高校野球を題材にした漫画は非常に多く、過去には選手目線のものばかりだったけど今や監督目線の漫画も珍しくありません。選手が自ら道を切り拓いていく系の作品も面白いですが、監督目線には監督目線の良さがあります。
本作は監督が主人公となって、いかにチームを強くしていくかについて描かれている高校野球漫画です。野球シーンの見所はもちろん、それ以外の人間関係のもつれなんかのドラマにも見応えたっぷりと言っていいでしょう。
というわけで今回は、前半と後半で色が変わる高校野球漫画「 やったろうじゃん!! (全19巻完結済み)」を紹介します。
やったろうじゃん!! あらすじ
創部3年目にしてベスト8入りを果たした朝霧学園野球部。しかし、のびのびと野球を楽しんでいるこのチームには、甲子園に行くための決定的な「何か」が足りなかった。ある日、そんな野球部の前に謎の新監督が現われ……!?鬼監督・喜多条を迎え、甲子園を目指す朝霧ナインが、理想と現実のギャップを克服し、高校時代の3年間を完全燃焼する姿を爽やかに描いた傑作!!
やったろうじゃん!! の見所をチェック!!
主人公は元・甲子園優勝投手の経歴を持つ監督
本作の主人公は高校野球部の監督で、自身も甲子園の優勝投手になったことがあるという実績抜群の人物です。高校野球部の監督になるつもりはあまり無かったものの、部員たちの「甲子園に行きたい」という言葉に突き動かされて監督を引き受けることになるという流れ。
もう30年ほど前の野球漫画なんだけど、今読んでも根性論はそこまで目立ちません。水を飲ませないってこともなければ、うさぎ跳びみたいなトレーニングもさせないし、ピッチャーの肩や肘の心配もしっかりしてくれるっていうタイプの監督でした。
所々で厳しい発言が見られるものの、ちゃんと選手のことを見ているし…。そんな監督の下で甲子園を目指す新生野球部の活躍に注目です。
高校野球漫画にはあまり見られない野球
高校野球漫画の多くは「絶対的なエース、もしくは絶対的なスラッガー、あるいはその両方」がしっかり活躍するタイプの漫画が多いじゃないですか?少なくとも僕にとって、守備から入る野球漫画を見たのは本作が初だったと記憶しています。
今思えばすごく合理的な考えだと思うんだけど、当時はこの考え方がすごく衝撃的で驚かされたんですよね。特に「送りバントをしない」っていうこだわりは、高校野球のセオリーに反しているように思いました(まぁ最初は送りバントしないって言ってたくせに、気付いたら普通にするようになったんだけどね)。
人によっては「打線にも波がない」とは言うものの、甲子園大会を見ていると一挙に大量得点が入るケースが珍しくないので、まずは守備を鍛えるっていうっていう発想が少年向けの野球漫画と青年向けの野球漫画の違いのように感じて、ワクワクするという読者も少なくないのではないかと思います。
主人公が抱えている闇
本作の主人公が野球部の監督になるよう依頼されたとき、二つ返事でOKを出さなかったのには理由があります。それは本人の闇に関わる部分で、過去の苦い思い出や失敗談からきているものと予想されます。
普段の姿を見ているととにかく合理的で厳しいながらも優しい監督なのに、何かのきっかけでスイッチが入ると人が変わったかのようになってしまう瞬間があるんですよね。こういう時に選手たちが監督を支えてくれたりして、まさに野球部全体で試合に臨む一体感みたいなものを感じさせてくれるでしょう。
もちろん主人公以外にもケガやコンバート等がきっかけで精神面にダメージを受ける選手が出てきてたり…みたいな描写もあり、こういう逆境をどのように跳ね返していくかっていう部分にも見応えたっぷりです。
やったろうじゃん!! 全19巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
主に前半と後半に分かれていて、前半は純粋な野球部の物語でめちゃくちゃ好きです。魅力的なキャラクターがたくさん出てくるし、主人公が目指す野球が斬新でとにかく面白いので今でも何度か読み返してしまいます。
後半になるとちょっとダークな部分が出てくるというか、嫌なキャラが目立つようになってきたり胸糞悪くなってしまうようなシーンも出てきます。「青空」の時もそうだったけど、なぜ野球漫画にこうもレ〇プシーンが出てくるのか…原氏はそういう描写が好きなのかな。
創部3年目でベスト8のチームをいかに効率良く鍛えて、どうやれば甲子園に出られるのかっていうことを考えていた頃は純粋に面白い野球漫画だったと思います。派手な魔球とかが出てこないから地味って思うかもしれないけど、リアル志向で戦略性の高い高校野球が好きな人にはおすすめです。
あとがき
やったろうじゃん!!ってタイトルがこの上なく好き。