女性ヴォーカルのバンド自体は珍しくないんだけど、ギターやらドラムやらが女性のバンドってなると一気に少なくなるじゃないですか?個人的にはそういうバンドがめちゃくちゃカッコ良いと思えるので、女性が楽器を演奏しているバンドは広くチェックしていました。
そんな僕にとっては、心が躍って踊って仕方がない音楽漫画がこちら。父親譲りの才能が光る女性ギタリストが活躍する作品です。というわけで今回は、青春時代のノイズが乗った音楽漫画「空電ノイズの姫君(全3巻完結済み)」を紹介します。
空電ノイズの姫君 あらすじ
ミュージシャンの父と二人暮らしの女子高生・磨音。一人でいることが好きな磨音は、父の影響もあってかギター演奏が大好き。ある日、朝早く登校すると、教室からは美しい歌声が。見ると、美少女が歌を歌っていた。その美少女、転校生の夜祈子と次第に仲良くなる磨音。ある日、磨音はプロのバンドをめざし、ギターを探している大学生・高瀬たちと出会う
空電ノイズの姫君の見所をチェック!!
美しい歌声の美少女転校生
本作で最も衝撃的なシーンは表紙をめくってすぐの段階で訪れます。まぁネタバレになるのかもしれないけど「夜祈子は最低の女だった」っていう一文です。ぶっちゃけこれは物語の最後まで覚えておいてほしい一文と言っても過言ではありません。
というのも、こうやって楔を打ち込まれると「夜祈子っていうキャラは最低な女なんだろう」という思い込みから入ることになるわけですが、物語を読み進めていてそのような気配は微塵も感じないので、読者の多くはこの一文の存在を忘れてしまうかと思います。
夜祈子は主人公の磨音が心を開ける唯一無二の友人です。そんな彼女が最低だといわれる所以はどこにあるのか、ぜひ最後まで見届けてみてはいかがでしょうか。
ギタリストの父親から受け継いだ天性の才能
本作の主人公・磨音は天性の才能を持ったギタリストです。まぁギタリストとは言ってもバンドに所属していたというわけではなく、父親がミュージシャンであるという影響を受けて幼少の頃からギターに触れており、同年代の子たちと比べると技術が優れているという感じ。
とあるバンドが欠員を埋めるためにギターを探していて、そこで磨音に白羽の矢が立つという流れになっています。人付き合いが苦手な磨音が参加することになった理由に本作の隠れテーマのようなものが関係しているような気がするので、ここも見逃すことができない大きなポイントと言っていいでしょう。
個人的な趣味かもしれないけど、やっぱギターやらベースやらを弾く女性ってカッコ良く見えてしまうんですよね。絵の雰囲気もすごくマッチしていて心地の良い雰囲気が楽しめる音楽漫画です。
立ちはだかる壁と葛藤
いくら天才ギタリストと言えど特に実績があるというわけでもないし、壁にぶち当たることだってあります。将来のことを考えなければならない時期にバンド活動に取り組むことに対して何も思わないわけがないでしょう。
それについこの間まで一人でいることが何よりも快適だった少女にバンドの仲間ができて、初めてライブを経験して…目まぐるしい時間の流れに戸惑わないわけがないんです。本作では「これこそが青春の1ページ!」と呼ぶくらいに見事に描き上げています。
「恋せよ乙女、命短し」じゃないけど、悩んでる姿・時間すらも美しく感じてしまいました。これがノイズだって言うなら、随分と心地良いノイズですことって感じ。
空電ノイズの姫君 コミックス全3巻を読んだ感想・レビュー
バンド活動を題材にしている音楽漫画自体が珍しく、しかも女子が主人公っていうのは希少価値が高すぎ。将来のことを考えなきゃいけない時期だったり、ようやくやりたいことが見つかったり…多忙な青春時代を謳歌している雰囲気が眩しいです。
既成バンドの穴を埋めるために女子を入れるっていう展開は、一見すると軟派なイメージに映ってしまうかもしれないけど、そのバンドの背景なんかを見れば見るほど応援したくなるし、大きな壁にぶち当たっている様子が痛いほど伝わってきます。それぞれが葛藤と戦っていて青春時代の悩み(ノイズ)すらも美しいと思えました。
何といっても本作の一番の注目すべき点は、物語の冒頭にある「夜祈子は最低の女だった」という一文。これが何を意味するのかを見届けてほしいと思います。
本作は全3巻完結済みですが、3巻目は外伝的な扱いになっている上に物語も中途半端な形で終わっているので注意。続編の「空電の姫君」まで読んで初めて物語は完結するので実質全6巻完結です。
あとがき
初めての友達が父親のファンって…相関図が忙しいな。