漫画が読みたいけど、あまり長いのはちょっと…。長いのはっていうか、むしろ速攻で読み終わる漫画が読みたい!そんな人におすすめしたい手軽にサクッと読めて楽しめる作品(全1巻完結済みのおすすめ漫画)を紹介します。
ルックバック
漫画を描くのが得意な小学生の女の子、それも恐らく学年で一番と言っていいくらいの子が、不登校でそこにいない同級生の才能に叩きのめされるっていう感じの始まりを迎えます。
「自分だったらどうするだろう」って考える楽しさもあるし、笑えるとかそういう意味じゃなくてめちゃくちゃ面白いです。上手く言えない面白さっていう表現がぴったりだと思うんだけど、それって「ここがこうでこうで…」っていう技術によるもんじゃなくて、心に直接訴えかけてくるような魅力があるからだと思いました。
不適切な表現うんぬんでも話題になった作品だけど、一人でも多くの人に読んでもらいたい作品です。
DEATH NOTE 短編集
社会現象を巻き起こしたと言っても過言ではない超名作漫画「DEATH NOTE(デスノート)」の世界観を短編集で再現したのがこちら。収録されているのはデスノートを拾った三人の個別エピソードと、前エル(ニアじゃなくて竜崎の方)の生前の頃の日常です。
ぶっちゃけデスノートを拾った三人のエピソードは、本編みたいな高度な心理戦や駆け引きを期待していると裏切られるような内容と言っていいでしょう。でも、それでいいんです。なぜなら前作がそれだけ異常に面白かったと言えるから。
それでも夜神月の死後の世界に触れられるというだけで、僕を含めた本編のファンは歓喜の声を挙げるんじゃないかと思います。久しぶりに会えるリュークも最高でした。
凍りの掌 シベリア抑留記
北満州に送られた後、実弾を打つことなく停戦命令が出てからの終戦。そのあとでシベリア抑留の極限生活を体験したという父親の経験を、娘がある程度の肉付けをしつつ描いた戦争漫画です。
絵を見てもらえたら分かると思うんだけどコミカルなタッチの絵で、良い意味で漫画っぽさが際立っているので非常に読みやすい作品だと思いました。でも所々で出てくる表現の仕方はすごく残酷なもので、胸を締め付けられる思いで読むことになるでしょう。
それでもお涙頂戴的な感じでもなく事実を淡々と描いていくような作風なので、先入観を持たずにシベリア抑留を知るのには最適な取っ掛かりと言えると思います。戦争を二度と繰り返さないためにも、多くの人に読んでもらいたい衝撃作の一つです。
ピンキーは二度ベルを鳴らす
小人症のヤクザが主人公の漫画で、見た目的にはコミカルな感じがするかもしれないけど本格的なアングラ系ヒューマンドラマです。裏社会でトラブルを抱えている女性たちに寄り添い、それらのトラブルを迅速に解決していくという感じのストーリーとなっています。
使う武器が硫酸っていう部分にちょっとしたサイコパスな感じがあり、見た目に反して中身はかなり怖い大人という雰囲気がたまりません。そして女性のトラブルを解決して最後に言う一言がめちゃくちゃカッコイイ!
男性読者も女性読者も憧れてしまうような魅力がたっぷりの主人公。でもなりたいかって聞かれたら全力で拒否しちゃうような主人公。裏社会のダークな感じが好きな人におすすめしたい作品です。
ドラゴンボール外伝 転生したらヤムチャだった件
とある高校生があることをキッカケにドラゴンボールのヤムチャになってしまうという…夢なら悪夢と言っても過言じゃないほどのとんでもストーリー。言い方を変えるとドラゴンボール屈指の噛ませ犬こと、ヤムチャが大活躍する唯一無二の作品と言っていいかもしれません。
同人誌的な悪ノリかと思いきや原作に対する愛が溢れていて、ドラゴンボールファンなら文句無しに楽しめる内容になっています。特にヤムチャが死ぬあのシーンを目の当たりにした時のリアクションはファンにはたまらない展開です。
次は天津飯編とか亀仙人編とかシリーズ化を切実に願います。できれば今度は長編で。
外天楼
ショートストーリーを集めたオムニバスかと思いきや…って部分に大きな魅力と良い意味での裏切りが詰まっているのが本作。最初の触れ込みが「超大作ミステリ」みたいな感じだったのに、最初の話が「このエロ本は誰が捨てたものか」みたいな話だったんでめちゃくちゃ驚きました。
最初読んだときは意味が分からず「あれ?なんかおかしくね?」ってなったのを今でも鮮明に覚えてるし、未だにこの構成は素晴らしいと思います。まさかエロ本の話が超大作ミステリに繋がるとは思わないでしょ。
ミステリーって言われて推理系の漫画を期待しちゃうと裏切られるかもしれませんが、意表を突く展開が好きな人におすすめです。僕も初見時は叙述トリックとか警戒して読んだけど、ものの見事に最後は衝撃を受けたので。サクッと衝撃を受けたい人はぜひどうぞ。
関連記事「外天楼」を読んだ感想・レビュー
式の前日
6つのストーリーから構成されている短編漫画。色んな賞を受賞した実績もあり、Twitter上の口コミで話題になった作品です。家族などの近しい間柄だからこその心理描写みたいなものが非常に巧みで、感情を揺さぶられます。
作者の穂積氏にとっては初の単行本作品なんだけど、どの物語もそんなことは微塵も感じさせないほどのクオリティです。そして、最後の最後に待っているどんでん返しがクセになる。良い意味で期待を裏切られたい人とか「世にも奇妙な物語」のような最後に何かがある展開が好きな人におすすめです。
金の国 水の国
お互いを嫌いあっている二つの国が揉めて、それを見ていた神様が「A国は綺麗な嫁、B国は賢い婿を出して両国とも仲良くしなさい」と言ったことから始まる物語。少年漫画ならまだ分かるけど、少女漫画でまさか「う〇こで揉める世界観」は引っ張り出されるとは夢にも思いませんでした。
すごく心に響いてくるメルヘン・ファンタジーで、少女漫画とは言えど男性読者でも全然読めます。例えはちょっとアレだけど日本昔ばなしのような教訓が得られる系の漫画だし、なんなら絵本とかにして小学生以下の子供に読ませるのもいいんじゃないかと。
読了間の幸福感、爽やかさは数々の漫画と比べてもトップクラス!たった1巻のボリュームで心が洗われる…そんな素敵な物語なので、まだ読んだことがないという人はぜひ読んでみてください。
我らコンタクティ
子供の頃に夢見た「宇宙にロケットを飛ばして、宇宙空間で映画を上映したい」という夢を大人になってから実現させるという物語。子供の頃って「あれやりたい!これやりたい!」って希望がたくさんあったと思うんだけど、それをいつしか諦めてしまったという人がほとんどだと思います。
そういう挑戦心みたいなものを呼び覚ましてくれるのが本作です。ほぼ一人でロケットそのものを作り上げたというファンタジー要素がありながらも、映画を上映させるための電力などは都合良く調達できないというリアルな世界観がクセになります。
主人公たちが小学生の頃の同級生、しかも男女ということで恋心的な要素を感じさせますが、そういう部分に期待していると本作は本当の意味で楽しめないんじゃないかと。子供の頃の夢って理屈じゃないじゃないですか?たぶん、そういうことです。
神様がうそをつく。
クラスやクラブ活動での自分の居場所に悩んでいた主人公が、クラスのある女の子と冒険するひと夏の物語という感じの作品です。まぁ居場所がないって言ってもクラスであんまり仲の良い奴がいないとか、新しい監督とソリが合わないとかそんなん感じで、割とよくある雰囲気が再現されています。
で、プチ家出みたいな感じになるんだけど、そこでの経験が何とも言えないほど楽しそうというかドキドキするんですよね。でもそこから舵を切ったようにシリアスな展開が始まったりして、読んでるこっちもよく分からない感情になったりします。
表紙絵みたいな爽やかさを感じるっていうわけでもないし、感動するって感じの作風でもありません。どっちかって言うとシリアスで重みのある物語なんだけど読んでも損はしません。
カツラアキラ
「I”s」や「電影少女」などで知られる桂正和氏と、「ドラゴンボール」や「Drスランプ」などで知られる鳥山明氏の合作です。短いストーリーが2本入ってて超豪華。
絵は鳥山氏っぽくなった桂氏の絵となっていて、桂氏が描いていると聞くとすごく可愛らしい女の子の絵が思い浮かぶかもしれないけど、驚くほど鳥山ワールドっぽく仕上がってます。銀河を舞台にバトルするという世界観は、ドラゴンボールを読んで育った僕のような読者にとってたまらない内容です。
ネコマジン
「カリン様!?」って感じのネコマジンが大活躍するバトル漫画。ベジータを始めとするドラゴンボールのキャラも登場します。
とにかく主人公のネコマジンが可愛いです。ぜひモフモフしたい。若干、魔人ブウと被ってる部分はあるけど。
銀河パトロール ジャコ
世界観は上で紹介したカツラアキラに似ているけど、こちらは鳥山氏の魅力がギュッと凝縮されている作品(銀河パトロールシリーズと言うらしい…)。終始ゆるいテイストでストーリーが進むものの、人情味が溢れてて思わず惹き付けられます。
小ジャレがかなり効いていて、最近の漫画によく見られる派手なツッコミがないのにギャグとして成立しているのはさすが。ドラゴンボールやアラレちゃんにあったようなギャグの雰囲気は鳥山明ファンにはたまりません。
あとドラゴンボールの物語に繋がった瞬間は、ファンとして笑みがこぼれるに違いないです。この瞬間は一人で家で電気消してタブレットで読んでる最中でも「おぉ!」って声が出る。
死刑執行中脱獄進行中
ジョジョで知られる荒木飛呂彦氏の短編集。スタンドは出てこないけど、ジョジョに登場する人物が何人か出てきます。
僕の中では「ジョジョの世界観で世にも奇妙な物語のようなストーリーを表現したら、もしかするとこんな感じになるんじゃないかな?」というような作品でした。とりあえず1話目を読めば「そうきたか!」という結末に思わずニヤリとさせられるはず。
魔少年ビーティー
荒木氏のデビュー作で、手品やトリックに重きを置いたスカッと系の物語。主人公のビーティーがちょっと初期のディオに似てるってくらいで、ジョジョ感はほとんど感じなかった。というか、事前情報がなければ荒木氏の作品だって気付かない人も多いと思う。
所々にコメディータッチの描写があったりして、ジョジョで荒木氏を知った僕にとってはすごく新鮮な気持ちで楽しめた作品です。
竜の学校は山の上
「ダンジョン飯」で知られる九井諒子氏の短編集。タイトルにもある「竜の学校は山の上」を含む9作品が収録されていて、どれも独特な世界観を持ったファンタジー作品で見応えあり。
設定だけ聞くとピースフルな優しい物語のようにも感じるんですが、一抹の寂しさを残す感じや変にリアルな雰囲気がたまりません。現実と幻想のバランスがめちゃくちゃ秀逸な物語ばかりだと思いました。
魔王を倒した後の世界の話だったり、現代に竜がいる設定の話だったり…この1冊で9回楽しめる、お得感も抜群!RPGが好きな人とかファンタジー作品が好きなら文句無しに楽しめます。
竜のかわいい七つの子
こちらも九井氏の短編集。コンセプトが「親と子の絆を思い出す七つの物語」ということで、笑いあり涙ありでお得感のある一冊です。
竜が出てくるということで某RPGに似たような魔王とかの世界観を想像してたけど、全然そんなことはありませんでした。むしろ和製ファンタジーというかノスタルジーな雰囲気が素敵な短編集と言っていいでしょう。
1話1話で作風がガラっと変わるので、楽しみつつ一気に読めるのも特徴です。
ネムルバカ
上の方で紹介した「外天楼」と同じ石黒正数氏による、バンド活動に没頭する女子大生の日常を描いた青春ストーリー。何気なくどこにでもいそうな登場人物たちに親近感を感じます。
何が面白いかと聞かれても上手く答えられないほどすごくありふれている描写なのに、ずっと読んでいられるような心地良さは何なんだろう。眠る馬鹿もネムルバカって書けばなんとなくカッコイイ。
青山剛昌短編集 4番サード
「名探偵コナン」で有名な青山氏が描く高校野球漫画で、どんな球でも打てる神様のバットを手に入れた主人公が大活躍します。「そんなバットあったら最強じゃん!」って思うかもしれないけど、効果を発揮するにはお金がかかるっていう非常に良くできた設定です。
しかも絶対に打てるバットがあるなら、絶対に打たれない〇〇もあると思うじゃないですか?最強の剣と最強の盾じゃないけど、ちょっとファンタジーな要素がめちゃくちゃ生きている野球漫画と言っていいでしょう。
ちなみに短編集ってカタチになっていますが収録されているのはすべて4番サードに関するエピソードなので、色んなエピソードがごちゃ混ぜになっている一般的な短編集とは違います。
リストランテ・パラディーゾ
スタッフが老紳士だらけという特殊なレストランを舞台に巻き起こる、大人たちの大人たちによる恋模様を描いた作品。恋と一口に言ってもその形は様々で、親子ほど年の離れた恋愛もあれば親子愛もあり、別れた奥さんとの間にある家族愛みたいなものも。
本作は老紳士萌えというジャンルを開拓したようで、男性紳士の魅力に取りつかれる女性読者が多発したとか。ちなみに男の僕が読んでも大人の色気を感じるような内容だったので、お洒落な雰囲気の大人の恋愛をサクッと読みたいならおすすめです。
ちなみにスピンオフというか外伝的な扱いの「GENTE ~リストランテの人々~(全3巻完結済み)」もあるので、そっちも含めると全4巻って説もあるけど本作だけでも綺麗に完結してます。
邪眼は月輪に飛ぶ
世界を壊滅に追い込もうとしているミネルヴァと呼ばれる一羽のフクロウと、マタギの老人が繰り広げる壮大なスペクタクルバトル。
「ミネルヴァに見られたものは皆死ぬ」という設定にあるように、とにかく相手の化け物感がハンパ無い!終始ワクワク感と孤独感が同時に成立している感じがたまらない作品です。最後のマタギとミネルヴァが通じ合った瞬間(?)は必見。
つるまき町 夏時間
昔懐かしいノスタルジックな魅力に溢れているちょっと不思議な夏休みを描いた作品。昔ゲームであった「ぼくのなつやすみ」みたいな世界観が好きなら夢中になって楽しめるんじゃないかと思います。昭和の古き良き感じがたまらないです。
絵は可愛らしい感じなのに、風景の絵となると急に線が細かくなってリアリティが増すのもすごい。読み応えがあって全1巻であることを忘れるくらいの満足感も本作の魅力の1つです。
女の子が死ぬ話
タイトル通りの「女の子が死ぬ話」です。元々身体が弱くて余命宣告もされてたって流れで、ある時から学校にも来ないで入院してたんだけど、それを友人にも一切告げてなかった的な話。
主な登場人物は三人で、それぞれの気持ちが痛いくらい伝わってくるんですよね。入院してることを言わなかった女の子の気持ちも、入院してることを教えてもらいたかった二人の気持ちも。
最近は奇をてらったタイトルとか変に長いタイトルの作品が多いけど、これだけの物語を完成させておいて、付けたタイトルがそのまんまってのは逆にすごい。
山羊座の友人
未来の日付の新聞が絡むことで、深みを増している青春ミステリー作品。予め殺人事件が起こることを知っていた主人公が、クラスのいじめられっ子が血だらけのバットを持っているところを目撃してしまったというもの。
掴みの未来からの手紙、いじめ→復讐のよくあるパターン、そして驚きのある結末。全体の流れがシームレスで、全1巻なのに満足度がハンパ無いです。あと前項で紹介した「女の子が死ぬ話」じゃないけど、タイトルの付け方って重要なんだなって実感させられました。
童夢
AKIRAで知られる大友克洋氏が手掛ける四次元コミックス。僕としてはこれが30年以上前の作品とは思えないし、今読んでも十分に洗練されているような気がする。
内容はマンモス団地を舞台にした連続変死事件がテーマになっていて、団地ならではの閉鎖感が恐怖に拍車を掛けています。AKIRAにも見られるような線の細かい絵にも注目。
おひっこし
遊び心全開のラブコメ。リア充よろしく、まさに人生を謳歌している大学生たちが主役。ラブコメとしての完成度もさることながら、所々に登場している沙村氏渾身のギャグが面白い。
こういう青春モノって羨ましくて、ちょっと嫉妬しちゃう部分も多少あるんだけど、本作は面白いし問題なし。
ブラッドハーレーの馬車
面白いって言ったら語弊がある、すごくインパクトの強い作品。前項で紹介した「おひっこし」を描いた沙村氏の作品とは思えん…。ホラーとは違う、むしろ幽霊とかの方がいいと感じるくらいの人間による狂気が、本当に胸くそ悪い。
でもイタズラにグロい作品が多い中で、ここまで目を覆いたくなるような作品ってのは、やっぱり凄いと言わざるを得ないです。トラウマ注意。
春風のスネグラチカ
こちらも沙村広明氏による、ソ連(現ロシア)を舞台に描かれる戦慄の歴史ロマン。喪失と奪還の物語とはうまく表現したもので、何を失って、何を得ようとしているのか。車椅子に乗った一見弱そうな女性の芯に宿っている強さの秘密がとにかく気になります。
サクッと読みたいって気持ちで手に取ったとしても、良い意味で疲れたと思える作品。映画をみたような気分にさせてくれます。
雪の峠・剣の舞
「寄生獣」「ヒストリエ」などで知られる岩明氏の歴史作品が二作品同時収録。雪の峠は歴史モノとしては非常にマイナーな佐竹藩に注目した作品。しかも戦を描いたのではなく、新しい城をどこに建てるかについて議論したという内容。これがなかなか面白い!
剣の舞は女の子が主人公の剣術アクションで、割と多く見られる作品だと思います。タイプの違う二つの作品が楽しめるので単行本一冊なのにお得感がハンパ無いです。
ヘウレーカ
こちらも全1巻完結の漫画では絶対に外せない岩明氏の歴史作品。古代シチリアを舞台にした戦争モノで、とにかく主人公がカッコイイ。同じく岩明先生の作品で「ヒストリエ」が好きな人なら間違いなくハマると思います。
最初から最後まで流れるように綺麗にまとまってるし、歴史モノが好きな人には文句無しにおすすめです。
宅配屋ポー
蒼き鋼のアルペジオで有名なArk Performance(石川考一氏&光吉賢司氏)両氏の作品。「宅配屋ポー(全3話)」と「Σ-πr^2(全2話)」がこの1冊に収録されていて、どちらもSFの世界観が存分に堪能できる仕上がりになっています。
特に宅配屋ポーは、荷物を出す人とそれを届ける人、そして受け取る人という三者が1つの線になって繋がる瞬間が大きな見所。ほっこりできるヒューマンドラマとしておすすめしたいSF作品です。
うどんの女
学食で毎日うどんを食べる男子学生と、そのうどんを作るおばちゃんの恋愛模様を描いた作品です。男子側の目線、女性側の目線がそれぞれ独立したストーリーで描かれているので、細かい擦れ違いや勘違いが楽しめます。
あとは年の差恋愛ならではの障害にも大きな見所が用意されていて、ありきたりな恋愛では味わえないような不思議な魅力が味わえる恋愛漫画です。淡々と進む雰囲気が爽快感を感じさせる、あっさりうどんのような物語と言えるでしょう。
翔んで埼玉
埼玉県民の方が読んだらどういう感想を持つのかは不明だけど、いわゆる埼玉ディスり作品。
「高飛車な東京都民が埼玉県の田舎ぶり(正確には都会になりきれてない感みたいなもの)をバカにする」って感じの作風で、それもバカバカしい過剰な表現をしてるから笑える。埼玉をディスってると思ったら茨城に飛び火したり…。収録されている別のショートストーリーも面白いです。
ダズハント
一見すると今流行りのデスゲームに近いノリで、マーキーと呼ばれる装置を集めた分だけ賞金が貰えるという世界の話。ゲームに参加してマーキーを奪われずに乗り切ることができればそれだけで賞金が貰えるため、好戦的でなくとも賞金が得られるというのが特徴。
本作の醍醐味は「なんでこのようなゲームが何の目的で作られたか」という部分で、しっかりと理由付けされているので単なるデスゲームに落ち着いていないという部分です。Kindleで出して欲しいと思っている作品の一つ。
告白~コンフェッション~
雪山で遭難した二人の男が繰り広げる密室サスペンスです。もう助からないと悟ったのか一人の男が懺悔のつもりで過去の殺人を告白してくるんだけど、それを聞いたら救出フラグが立って「さっきの懺悔、聞いたのマズかったんじゃね?」ってなっちゃった話。
「俺は何も聞いてない!」が通用するのかどうか。相手からすれば、もしチクられたら逮捕されるわけで…。雪山の小屋に二人きりで、精神的にも肉体的にも疲れてるって状況なんかも全てがマイナスに働きそうという緊張感がすごい。
両者の腹の探り合いがスリル満点に描かれているので、結末を知っていても時間が経ったら読みたくなる魅力があります。
悪童文庫
一人の小説家と新米編集者が繰り広げる奇妙な物語。簡単に言えば「他人の心に潜んでいる闇を掘り返して論破する」みたいな内容なんだけど、奇妙な雰囲気が良い味を出してます。
小説家が主人公ということもあって、言葉の巧みさというか表現の仕方が他の漫画にはあまり見られないような辛辣さを持っていて斬新。1話完結型ということもあってテンポはいいんだけど、もうちょっと長いボリュームの方が味が出たような気がするなぁ…。
脳男
タイトルにもあるように心を持たない男が主人公のサスペンスです。意思のない脳だけの男だから「脳男」っていうシンプルなネーミングには驚きました。
脳男のカウンセリングに従事する女医さんとの掛け合いなんかは、得体の知れない脳男のスケールの大きさが不気味で面白いです。ちょっと絵に感情がないというか、脳男だけじゃなしに他のキャラものっぺらぼうっぽいのが残念。
ちーちゃんはちょっと足りない
タイトルから分かるように「ちょっと足りない、ちーちゃんと呼ばれる女の子の物語」です。足りないって言い方はどうかと思うけど、中学生なのに小学生低学年に見えるような感じの女の子かな。
そのちーちゃんと親友のナツ、あと数名のクラスメートが中心になって話が進行する日常を描いた作品で、受け捉え方が千差万別というか、読者によって感じ方が大きく変わるんじゃないかと。多分、読後の表現としては「刺さった」とか「えぐられた」が最も適切。
りとうのうみ
沖縄の離島を舞台に描かれるほんわかスマイルストーリー。僕は沖縄に行ったことがないんだけど、すごくワクワクする感じがする作品。
たかみち氏の作品と言えば「百万畳ラビリンス」がメチャクチャ有名だけど、個人的には本作の方が世界観としては好きかも。沖縄の透き通る青っぽいイメージもフルカラーでしっかり再現されています。
ミッドナイトブルー
7つの短編集からなる作品。どれもが違うカタチの恋模様を描いています。全部ドラマになりそうな感じだし、青みがかったページが印象的。
一応、タイトルにある「ミッドナイトブルー」は収録されている短編の一つなんだけど、人生の宝箱に入れたくなる物語という表現はまさに的確だと思いました。その話も微かに懐かしさを感じるような雰囲気がたまらないです。
春と盆暗
ちょっと不思議な世界観を持った恋愛ストーリー4編。冴えない男子がふとしたタイミングで急に恋に落ちる様子を描いています。
現実世界を舞台にしているのにファンタジーっぽいというか、とにかくちょっと不思議な恋愛模様で「なんで好きになったのかわからない」「好きになるのに理由は要らない」系のあれ。熱量は無いんだけど、読後に爽やかさが残ります。
スピカ ~羽海野チカ初期短編集~
「3月のライオン」や「ハチミツとクローバー」で知られる羽海野チカ氏の短編集。
設定の異なる6篇のストーリーが収録されていて、ややファンタジー色強めかな。少女漫画チックなものもあったけど、恋愛感よりは夢に向かう的な描写が強かったと思う。優しい物語が好きな人におすすめです。
幸せのマチ
二階建てのビルに入っている喫茶店の女店主と雑貨屋の男店主のほのぼの恋愛ストーリー。
男店主の母親が守護霊のような感じで見守っていたり、女店主が過去に飼っていた犬が守護霊のような感じで現れたり…。ほのぼのした世界観の中に詰め込まれた非現実的な部分も上手くフィットしています。
「孤食ロボット」や「土星マンション」などで知られる岩岡ヒサエ氏ならではの優しい絵のタッチにも注目。
マスタード・チョコレート
人とのコミュニケーションが下手な女子高生が主人公で、不器用で繊細な心の動きにスポットを当てた恋の物語。
美大に入ることを目標に予備校に通い出してから少しずつ変わっていく様子が描かれていて、その人のカラーっていう意味での「マスタード・チョコレート」なんだと思いました。コマ割りもずっと同じだし、お世辞にも絵が巧いとも言えないんだけど、一気読みしちゃう不思議な魅力があります。
志乃ちゃんは自分の名前が言えない
タイトルの通り、自分の名前が言えない女の子の話。どうやら「吃音症」という病気らしい。舞台は高校で、そこでもバカにされたり気味悪がられたりして、主人公がこれまでにどれだけイジられてきたかが想像に容易い。
そういう背景も汲みながら読むと、フィナーレは結構響いてきます。道徳の授業って今もあるか知らないけど、こういう本を読めばタメになるんじゃないかと思えるような作品ですね。
ピコピコ少年
レトロゲームと呼ばれるジャンルに精通している人なら、思わず「分かる!」と共感してしまうようなシーンが連続する自伝的青春グラフィティ。
今は手軽にタブレットとかで場所を選ばずにアプリで遊んだりできるけど、家族兼用のテレビでファミコンをやったり、親に隠れてゲームボーイで遊んだという経験があるような人にはたまらない作品だと思います。続編として「ピコピコ少年SUPER」「ピコピコ少年TURBO」と続く三部作だけど、本作だけでも十分に楽しめるはず。
青春の光となんか
すごく手数の多いギャグ漫画。ツッコミキャラがいないってこともあって、とにかくボケの応酬がすごい。ボケにボケを重ねて、勢いを感じますね。
たまーに話の最後にオチきれてなくて「え!?今ので終わり!?」ってパターンもあるけど、その後もまたすごい勢いでボケ始めるから、なんかどうでもよくなる。思えばタイトルも「青春の光となんか」だし。
ウチにテレビはありません
勘の良い人はタイトルで察知できると思うんだけど、受信料の徴収員をやってる人物の物語で巧妙に受信料未払いを続ける視聴者からお金を徴収するというアレ。
「テレビを持っている=NHKと契約義務→受信料の支払い」っていう構図に疑問を持っている人が多い中、こういう作品が出たらそういう人を逆なでするんじゃないかと思ったりもするけど、そういう感じの作風ではありません。ドローンを使ったり、泣き落としに徹したり…。時には詐欺まがいの感じで契約書にサインさせたりすることも。
「テレビが無い」という常套句を簡単にひっくり返す様子は、ブラックジョーク感が満載で逆に心地良いです。今度は絶対に払わない側の漫画を読んでみたい。
男子高校生とふれあう方法
あの手この手で男子高校生とふれあう様子をコメディータッチで描いた作品。男目線から言うと「女子高校生とふれあう方法」というカタチで本作の性別を逆にしたパターンを考えたらどうだろうかと思ったけど、何回考え直しても犯罪臭しかしないので諦めました。
これは女性目線における男子高校生とふれあいたい気持ち、いわばフェチ的な要素が強いので大きく読者を選ぶと思います。僕としてはこのくだらなさ…嫌いじゃないです。
続編として「男子高校生とふれあう方法 もっと!」「男子高校生とふれあう方法 フォーエバー」続くので、1巻完結じゃないような気もするけどとりあえずここで紹介します。
パンティストッキングのような空の下
若者の屈折した世界観をテーマに描かれている全9話の短編集。
この手の作品は読み手の境遇で大きく評価が分かれると思うんだけど、特徴的な青春劇だと思って読むと面白く感じる人も多いんじゃないかと。特徴的だとは言いながらも「じゃあ逆に平凡な人生ってどういうの?」って聞かれたら、なかなか答えるのも難しいんですけどね。
あえて説明的に描いていないエピソードが多く、よく言えば考察のし甲斐があるエピソードが多いような印象を受けました。この独特な雰囲気は、文学作品をコミカライズした感じに近いかも。
ユートピアズ
うめざわしゅん氏の作品と言えば、前項で紹介した「パンティストッキングのような空の下」の方が圧倒的に有名だけど、個人的にはこっちの短編集もかなり捨てがたいと思っています。
本作は全9編のショートストーリーが集まった短編集で、中には「世にも奇妙な物語」で実写化された作品もあってお得感がすごいです。これを初めて読んだときに「読まされるってこういうことか!」って思いました。いや、これマジで。
童貞の哲学
タイトルだけ見ると崇高な感じがするけど、中身はなんてことない「童貞あるある」です。でもこの童貞あるあるがまぁ面白い!
男の人ならよほどリア充でもない限り共感できる部分も少なくないし、童貞の主人公がこじらせてる感がとにかく面白くてクセになる。バレンタインやクリスマスをちょっと捻くれた目線で見ているという人にもおすすめ。
カルト村で生まれました。
カルト村と呼ばれる場所で育ったという作者さんの体験記。コマ割りも単調で文字数も多く、漫画を見ている時間よりも絶対的に文章を読んでる時間の方が長いくらいの感じだけど、とにかく内容が興味深くて一気に引き込まれました。
僕はかなりずぼらな家庭に育ったからアレだけど、他人の家庭料理なんかの話は興味深い部分が結構あったりしませんか?個人的にはおかずが何種類もあるなんて驚きだったし、カップ麺を食べないとか肉を食べないみたいな話を聞くとめちゃくちゃ興味を惹かれてしまうんだよね。ちなみに本作も食事の話は衝撃的です。
本作は主に幼少期の頃で、続編の「さよなら、カルト村」は思春期から村を出るまでの体験記となっています。
よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話
こちらも宗教関連。内容はタイトルの通り、宗教勧誘している母親の娘として生まれた作者による実体験の漫画です。小さい子が宗教勧誘活動しているところを見ると、いわゆる「洗脳」されていて心の底から信じ込まされていると思ってたけど意外とそうでもないんだなぁと。
あとはやっぱり自分の全く想像もつかないライフスタイルが覗けて、衝撃的な面白さがあります。最終的には普通の世界にこれた主人公の姿に何かを思わずにはいられないはず。
個人的には宗教とは無縁の人生を送っているんだけど、宗教なんて信じたい人が信じてるもんだと勝手に思っていたのでめちゃくちゃ衝撃を受けました。もし親や家族の影響で無理やり進行させられているっていう人がいたら…みたいなことを考えずにはいられない作品です。
親友が女装してきたら。完全版
男同士の友情を育んできた(と思っていた)親友が急に女装してきたら、どう対応するのが正解なのかっていうことを書いた作品。この手の話題は非常にデリケートなので扱い方を間違うと火傷しかねないんだけど、非常にうまくまとまっているんじゃないかと。
親友だからこそ悩んだ末に打ち明けてきたって思ったら、変に茶化したりできないじゃないですか?かと言って自分も驚いたことは間違いないわけで、素直に驚いたと言っていいものかどうかっていうのも微妙っていうね。
あなたならどうしますか?答えは本作に。
僕が私になるために
性同一障害の作者が、タイで性転換手術(♂→♀)を受けた実話をもとに書いたマンガ。
所々に出てくる手術の話が痛そうで、僕なんかずっと苦虫を嚙み潰したような顔をして読んだけど、すごく興味深い話だと思って一気読みしちゃいました。あ、ちなみにグロい描写とかエロい描写はないです。だけど男なら痛い。
東京核撃
東京上空600mで核爆発が起こった時に、少しでも生存率を上げるにはどうすればいいかが集約されている全1巻です。日本は核を保有していないという意味でも、核ミサイルを撃たれるリスクだけは背負っているので覚えておいて損はないはず。
地震や火災の避難訓練はしたことがあっても、核爆発の避難訓練とかしたことないじゃないですか?まぁ直撃したらどうあがいてもダメだろうけど、生死を分ける絶妙なラインで爆発した場合に、本作の内容を知っているかどうかで被害の大小が変わってくると言っても過言ではありません。
ちなみにどの国にミサイルを撃たれたかみたいな政治的背景には一切触れられておらず、あくまで核爆発の対策マニュアルという感じ。東京民以外の人も、もしかしたら「さすがに東京にミサイルは…」って感じで撃つ方が日和るかもしれないから読んでおきませう。
あとがき
ワンコインで手に入る至福の時。