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「鈴木先生」を読んだ感想・レビュー

鈴木先生表紙
Ⓒ鈴木先生

最近増えてきたクレーマーによって辛い経験をしている社会人は少なくないと思うけど、中でも「先生」っていうのはその最たる例だと思ってます。なんかあればすぐに責任を問われるし、自分の時間を削って部活をやらされるとか、あんまり良い話を聞かないですよね。

僕が小学生の頃は給食を食べ終わるまで帰さない先生もいたし、今なら問題になるであろう先生も少なくありませんでした。そういうのを見ていると実際には色んな先生がいるんだってことは分かるわけで、何も鬼塚やらヤンクミやらだけが教師としてフューチャーされるのも違うんじゃないかと。

そこで新しい教師像として注目されたのが本作です。というわけで今回は、まったく新しい教師像を描いた漫画「鈴木先生(全12巻完結済み)」を紹介します。

鈴木先生 あらすじ

「この漫画は―――最高にイケてるんじゃないか!?」と“漫ぶらぁ~”こと大西祥平氏も絶賛の本作。ささやかな問題も重大な試練も全力で挑む、まったく新しい教師像。

ちなみにKindle Unlimited登録者なら、1巻~11巻までが無料で読めるのでぜひ読んでみてください(本作はメインストーリーが全11巻、外伝的な扱いで12巻目があります)。

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今までになかったタイプの教師像

鈴木先生1
Ⓒ 鈴木先生

とりあえず本作は今までにないタイプの教師が主人公になっています。従来は圧倒的に熱血型が多くて、徐々にそれも減ってきてはいるけど、少なくとも「こんな先生がいたら学校が楽しくなりそう!」という条件がテンプレ化されていたような気がしませんか?

それを踏まえると、本作の主人公にあたる鈴木先生に「こんな先生がいたら…」という感情は一切抱きません。というか、今までの教師漫画の方が異常だったんだよってくらいの落差を感じました(とは言っても絵に描いたようなクズっていう意味でもありません)。

賛否あるところだろうけど、教え子と寝ている夢で起きたりとか、教え子に対してたまに性的感情を抱くとか…。もちろん理性を保っているうえでの話なので、そこまで酷評しなくてもと思う反面、読者に嫌悪感を抱かれるのも仕方ないのかなぁって思ったり。

いずれにしても聖者でもなんでもない、普通でありのままの教師の物語という感じです。

多感な時期の色んな問題に適度な距離で

鈴木先生2
Ⓒ 鈴木先生

誰しもが好きな給食メニューと嫌いな給食メニューってあったと思うんだけど、そこに声を挙げる生徒がいて、それに対して何とかしてやろうっていう鈴木先生の姿が描かれているエピソードがあります。

ぶっちゃけ大人になった今、これを見ていると「どっちでもいい」以外の感想が出ないんだけど、教師という立場がある以上は真剣に扱わなければいけないのかなぁって思いました。今までの教師漫画で「酢豚が給食のメニューとして存続すべきか否か」みたいな話ってなかったじゃないですか?そういう意味ではめちゃくちゃ斬新です。

これが従来の熱血教師なら、素敵なエピソードでもって酢豚が生きがいの生徒に対して酢豚以外の生きがいを与えるだろうし、もしくは全員一致で酢豚存続の方向に持っていくかもしれません。でも現実としてそれは厳しいし、もっと言えば「じゃあ酢豚が好きじゃなくて、それが無くなることで喜んでいる生徒の気持ちは無視するんですか?」みたいなことにもなるわけで。

こういうどうでもよさそうな問題にも取り組まなきゃいけない先生の苦労とか、そういう問題に真剣に悩む生徒という対比に何かを考えさせられます。

等身大の生徒たちに等身大で向き合う先生

鈴木先生3
Ⓒ 鈴木先生

本作には多少変な奴が登場するっていうだけで、基本的には生徒も先生も等身大で描かれているような気がします。また酢豚の話に戻りますが、アンケートを取ることになって自分の意思以外を重視することってあるじゃないですか?

自分にとっては「どちらかと言えばAなんだけど、言い出しっぺのあいつが利を得るのは癪だからBにしてやろう」みたいな。で、子供は黙ってられないからそれを口に出すんですよね。で、からかったりするという光景は多くの人が見てきたこと、体験してきたことだと思います。

そして先生側も「どうにかして酢豚を復活させよう」というよりは、復活する・しないの根拠を突き付けるためにアンケートを取っただけみたいな部分があって、これもまた従来の教師物語とは違うと思うんです。良い悪いじゃなく、先生も1人の人間なんだってことが伝わってきます。

鈴木先生 全12巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

全体的な高評価とは裏腹にKindleレビューのネガコメは辛辣すぎるほどです。僕は全体的に面白いと思いましたが、ネガコメで言わんとしていることも分かります。少なくとも本作で描かれている鈴木先生やその周りの先生たちは「こんな先生がいたらなぁ」という対象ではありません。

それを踏まえたうえで、本作は理想じゃなくて等身大の先生と生徒を描いた作品なんだと思います。先生だってそりゃ好きな生徒・嫌いな生徒はいるだろうし、あからさまにはしないだけで肩入れもするでしょう。もちろん本来であれば、そういうことはしないのが理想ではあるんだけど。

思春期の生徒たちに接するシーンが多いことから、年頃のお子さんを持つ読者からすると嫌悪感を抱いてしまうシーンが多いのも否定しません。個人的には「思うだけならいいのでは?」の一言に尽きるし、それがあるおかげでリアリティが出ているような気もするけど、確かにちょっと気持ち悪く感じるシーンも少なくないです。

でも本作を読んで「先生になろう!」と思うタイプの漫画じゃないっていう点で、新しい切り口で描かれている漫画であることは間違いないでしょう。文字が多くて読むのに時間がかかることもあり、じっくり腰を据えて楽しみたいという人におすすめ。

あとがき

今思えばご飯に牛乳の組み合わせってえぐいな。