クラシック、ジャズ、ロック、バンド、軽音などなど…。様々なカタチで僕らの目と耳を楽しませてくれる音楽漫画は、実に多彩な方法で紙面上から「音」を表現しています。
これはもう「漫画から音が聴こえてくる」と言っても過言ではありません。というわけで今回は、目と耳で楽しむことができる面白くておすすめの音楽漫画を紹介します。
SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん
ギタリストならタイトルの時点で察しが付くと思いますが、地味女子にギターの神様であるジミ・ヘンドリックスが憑依するという設定の音楽漫画です。絵がきれいでギター演奏中のパフォーマンスもめちゃくちゃカッコイイ!
「ジミヘンと一体化してギターが弾けるなんて羨ましすぎる」って思うかもしれないけど、27歳までに音楽で伝説を残せなければ死んでしまうという裏設定も存在します。しかも主人公の地味女子が今年27歳を迎えたばかりというおまけ付き。
最終的に伝説を残せるかどうかって部分も気になるし、そこに至るまでの準備を含めたサクセスストーリーのすべてが大きな見所です。音楽漫画が好きな人、ギターが好きな人は必見の価値あり。
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僕のジョバンニ
誰よりもチェロが大好きで「誰かと一緒に弾きたい」と願っていた少年が、一緒に演奏してくれる存在を得たにもかかわらず、色んな感情に巻き込まれていくという感じの音楽漫画です。
最初は一緒に楽しんだり高めあっていける存在を欲していて、自分の練習時間を惜しむことなく教えたりなんかしていたのに、その相手が自分の才能を軽く超えていった時の焦燥感ったらないじゃないですか?心から願っていた存在が疎ましくなっていく…みたいな感情表現がめちゃくちゃ秀逸だと思いました。
最終的にこの二人の関係性はどうなっていくのかを含め、序盤から目が離せない展開が待ち受けています。
青のオーケストラ
長らくヴァイオリンから遠ざかっていた天才少年が、高校のオーケストラ部で再びヴァイオリン演奏に情熱を注ぐ様子を描いた音楽漫画です。すごくレベルの高い部活動に入部するということもあり、部内でのポジション争いみたいな部分にも大きな見応えを感じられます。
爽やかな絵の雰囲気とは裏腹に相当な熱量も持っている音楽漫画で、オーケストラに全く興味がない読者をも惹きつける魅力に溢れてると言っても過言ではありません。
主人公が演奏を止めたタイミングで頭角を現したという、もう一人の天才とのライバル関係も見所で、長年演奏から遠ざかっていたブランクをどう取り戻していくかというような部分にも注目です。
みかづきマーチ
春休みの間、東京の家を出て親戚の秋田の家に行ったときに見た高校のマーチングバンドに魅了され、そのまま秋田の高校に編入してマーチングバンドを始めた女子高生の物語。
よくある「親の敷いたレールの上を走ることに疑問を感じて…」というような始まりなんだけど、今まで勉強一筋だったこともあって未経験なことばかりのところで成長していく、主人公の姿がめちゃくちゃ眩しい音楽漫画だと思いました。
楽器を演奏することの他に動きでも観客を魅了するということが奥深くて、実際のマーチングバンドにも興味が出てくること間違いなしです。楽器によっては重量の問題もあるし、色んな意味で興味を持たされる作品だと思います。
BLUE GIANT(全10巻)
世界一のジャズプレイヤーを目指している男子高校生・宮本大の物語。…とは言っても高校3年生から物語は始まって、すぐに高校を卒業して状況しちゃうからアレだけど。
とにかく練習の鬼みたいなのが主人公で、技術的にはイマイチだけど人を惹きつける魅力がハンパ無いみたいな感じ。嫌味がなくて、とにかくジャズを楽しんでいるので全面的に応援したくなる人間性も魅力の一つです。
どこまで行っても努力を怠らない…っていうか本人は毎日サックスを吹き続けていることを努力とは思ってないはず。そういうキャラが演奏するサックスは、漫画なんだけど音が聴こえてきて僕らの心を揺さぶってきます。嘘だと思うなら実際に読んで確認してみてください。マジですごい漫画だと思わされました。
BLUE GIANT SUPREME(全11巻)
前作が序章・東京編だとすれば本作はヨーロッパ編という表現になると思うんだけど、遂に主人公の宮本大が日本を飛び出して単身ヨーロッパへ。軽い差別や文化の違いなんかにも負けない、大の強い志が眩しいくらいの音楽漫画です。
言葉も通じないし、伝手も知人もないという状況下でも自分を信じて活動をしていく大の姿は、漫画だって分かっていても感情を揺さぶられること間違いなし!前作にも増してめちゃくちゃ熱い展開が待っています。
新たな仲間たちと出会うまでの過程も出会った後の展開も見所が満点で、この全11巻も一気読みやむなしっていうほどの面白さです。そして前作のメンバー以上の個性と才能を持った仲間たちの存在も頼もしい。
本作も続編ありきな終わり方をしていますが、ヨーロッパ編は綺麗にまとまりました。とにかく凄い、ただ凄いと思える音楽漫画です。
四月は君の噓(全11巻)
過去に天才ピアノ少年と謳われたものの、母親の死がきっかけでピアノから遠ざかっていた主人公が再びピアノに挑戦していく様子を描いた音楽漫画です。ヴァイオリニストのヒロインとの関係性や友人たちとの人間ドラマなど、音楽以外にも見所がたっぷり用意されています。
結末の賛否はさておき、主人公が過去の呪縛から解放されるまでの過程がめちゃくちゃ熱い!結末に関しては「なんとかならんかったかね…」って思ったけど(悪い意味ではありません)、あまり見ない感じの結末だったことは間違いなく、涙が出てくるほど感情を揺さぶられました。
そして本作はテレビ番組の特集にて「ワンピースの尾田栄一郎氏が才能に嫉妬した!」みたいな感じで紹介された作品でもあります。絵も綺麗で読みやすく、捨てるところがない音楽漫画と言っていいでしょう。
坂道のアポロン(全9巻+1)
舞台になっているのが1960年代ということでノスタルジーな雰囲気もありつつ、高校生の主人公たちが大人の音楽・ジャズに魅了されているっていう要素が興味深い一作。
何度も転校を繰り返したりしていることで、交友関係をイチから築くことに飽き飽きしていて孤立していた主人公が、音楽という共通点から本当の友情を掴むという感じの音楽漫画です。青春時代ならではの友情や恋愛要素も上手く取り入れられていて、夢中にさせられてしまうこと間違いなし!
唯一無二の親友がライバルであり、恋敵でもある…みたいな展開にも見所がたっぷりで、「親友が自分以外の人間と仲良くしているのが面白くない」みたいな経験をしたことがある読者なら間違いなく共感させられるはず。
ストーリー本編は全9巻完結で、10巻目がボーナストラック(裏エピソード兼ファンブック)となっています。
僕はビートルズ(全10巻)
ビートルズのコピーバンドをやっていた四人組が、ビートルズがまだ世に出る前の時代にタイムスリップしてしまうという設定の音楽漫画で、誰もが一度は想像したことがあるような世界観がたまりません。
「ビートルズの名曲を自分たちのモノとして発表したら、それはパクリになるの?」という部分で揺れ動く四人の姿も面白いし、普通なら「それでガッポガッポ儲かる」みたいに考えると思うんだけど、四人は「ビートルズがもしかしたら現代では発表されていない幻の新曲を作ってくれるかもしれない」みたいに考えるのも面白いです。
ただ、それは裏を返せば「ビートルズが世に出てこなくなるかも…」っていうリスクもあって、最後までどう転ぶか予想もつかない展開にワクワクさせられることでしょう。
マエストロ(全3巻)
不況の煽りを受けて解散してしまった中央交響楽団が、あるおじいさんの元で再結成されたところから始まる音楽漫画です。元々は日本の第一線で活躍していた音楽団なんだけど、しばらくブランクがあった奏者もいて、一枚岩になるまでの過程に大きな見所が用意されています。
なにより音楽団をまとめあげる謎のおじいさんの存在が不思議すぎて、物語に一気に引き込まれてしまうっていうね。指揮者としての実力もすごいし、何より「何の目的で音楽団を再結成させたのか」みたいな部分も見応えたっぷりです。
学生時代の音楽祭や合唱祭で「指揮者って要らなくね?」って思っていた僕にもめちゃくちゃ刺さる音楽漫画でした。Amazonのキンドルアンリミテッド加入者なら無料で読めます。
神童(全4巻)
ピアノ奏者として紛れもなく天才と呼んでもいい青年が、一人の少女にまざまざと才能を突き付けられるという感じの音楽漫画で、まさに神童という表現にピッタリの展開が待っています。
ピアノの天才からピアノを取り上げたら練習できないから腕も落ちていくし、聴く力も弱まっていくような気がするじゃないですか?で、多くの人は実際にそうなると思うんだけど、神童は風の音とかりんごを叩いた音に触れ合うことで、完全に音と切り離されたような感覚にならないんです。
自分が決して辿り着けない境地のすごさを見せつけられたというか、自分が知らない世界を鮮やかに見せてくれました。不思議でちょっと切ない音楽漫画としてめちゃくちゃおすすめしたい名作音楽漫画です。
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空電ノイズの姫君(全3巻)
本作は連載中に掲載紙が変わった経緯があり、途中でタイトルが変わっています(前半が「空電ノイズの姫君」で、後半が「空電の姫君」)。どちらも全3巻で完結しているんだけど、ぶっちゃけ空電の姫君の1巻は空電ノイズの姫君の4巻目みたいなもんです。
内容は天才ギタリストの娘がずっと一人でギターを演奏していたところに、とあるバンドから声が掛かって一緒にバンドをやるようになるって感じの物語。物語の最初に登場する「夜祈子は最低の女だった」っていう一文が大きな楔として打ち込まれるのが衝撃的でした。
最低の女だったと言われている女の子との人間ドラマみたいなものもありつつ、バンドの行方やメンバーたちの進路などにも見応えがたっぷり用意されている音楽漫画と言っていいでしょう。
あとがき
目と耳が喜ぶ至福の時。