たりをするという戦略を遂行することになった兵士たちの物語です。空では神風、海では回天なんて聞かされたら、今の時代の日本に生きられることがどれだけ幸せなことか。
すごく残酷な平気ですがこれが日本に何をもたらしたのか、そしてどんな気持ちでこの兵器が作られたのかなど、この回天に対する多くのことに注目です。
回天に乗ることへの葛藤
ぶっちゃけこの時代の価値観がまったく分からないんだけど、やっぱ国のためとは言いながらも嫌だったと思うんだよなぁ。たまに戦争時代のドキュメンタリーなんかを見ると、みんな勇ましく散っていったという感じで、まるで美談のように語られている番組ばかりです。
もし仮に直前で泣き言を言ったりした兵士がいても、それをそのまま記録として残すってことはないだろうから、何が真実かっていうのは分からないんだろうけど、それにしても悲しい話だと思いました。当然死ぬのは嫌だったろうし、それ以上に無駄死にが嫌だったっていうのが痛いほど伝わってきます。
普通に戦う場合なら敵兵を何人も倒す可能性だけじゃなく、わずかにも自分も生きながらえる可能性が残るじゃないですか?でも回天は自死が必須条件っていうこともあって、これはやっぱ当事者じゃないと分からない感情や葛藤があったはず。それを自分なりに想像するだけでも胸が張り裂けるような思いです。
とにかく辛いばかりの展開
この時代で戦争に参加していた人は、やはりアメリカが憎かったんでしょうか。軍の上層部は戦果を水増しして士気をあげようとしていたくらいだから、敵国を憎むように情報の切り取りや捏造なんかもしてたんじゃないかと思うけど、この手の作品を読んでいると敵よりなにより上官に腹が立つんですよね。
もちろん上官の種類にもよります。ただ、何らかの事情があって死なずに戻ってきた人に対して罵声を浴びせるのは絶対に違うと思うし、全てがおまいうに感じてしまいました。
死ぬことを決意して戦地に赴くのも辛いし、仲間が死んでいくのを見るのも辛いし、そんな中で生きて帰ってくるもの辛い…。生きて帰ってきてしまったことが辛いってことあります?とにかく辛い展開が続くけど、目を背けちゃいけないと思います。
特攻の島 全9巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
とにかく「命は粗末にしてはいけない」ってのと「戦争の悲劇は二度と繰り返してはならない」っていう感想しか出てきません。こんな悲しい話があってたまるかってほどに衝撃を受ける作品でした。
そして良かったのがお涙頂戴の美談になっていなかったことです。回天という兵器の残酷さは痛いほど伝わってきたし、それを使わなきゃいけないまでに日本が追い込まれていたっていうのも伝わってきました。そのうえで回天にとって敵船に被害を与えたってことが美しい!みたいになっていなかったのが良かったです。
太平洋戦争を題材にした作品の中では空戦じゃないっていうのも珍しいと思ったし、潜水艦ならではの恐怖なんかもあって全9巻を一気に読んでしまったほど。キンドルアンリミテッドに加入していれば全巻が無料で読めるのでおすすめします。
あとがき
名は回天 すなわち人間魚雷である。