張られた数々の伏線、徐々に明らかになっていく真相がたまらない!普通に読んでいるだけでも息の詰まるようなスリルが感じられ、それだけではなく真相に辿り着いた時の爽快感といったらこのジャンルならではの醍醐味と言っていいでしょう。
ここでは面白くておすすめのミステリー、サスペンス漫画を紹介します。
ミステリと言う勿れ
本作をミステリー作品として紹介していいものかどうかめちゃくちゃ悩んだけど、ここで紹介します(タイトルはミステリに分類するなって言ってるけど)。
非常に新感覚のストーリーで、簡単に言うと屁理屈と正論を並べて相手を説き伏せるというか論破するような感じ。特に笑いがあるわけでもなく、終始ずっと殺伐しているというわけでもない。
よく「あー言えばこー言う」って感じの口が上手い人っているじゃないですか?あんな感じの人を第三者視点から楽しめるって感じですね。言い回しもすごく面白いし、冤罪で拘束されたと思ったら取り調べ中に警官を言い負かして真実に辿り着くとか、推理小説もビックリの胸熱展開でしょ。この先がすごく楽しみな作品です。
北北西に曇と往け
両親を亡くしてからアイスランドの祖父のもとで暮らしている17歳の主人公の物語。彼には弟がいて、その弟は日本の叔父夫婦のもとで暮らしているんだけど、ある時急に連絡がつかなくなったと思ったら叔父夫婦は病気と事故で亡くなっていて、弟は主人公を追ってアイスランドに来ていると聞いたっていう始まりです。
一番の大きなテーマは弟は叔父夫婦を殺したのかどうかだと思うんだけど、それを否定したい感情と「もしかしたら…」と疑ってしまう感情との間で揺れ動く主人公の心理描写が巧みに描かれています。
最初は情報が少ないというか説明的に描かれていないのもあって、何が面白いのか全然わからなかったんだけど、読み進めていくうちに加速的に面白くなってきました。できれば5巻、最低でも3巻まで読んだら一気に引き込まれると思います。
夏目アラタの結婚
上記画像は本作におけるプロポーズのシーンですが、このシーンは「死刑囚との面会にてアクリル板越しに放たれたセリフ」となっています。本作は死刑囚と獄中結婚することになった、児童相談所職員の物語です。
この獄中結婚は主人公には明確な目的があり、それを果たすために死刑囚に近づいたってことになるんだけど、その目的に近づけば近づくほどゴールが遠くなっているかのような、そんな不思議な体験ができるミステリー調&サスペンスチックなストーリー。
そもそも自分が誰かを利用しようと思って近づく場合、主導権は自分にあると思いがちじゃないですか?もし相手によって「近づくことすら操作されていたら」どうなるんですかね。例えばの話ですよ、例えばの話。
ストーカー行為がバレて人生終了男
男性なら「すれ違った綺麗な女性を目で追ってしまう」くらいのことは経験があるのではないかと思います。でも家まで追ってしまうのは立派な犯罪だし、それをマッピングしてコレクションにするなんてもっての外です。
本作は「東京→埼玉間 美人マップ」なる物を趣味で作成している本物のストーカーで、これまでの人生で女性に縁がなく、ひ弱で草食系で腕力も無さそうというキャラがあるからまだ平和的に見ることができるものの、結構どぎつい内容と言っていいかもしれません。
そしてストーカーをしながら警察から逃げ続ける的な物語かと思いきや、一気にテイストが変わるという…。「人生終了の緊急事態、衝撃のストーカーサスペンス」の謳い文句に偽りなし!
マイホームヒーロー
娘の危険を察知した父親が娘の彼氏を殺し、妻と共同でその死体を隠すところから始まるミステリー作品。主人公はどこにでもいそうな気の弱いお父さんなんだけど、推理小説とかミステリー小説を書くのも読むのも好きってことで、色んなトリックに精通してるって部分が大きな見所です。
殺すことになってしまった娘の彼氏もヤバイ奴で、謎の組織から命を狙われることになったっていう展開もスリルを感じるし、普通に「殺人者を描いた作品のタイトルがマイホームヒーロー」っていう皮肉じみた感じも好き。
自分の娘の命を守るためとは言え、人を殺めてしまった一家の主が今後果たして幸せになれるのかどうかって部分も大きな見所だと思います。
血の轍
テーマは「毒親」で、息子も息子でちょっとおかしい感のある、とある一家にスポットを当てた作品。マザコンなんてのはまだ可愛いもんで、ここまでいくと普通に引く。別にグロシーンがあるわけじゃないのに、読んでいて気持ち悪いって思わされるのは正直すごいとしか言いようがないです。
で、気持ち悪いんだったら読むのやめりゃーいいじゃんって思うんだけど、やめられない止まらない…。新しい雰囲気の火サス、昼ドラって感じでメチャクチャ夢中にさせられてます。
僕の友達にも、なんかあればすぐに「ママー」っていくトンガリ(キテレツ大百科参照)みたいな奴がいたけど、それとは比較にならないもんね。良い意味で怖いもの見たさのようなものが刺激される作品です。
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じゃあ、君の代わりに殺そうか?
いじめられっ子の主人公に代わって、友人が「じゃあ、君の代わりに殺そうか?」という感じでいじめっ子退治を申し出てくれるという物語。ここまでだとありきたりな作品なんですが、本作はこのいじめっ子退治をしてからが本番です。
友人とは言ってもそもそも知り合ってからは浅く、むしろ「いじめっ子を退治してから友人になった」という表現が近いかもしれません。いずれにしても彼は何らかの目的を持って主人公に近付いてきたと考えた方が自然でしょう。
知り合って間もない友人のために人を殺せるって、冷静になって考えてみると目的が分からなくて怖いですよね。グロ耐性が必要だけど、ここまでの説明で気になるって人は間違いなくどっぷりハマると思います。
ギフト±
臓器売買をテーマにした、アンダーグラウンド感満載の作品。ちょっと怖い裏社会モノが好きな人なら、間違いなくハマると思う。ターゲットとなる人物には命の価値をわかっていない人間や更生しない犯罪者が多く、あまり胸糞が悪くなるような感じはないです。
それでも生きたまま内臓を取られるシーンなんかがあって、グロ耐性がないと読むのが結構きついかも。でもこの作品を通じて社会に何かを訴えている感がすごい。
主人公が女子高生ってのもミステリアスで最高だし、主人公の立ち位置が義賊っぽいのでハッピーエンドも残されてるって考えると結末も楽しみで仕方ないです。
寄生列島
引っ越し先の島が田舎特有の閉鎖的な雰囲気を醸し出していて、ちょっとした気持ち悪さや不気味さを感じていたところに、明らかにおかしな出来事が起こって加速的にサスペンス展開に突入する作品です。
物語の根底には「人間の倫理観を失わせる寄生虫」の存在があり、そもそも最初から村全体が狂っていたのか、それとも寄生虫によるものなのかっていう判断も含めて、謎が謎を呼ぶ展開がたまりません。
寄生虫によって狂った村人たちに対する恐怖もさることながら、平常時からおかしい風習があった村全体に対する気持ち悪さみたいものも相まって、グングン引き込まれてしまう魅力を感じるでしょう。
いじめるアイツが悪いのか、いじめられた僕が悪いのか?
学生時代にいじめられていたことを大人になってから復讐するって感じの漫画は山ほどあるけど、本作はすごく革命的な設定になっていて、なんと「いじめっ子の娘に対して復讐をする」という流れになっています。
自分にとって本当に殺したくなるほど憎い相手は、その本人に直接痛みを与えるよりもその本人が大切にしているモノを傷付けた方が有効的っていう考えです。この発想が狂気じみているし、直接手を下さずに教師の立場から生徒を誘導して仕返しをしていくっていうのも秀逸だと思いました。
いじめっこの娘は何の落ち度もないのに気の毒だけど、これが明らかになった時のいじめっ子の顔を見るまでは読むのがやめられない止まらないって感じのサスペンス漫画です。
トレース 科捜研法医研究員の追想
犯罪捜査において残された遺留品などから、被疑者への繋がりを捜査する一部始終を描いた作品。現行犯逮捕以外の事件で、犯人が捕まっているのはこういう人たちがいるおかげだと改めて認識させられるでしょう。
すごく細かい部分まで観察して、徹底的に調査する様子を見たら「日本の警察すげえな」ってなります。こんなん悪いことしたら絶対に捕まるって。というかここまで調べられんのに未解決で逃げ切ってる犯人やばいです。
本作では主人公の闇に潜む、未解決事件に関するサスペンス要素もてんこ盛り。ちょっとグロテスクなシーンや胸糞悪くなる描写もあるけど科捜研法医研究員の仕事も覗けるし、サスペンスものとしてもクオリティの高い一作です。
江戸の検屍官
一方でこちらは江戸時代を舞台にした検屍官の物語で、すごくアナログな犯罪捜査みたいな感じです。井戸に落ちた死体を見て「自殺か、それとも他殺か」みたいなことを暴いていくという流れ。
水死体って水を飲んで膨らんでいると言われているので、原形をとどめていない外観を見て「原型を想定した似顔絵を描く」とか「水を吐き出させてその水を目視で調べる」とか…。とにかく地道な感じにすごく夢中にさせられてしまいます。
冤罪も今以上に多発していたであろうこの時代に、その冤罪を少しでも少なくしようとしていた人物って考えるだけでも興味が湧きませんか?最先端技術の凄さも見応え抜群だろうけど、これはこれでめちゃくちゃ面白いです。
リバーシブルマン
ウラガエリと呼ばれている変死体を巡るパニックホラー。内側から裏返っている変死体を、人は「伝染病」あるいは「臓器売買の成れの果て」と呼んでいるんだけど、その真相に迫る物語。
物語はかなりヘビーでグロい印象。主人公という主人公が用意されていないのか、オムニバスにも近いような形式で進むので読みやすいです。所々にエロいシーンも出てくるけど、そんな気持ちにはならないくらいダークな雰囲気を持っています。
MONSTER(全18巻)
ヨーロッパを舞台に活躍する日本人医師が、結果的にモンスターの命を救ってしまうという戦慄のサイコサスペンス。
人の命を救ったことがキッカケで激動の渦に巻き込まれていくという展開もそうだけど、自身がモンスターを目覚めさせてしまったという自負の念に駆られて自身で決着をつけに行くって展開がハラハラしていて最高。
コミック史上最高のサスペンスという謳い文句に偽り無し。サスペンスという括りじゃなくても大好きなマンガの1つですね。コミックスなら全18巻、完全版なら全9巻で、Kindle版は現時点ではありません。
デスノート(全12巻)
顔を知っている人間の名前をノートに書き込めば、その人物を殺すことができるというデスノートを巡るサスペンス漫画。誰もが一度は想像したことがあるような世界観なだけに、好奇心でもってグイグイ引き込まれること間違いありません。
デスノートの持ち主に名前がバレたら殺されるから、警察関係者が名前を隠しながら捜査していくって部分も見応えがあるし、そのうち「顔を見れば名前が分かるようになる」っていうチート能力も手に入れたりして、ますます目が離せない展開が憎いくらいです。
個人的には途中から何でもアリになってきたような感じがちょっと残念な気もしなくもないけど、スリルがとにかくハンパ無いし、間違いなく名作の1つだと思います。本作を読んだ人ならノートに担任とか顧問の名前を書いたはず。
サガラ Sの同素体(全8巻)
イラクにて実戦訓練を積んでいる武装組織のトップが日本人だったことを受け、その目的を探るために警察が諜報員を送って捜査させるという流れの物語です。早い話がスパイ vs テロという感じ。
テロ側の思想が「このままだと日本がダメになる=日本の根本的なシステムを変える必要がある」というもので、あながち悪とも言い切れない感じにダークヒーローっぽさを感じます。まぁその達成のために武力を選択するって部分に危うさも感じるけど。
あとは単純に「今の日本で大規模なクーデターが発生したらどうなる?」って感じのIFの世界としても面白いと思います。
刻刻(全8巻)
時間を止めることができる一族と、その能力を求めた人間たちの争いの話。最初は「え?どういうこと?」と思うようなシーンの連続だけど、登場人物たちも手探りということもあって、少しずつ謎が解けていく感じがとにかく面白いです。
特殊能力を使ったバトル展開になるのは王道っぽいのに、戦うのがサザエさん一家みたいな家族と宗教団体っていうんだから斬新すぎると思いませんか?まさにサスペンスとバトルが見事に融合した作品と言えるでしょう。
「止まった時間の中にいる人間に危害を加えることはできない」とか「止まった時間の中で動ける人間を置いていけない」などの縛りも、物語に上手く溶け込んでいると思います。
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テセウスの船(全10巻)
殺人犯の息子が主人公で、過去にタイムスリップして父親が犯したとされている事件の真相を追求するという物語。除草剤の誤飲で死んだとされている事件があるのであれば、「予めその除草剤を隠しておけば、そのような事件は起きないのではないか?」ということを試行錯誤したりします。
もちろん自分が未来から来たということを打ち明けることもできず、身元を隠せば隠すほど、自分に対しても疑いの目が向いてしまったり…。果たして事件の真相は?本当に父親が殺したの?それとも真犯人がいるのか?色んな面で目が離せないタイムスリップ系サスペンスです。
蜜の島(全4巻)
戦死を遂げた戦友の娘を故郷の島に連れていくという物語。昭和22年が舞台となっており、しかもその故郷の島は日本地図に掲載されていないという…。その島で起こる数々の事件に巻き込まれ、伏線に次ぐ伏線の最後に訪れる結末は必見の価値あり。
オカルトチックな空気感はあれど、内容は秀逸なミステリ作品です。落としどころを霊的なものに頼っているとかは無いので、オカルト好きとミステリ好きの両方を魅了するポテンシャルを秘めています。起承転結が完璧な全4巻です。
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ガンニバル(全13巻)
閉鎖的な村に仕事で来ることになった駐在員の物語。村人は常識人というにはほど遠く、もし村に対して批判的なことを言おうもんなら相手が警察官であっても猟銃を突き付けるような人たちの集まりで、とにかく異常な環境で生活することになります。
そんな中で前任の駐在員が失踪したという真相を探り始めるんだけど、熊に食われた可能性も否定できないまま、心のどこかで「この村の住人に殺されたのでは?」という考えも捨てきれず、徐々に真相が明らかになっていくという感じ。
村八分、人食いって要素だけで身の毛がよだちませんか?そういう人におすすめのサスペンス漫画です。
幽麗塔(全9巻)
昭和29年の神戸を舞台に描かれる、ホラー色の強い本格ミステリー。ニートと謎の美青年(正体は女)が幽霊塔の謎に迫るというもの。
少しレトロな雰囲気を感じさせる世界観と猟奇的な事件が非常にマッチしていて、謎が謎を呼ぶ展開にグイグイ引き込まれること間違いなし。終わり方も秀逸で全9巻があっという間に感じるんじゃないかと。
推理小説とか謎解きミステリーが好きなら間違いなくおすすめです。
君のナイフ(全10巻)
「人を1人殺して500万円貰えるとしたら?」と聞かれても大抵の人は断ると思うけど、本当にお金に困っている状況にそれを持ち掛けられて、かつ殺人の対象が人殺しとかの犯罪者だったらどうだろう…という悪魔の囁きがテーマ。
単独犯ではなく、見ず知らずの人間と協力しながら計画を進めなきゃいけないことの不思議さも相まって、終始ミステリアスな雰囲気がたまらないです。そして人を殺めた自分自身もまたれっきとした殺人犯であるという事実ね。色んな意味で深い全10巻だと思いました。
屍人荘の殺人(全4巻)
ミステリ愛好会に所属している自称名探偵とその助手が、いわくつきの映画研究会の合宿に参加することになり、その先で大事件に巻き込まれてしまうという流れのミステリーです。
映画研究会っていうリア充の雰囲気もそうだけど、夏のペンションに探偵が同行するっていう時点でフラグが立ちまくりじゃないですか?で、読者が思うような展開が巻き起こるんだけど、ちょっと思ってたのと違うっていう部分がいくつかあって、それがめちゃくちゃ面白い要素になっています。
単なるペンション殺人事件みたいなのも、この設定があるおかげで斬新なミステリーになったと言っても過言ではありません。画期的なミステリー漫画を読みたいという人には文句なしにおすすめです。
不能犯(全12巻)
人間の身体って複雑に作られている部分もあれば、いい加減に作られている部分もあるじゃないですか?プラシーボ効果と呼ばれるものがあるように、人間の思い込みっていうのは時に絶大な効果を発揮します。
本作はこの「思い込み」によって人を殺すことができる人物が主人公の物語です。依頼人から依頼されるようなカタチでターゲットに近づき、催眠術のようなもので相手を殺すという流れになってるんだけど、それによって依頼人が幸せになるとは限らないっていうダークな展開が病みつきになります。
そして失血死や毒殺されたと思い込んで死んでしまった遺体からは証拠が見つかることがありません。それでもこの主人公は、警察によって捕まってしまうのかっていうハラハラ感も併せてお楽しみください。
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サマータイムレンダ(全13巻)
溺れていた少女を助けようとした幼馴染が水難事故で亡くなってしまい、主人公が2年ぶりに故郷に帰郷するところから始まるサスペンス漫画。溺れて死んだと思っていた幼馴染は、検死の結果「首を絞められた跡」があったということが分かり、他殺の可能性が浮上します。
そして物語はドッペルゲンガーのような影の存在によって、加速的に謎が謎を呼ぶ展開へと進み、ここまできたら本作から抜け出せなくなるほど夢中にさせられてしまうはず。
主人公が殺されてしまったら記憶を残してニューゲームという概念があるので、決してリアリティのあるサスペンスじゃないけどタイムリープの概念が苦手じゃないならぜひおすすめ。
骨が腐るまで(全7巻)
小学生時代に人を殺してしまった仲良し5人組の物語。人を殺して山に埋めているんだけど、それが警察にバレないかどうかっていうのが気になります。
物語の展開としては警察じゃない第三者に気付かれてしまい、そいつの脅しによって警察にもボロを出してしまって、バレるのかバレないのかみたいな感じです。警察の捜査を躱そうとするスリルもそうだけど、物語がどうやって決着するのかがとにかく気になって仕方ありません。
5人も共犯者がいたら誰か1人は口を割りそうな奴が出てきたりするじゃないですか?その時にそいつをどうするのかとか、弱みを握られた時におとなしく従ってるわけにはいかない焦りとか、色んな部分に見応えがある本格派です。結末も綺麗でレビューも全体的に高評価となっています。
ROUTE END(全8巻)
家の中で死亡し、しばらく経ってから発見された場合の汚れや悪臭などを掃除して元通りにする特殊清掃員が主人公のサスペンス作品。
殺した人間を「END」の形になぞらえてバラバラにするという猟奇的な事件の中で恩師が殺されたり、犯人と思われる人間のDNAが死亡した被害者と一致するなど、少年漫画というより青年漫画寄りの組み立てじゃないかと思いました。
結構グロいってレビューが多かったけど、遺体がバラバラになっているとは言えなまめかしい描き方がされているというわけでもなく、人形っぽく見えるし個人的にはあまりグロいとは思わなかったです。想像力が高いとアレかも。
「え、なにこれ?どういうこと?」が連続する全8巻。
クロコーチ(全23巻)
警察官を題材にした作品といえば、難解事件の解決に迫ったりとか凶悪犯を逮捕したりとかの正義色が濃いような気がするんだけど、そういう意味でも本作は異色。
正義とは程遠く、実際にこういうことがあったらやばいだろうなぁという所業を繰り返す警察官が主人公で、ちっちゃい悪を積み重ねて得た力を基に巨悪を潰すというもの。ダークヒーローにしちゃ小悪党過ぎる部分とか、ダーティーな雰囲気から抜け出せていない部分が逆に魅力だと思いました。
僕たちがやりました(全9巻)
「人生そこそこでいい」が座右の銘とも取れる男子高校生たちが、不良にやられた腹いせに軽く仕返しをしようと思ったら、それが思わぬ形で悲劇を生んだという物語です。本人たちはきっと「そんなつもりじゃなかった」って言いたいだろうけど、被害者からしたらそんなんで許せるわけもなく…。
警察は警察で色々調査をしてるけどそれを上手くかわしつつ、かと言って「このまま黙ってていいのかな?」という葛藤などに大きな見応えがあります。序盤は男子高校生特有のノリなんかも出てきて登場人物たちが馬鹿丸出しなんだけど、意外と重いストーリーで見応えのあるサスペンス×青春譚かと。
サイレーン(全7巻)
次々と起こる不可解な事件と、それらの現場に現れる謎の女を巡るサスペンス。主人公は隠れながら職場内恋愛を育む2人で、とあることがキッカケで事件の捜査上に浮かんできた謎の女と接点を持つことになるんだけど、それが思わぬ事態に発展するっていう感じ。
刑事モノの本格派サスペンスではあるんだけど、ぶっちゃけ犯人はすぐに気付きます。典型的な倒叙ミステリーで刑事コロンボとか古畑任三郎みたいな展開が好きなら楽しめるはず。
次に何が起こるのかっていうドキドキ感がたまらないし、美人局じゃないけど女が男を騙す手口みたいな心理描写もうまく表現されてると思いました。実写化されたのも納得のクオリティです。
でっちあげ(全4巻)
2003年に福岡で起きた「教師によるいじめ事件」がテーマになっている作品。教師が子供に暴力を振ったり、差別的な発言を浴びせるなんて許されることじゃないんだけど、それがモンスターペアレントによる「でっちあげ」だったら?
最近は子供の方も「大人を陥れよう」的なことを思いついたりするし、SNSなどの発達による切り取りによる印象操作なんかも目立ってきました。ランドセルを「ゴミ箱の上に置いた」のと「ゴミ箱の中に入れられた」のとでは、まったく話が変わってくるでしょ。
言い争っている2人がいるのなら、必ず両者の話を聞いてから判断しないといけないという良い教訓が得られます。僕もやられた側なら多少は盛って話すような気がするので、当事者になっても「私は絶対に俯瞰的に語ることができます!」って言う人以外には刺さるはず。
七夕の国(全4巻)
サスペンスって括りにしていいものかどうかが微妙なんだけど、怪奇事件の真相に迫るという意味ではそれっぽい色も強いと思う。
超能力を持つ血筋がテーマになっていて、徐々に明らかになっていく謎との融合が見事。練りに練られて完成した全4巻と言っても過言ではないです。「寄生獣」とか「ヒストリエ」が有名な岩明氏だけど、本作も見逃すなかれ。
童夢(全1巻)
「AKIRA」で知られる大友克洋氏が手掛けた1巻完結のサスペンス。訳の分からないうちに物語が進行することもあって、最初は意味が分かんなかったけど、何度か読んでみてこの作品の凄さに気付きました。
まず舞台となっている団地の空気がすごい。殺伐としているというわけじゃないのに、やたらと恐怖心を煽ってくるんですよね。これが30年以上前の作品だとは…。
告白~コンフェッション~(全1巻)
雪山で一緒に遭難した男が、過去に殺人を犯したことを告白するところから始める本格派サスペンス。まさか助かる可能性が残されていたとは思わず、懺悔のつもりで告白したつもりが仇になったという話です。
知られたくない秘密を知られてしまったということで口封じをするかどうかという緊張感がたまらないし、息するのを忘れるくらいの緊張感があると言っても過言じゃないかと。全1巻完結の短編作品なのにジワジワ迫ってくる恐怖感みたいなものが巧みに表現されています。
そして相手の男の「言わなきゃよかったー」って心の叫びが聞こえてきます。登山サークルかなんかで告白って言ったらリア充全開の別のやつを想像しちゃったけど、自分がされたくない方のやつでした。
生存~LifE~(全3巻)
妻を亡くし娘も14年前に行方不明。自分自身もガンに侵されていて、自殺しようとしていたタイミングで14年前に行方不明になっていた娘の遺体が見つかるというスタートを切るサスペンス漫画。
時効を間近に控えているものの、ここで死ぬくらいなら事件の真相を突き止めてやるという父親の執念が凄まじく、最初から最後まで目が離せません。読み進めながら主人公に感情移入してしまうこと必至なので「絶対に犯人を捕まえてやる!」くらいの感じになります。
全3巻でわかりやすくまとまっているし、最後のハラハラ感は流石ですね。前項で紹介した「告白~コンフェッション~」もそうだけど、福本氏&かわぐち氏の合作にハズレ無し。
雪人 YUKITO(全5巻)
個人的にはタイトルで損をしてるんじゃないかと感じているミステリー漫画。秋田出身のマタギの血を引く青年が主人公で、自分の父親を殺した男を探すために刑事を辞めて上京してくるって話です。
田舎者って部分を見抜かれてなのか何なのか、都会の罠に嵌まったりしながらも信念を持っている主人公が超カッコイイ!人によっては「マタギになりてー」って思うかも。
物語が全5巻で綺麗にまとまってるし、読み応えもあり。「未解決事件は、警察の都合が悪いから犯人を逮捕しないだけなんじゃないの?」とか考えちゃうような人なら、すごく楽しめると思う。
予告犯(全3巻)
「警察の前で小麦粉の入った袋を置いて逃走する」というような事件が発生する現代にとって、非常にタイムリーな作品。ネット動画を通じて制裁予告など、神を気取るシンブンシと呼ばれる男たちの物語です。
例えばファミレスとかで「通称Gを調理してみた」とかやる馬鹿いそうじゃないですか?そういう奴に制裁を加えていくって感じ。私刑なんて許されることじゃないけど、自分が被害者の立場に立ったら何となく気持ちは分かる部分もあったりして、色々と考えさせられました。
そして単なる愉快犯じゃないってのも本作の大きな見所。シンブンシなりの信念を持ってこういう行動をしていたって部分までが一本の線で繋がった時に、多くの読者が驚愕することでしょう。
関連記事「予告犯」を読んだ感想・レビュー
マンホール(全2巻)
寄生虫を巡るホラーサスペンスでバイオテロの恐怖感が大いに感じられる作品です。怪死する人たちもそうだし所々にグロいシーンが出てくるけど、それにはちゃんと意味があるように思えます。
無駄に怖がらせるんじゃなくて、ちゃんと意味のある恐怖が徐々に迫ってくるというか、いたずらに恐怖心を煽ってこない感じの演出が巧みです。とりあえずYoutubeでフィラリアとか調べ出したらもはや本作の虜。僕はマンホールを見たら本作を思い出してしまう病に憑りつかれました。
noise【ノイズ】(全3巻)
こちらも「予告犯」や「有害都市」などで知られる筒井哲也氏のサスペンス漫画。本作は小さな村にスポットが当てられていて、村の特産品がTVで取り上げられてふるさと納税などによって財政が潤ったかと思いきや、良いことばかりではなく不穏分子も呼び寄せてしまったって感じのストーリーです。
すごく展開が速くて、出し惜しみみたいなのが一切ない。息の詰まる展開が続いて、読者に息をする暇を与えないという感じの展開の速さは本作ならではの魅力だと思います。
過疎化した村で起きた事件っていうことで、田舎住みの僕としてはどこか「明日は我が身」のように感じる空気感も本作の虜になった理由の1つかも。
天獄の島(全3巻)
死刑が廃止されて、島流しという新しい刑罰が行われている日本を舞台にしたサスペンス漫画。
最初は「島流しに遭った荒くれ者たちのサバイバル漫画かな?」とも思えるんだけど、実は主人公は自分の親を殺した人間を追って、わざと島流れされてきたって経緯があります。
徐々に真相に迫っていく感じもいいし、巨悪な力が関わっていたって真相も僕は好き。
三億円事件奇譚 モンタージュ(全19巻)
ある日、唐突に自分の父親が三億円事件の犯人かもしれないことを知らされた主人公を巡る列島縦断クライムサスペンス。
個人的には三億円事件について「白バイに乗った警察官のフリをした犯人が、テキパキと現金輸送車をパクってった事件」程度にしか知らないんだけど、こういう線の真相も考えられるという感じで読めば面白いと思います。昭和の未解決事件の真相に迫る系のフィクションが好きならぜひ。
鬼燈の島―ホオズキノシマ―(全4巻)
例えば立ち入り禁止区域があったとして、その理由を先生が子供に説明しなきゃいけない場面って結構あると思うんです。正直に言えばいいのに「幽霊が出る」みたいなことを言ったりすることってあるじゃないですか?
もし「家畜を屠殺する場所だから子供に来てほしくない」みたいな事情があって、それを変に理由付けてそれが嘘だとバレたら先生の信用は失墜するわけで。実際に子供が来て血だらけの現場を見たら、そりゃ変な噂が子供たちにも伝わってしまうはず。
本作は家庭に問題のある子供たちが主人公で、そんな境遇の子供たちを引き取る施設で巻き起こるサスペンスです。「誰が本当のことを言っているのか」という部分であれこれ考えさせられるし、序盤の掴みはめちゃくちゃ完璧。結末はちょっと物足りなかったけど、序盤の流れだけでも高評価に繋がるサスペンス漫画と言えるでしょう。
御手洗家、炎上する(全8巻)
13年前に自分の家に火を付け、全てを奪っていった女に復讐する物語。炎上っていうのは心の奥で燃えている復讐の炎かと思いきや、思いっきり家が燃えてました。
放火魔(と思われる人物)が主人公の父親と結婚するって展開もサスペンスっぽいし、親の離婚を機に家を出て行った主人公が13年の時を経て、偽名を使って元自分の家に家政婦として潜入するって展開もワクワクする。
自分の復讐を果たすために、かつての放火魔の息子に接近したりとか、少しずつ攻め入っていく感じのサクセスストーリーなんかも見応えがあって面白いです。ここまでいったらハッピーエンドなんてぬるいことは言わずに、思いっきり大炎上して欲しい。
ウツボラ(全2巻)
文学的な雰囲気を醸し出しているサイコサスペンス。小説家の主人公、頭のない死体、死んだはずの人間、盗作疑惑…。無駄が一切なくて洗練されている全2巻です。
恐怖を感じるというよりは、ただひたすらに真相が気になる感じ。全2巻で圧倒的なスケール感を見せつけられたような気がします。
ブルーフォビア(全2巻)
人体を藍に染める奇病がテーマのサスペンス漫画です。世の中を見ていると肌の色による差別だったり、アルビノの人が被害に遭う事件が多発していることからも、肌の色が変わるっていうだけで結構な問題になりそうですが、本作にはここから更にサスペンス要素を深める設定があります。
そして記憶喪失に始まって徐々に記憶を取り戻していくっていう展開も熱いし、何者か分からない女の子と一緒に某施設を脱出するっていう展開も熱い。そして序盤に散りばめられた伏線はちゃんと回収されています。
全2巻で展開されるのでやや駆け足な気がしますが、不満といえば「倍のボリュームでもっと丁寧に描いた方が面白くなったのでは?」みたいなことなので、サクッと読めるサスペンスを探している人におすすめです。
ミュージアム(全2巻)
猟奇的な殺人犯とそれを追う刑事の姿を描いた作品。私刑をテーマにしていて、簡単には殺さずに何かしらのテーマで殺されてしまう部分に強い恐怖を感じます。「ドッグフードの刑」の語彙力がハンパない。
殺される人たちの共通点、そして犯人が雨の日しか現れない理由など、少しずつ謎が解き明かされていく感じが面白いです。グロさに言及したレビューが多いけど、個人的には「ガッツリ想像して読まなければ問題ないのでは?」くらいに思ってます。通常版なら全3巻、新装版なら全2巻。
横浜線ドッペルゲンガー(全4巻)
本作の主人公は冤罪で死刑を言い渡された死刑囚。これはただのサスペンスではなく、タイムスリップして11年前の自分と共に自分をハメた真犯人を探すという物語です。
主人公は芸術家なんだけど、芸術家ゆえの感性が少し不気味というか唯一無二の魅力に仕上がっていると思うし、コマ割りが大きくて迫力もあります。何より11年前の自分とタッグを組むっていうのが熱い!
10年前の自分は頼りになる最大の味方って気がしないでもないけど、実際はちょっと他人事だと思ってる節があって、すごくリアリティに溢れていると思いました。全4巻で一気に駆け抜けてくれるし、物語全体が綺麗にまとまっているのも大きな魅力と言えるでしょう。
夜になると僕は(全4巻)
姉を殺された弟が3人の犯人に復讐する様子を描いたクライムサスペンス。3人の犯人は少年法に守られていたおかげで大した罰を受けずに社会復帰するという流れで、特筆すべきは「主人公が夢の中で人を殺せる」という点です。
犯人たちは実名報道も無かったし社会復帰してからどこにいるか等も不明なため、居場所を突き止めて夢の能力を使って復讐していくことになるんだけど、途中から警察の邪魔が入ったりして徐々に面白くなっていきます。
ちょっとサスペンスとしては設定が甘いというか、突っ込みたくなる部分が多々あるのが残念です。でも犯人たちが最低な人種なので、主人公に感情移入しながら楽しめる作品なので駆け引きを楽しみながらスッキリしたいという人にはおすすめ。
あとがき
ミステリー&サスペンスが持つ魅力、徐々に迫ってくる恐怖は病みつきに。